2005年5月21日


川崎市立定時制高校「再編」問題   

新検討委員会で「提言」を、より定時制生徒が望むものに


 神奈川県の公立高校への進学はこの三、四年、きわめて厳しいものとなっている。それにさらに追い打ちをかけるのではないかと危惧されていた、川崎市の「市立高校振興計画」(2002年3月「計画案」発表 ― 以下「計画」あるいは「計画案」)にもとづく「現存の定時制5校を2校へ再編する」計画は、この3月(2005年3月)に「定時制課程検討委員会」がまとめた「提言」により、ひとまず回避された。

 しかし「提言」は、この点について〈具体的な審議を尽くせなかった〉としたものの、規模について○多様な選択科目の設定などが可能な規模の必要性、○統廃合は入学や通学が困難になる−という両論を併記している。この点からも、今後の市教育委員会の「提言」を潜まえた再編検討の方向性がきわめて注目される。

 ここで、「提言」に至る経過をざっと見ておこう。
 「計画案」発表以後、市民の批判はとくに定時制関係の生徒、卒業生、父母、教職員を中心とした人々から強く出された。内容が現存の市立定時制高校を1/2以上に「合理化」つまり教育の機会を縮減するものであったから、この批判は起こるべくして起きたものであった。

 「定時制高校を守る市民の会かわさき」(以下「市民の会」〉が結成され、度重ねての反対署名活動、市議会への請願が展開される下で、教育委員会会議でも「計画案」は繰り返し論議され、これらの反映もあり、市教育委員会は「計画案」から「3校削減」の数値目標を削除した。この後、定時制課程の再編成を協議する機関として「定時制課程検討委員会」(学識者、市民代表、定時制卒業生や定時制教職員を含む教育・行政関係者ら15名構成)が設置され、2003年11月には市教委委員長より同趣旨の諮問を受け、15回にわたる審議を経て今日に至ったわけである。

 傍聴してきた一人として、率直な印象と今後の方向に対する要望を挙げたい。 熱く、傾聴すべき見識のある意見が交わされる局面の多い会議で、勉強になったことが印象として残る。ただ、協議が「初めに再編ありき」の傾向からの発言群と、「『再編』は現実直視による改善・充実がまず大切」とする立場からの発言群に分かれていたことは否めない。この点では、定時制の状況や生徒自身の希望を知り得るような資料の不足は残念であった。これはぜひ今後充実してほしい点である。

 また、審議の最終盤になって委員長が指摘した諮問事項に「学校数」が欠落していた点は、理解に苦しむ不明朗なことであった。学校数の削減は、定時制の生徒にとっても「市民の会」の運動でもカナメだった問題である。不可解、不明朗というのは、市教育委員会が「設置学科、三部制、通学区域」等が決まればその結果として「学校数」が決まると踏んで、委員会での一番の対立点をあえて諮問事項に明記せず「逃げよう」と計算した結果ではないか疑われるからである。

 やはり、「計画」が生徒たちにとって文字通り「振興計画」の名にふさわしいものであってほしい。再編協議の方向性と結果が、定時制を高校教育の機会とする人たちの利益に収斂されていく、そんな姿勢を市教育委員会にせつに望みたい。そのためにも、より市民的、民主的なレベルの新検討委員会をすみやかに設置して、〈一校たりとも削減すべきではない〉を核に、「提言」をさらに定時制生徒たちの立場に近づけてもらいたいものである。

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