2005年7月24日
特別寄稿 中学校の現場から
15の春を泣かせる神奈川の高校入試
−「前期選抜」「後期選抜」による不合格体験の拡大一
川崎市立中学校教員
生徒数が急減する90年代の後半からは、高校入試競争の緩和が期待されていました。しかし、神奈川県は公立高校の統廃合と入試制度の改悪を繰り返し、入試選抜を受ける中学生に厳しい競争を強い続けています。その中で特にひどいと思われるのが、2004年度から導入された前期選抜・後期選抜の複数受験制度です。
2004年度、川崎市の中学校卒業生が公立高校の前期・後期選抜を受験した結果は、以下の表の通りでした。
前期選抜受験者数 5,943 後期選抜受験者数 3,696 前期選抜合格者数 2,371 後期選抜合格者数 2,708 前期選抜不合格者数 3,672 後期選抜不合格者数 770 「前期選抜で不合格になった生徒が、あんなに落ち込んだり泣いたりするとは思いもしなかった」これは、組合の研究委員会でのある中学校3年生担任のことばです。
公立校受験生のほとんどが前期選抜を受けるようになった新制度のもとでは、受験校を決定した12月から1月にかけての2ヶ月間は、「自己PR書」づくりと面接練習がどうしてもとりくみの最重点になってしまいます。「自分のアピールできるポイントは何だろう」「それをどうやって、面接官に伝えようか」と悩み抜いて受験にのぞんだあげくの不合格。「合格したAくんと自分の違いは」「自分はこの高校に適していない人間なのか」と不合格の結果を受け止めきれず、自信喪失に陥る生徒が出ることは避けられません。いたずらに生徒に「自信喪失」をふりまく、酷な入試制度
前期選抜不合格になった生徒のなかからは、自信をなくし予定していた後期選抜の受験をやめ私立併願校へ進学する生徒、欠席がちになり授業に身が入らない生徒、授業を抜けて保健室通いをする生徒などが続出しました。
前期選抜が不合格になった生徒の様子を聞いたある校長は「自分に不合格を出した学校に、3日後もう一度願書を出させるというのは酷ですね」と前期選抜・後期選抜の問題点を述べています。
さらに、不合格になった生徒にとってたまらないのは、「前期選抜が合格になった生徒は、その後私立高校の一般入試を受験して合格した場合、合格を辞退することが認められている」ことです。これでは、「前期・後期と複数回の受験を行うのは、自分の特性による選抜が受けられるようにするため」とは名ばかり。その実は、成績上位者優遇の制度でしかありません。
不合格体験をし、心に傷を負った生徒の思いを受け止め、こんな入試制度は一刻も早く廃止させなければと思います。