2004年11月21日

  来年度の高校の募集計画 

全日制は72学級減らし定時制は7学級増・学級定員増、やるべきことと逆

ますます、高校へ行けない人が増え、
一方で定時制の良さが壊される


 10月28日、県教育委員会は、来年度の高校の募集計画を発表しました。主な内容は、今年度に比べ約3970人減の中学卒業生に対し、全日制計画進学率の93.8%から93.5%への引き下げ、公立全日制の72学級減、私立全日制等の枠の900人減、定時制の7学級増(翠嵐、希望ヶ丘、追浜、磯工、湘南、茅ヶ崎、津久井)と全県立定時制における35人から40人への学級定員増です。

募集計画のしくみはこうなっている

 募集計画のしくみと問題点は次のようになっています(下表を参照してください)。

①まず全日制計画進学率(来年度は93.5%)と私立全日制等の枠(同21,700人、内訳は県内私立が16,100、県外私立等が5,600)が決められ、県内公立全日制の枠はそこから自動的に決まります(同38,128人)。県内公立と私立等との比率は、希望では82:11であるのに、来年度の計画枠では60:34と大幅な乖離があります。

②公立はほぼ定員どおりとりますが、私立への進学者はこのところずっと計画枠より2,000人以上少ないのです(これが「空枠」です。理由は、もともと希望が少ない、深刻な不況・全国最低水準といわれる私学助成制度の劣悪さ、などと思われます)。

03年3月卒 04年3月卒 05年3月卒
中学校卒業者数  68,850人  67,958人  63,987人


県内
公立
高校
 希望者数   56,148人(81.7%)   55,514人(81.7%)   52,277人(予測) 
 計画枠  42,091人  41,067人  38,128人
 進学者数  42,195人(61.3%)  41,106人(60.5%)
私立
高校
希望者数   8,118人(11.8%)   7,769人(11.4%)
 計画枠  22,550人  22,600人  21,700人(決定)
進学者数  20,521人(29.8%)  20,551人(30.2%)


希望者数    429人(0.6%)    658人(1.0%)
進学者数   1,635人(2.4%)   1,994人(2.9%)

(注1)希望者は、前年10月の県教委調査による(2005年3月卒分は81.7%と予測)
(注2)私立高校等とは、県内私立高校+県外国公私立高校および高専
(注3)38,128人は、63,987×0.935(計画進学率)-21.700(私立高校等)これに県外からの入学者などの枠を加えたものが、新聞発表の県内公立全日制の定員38,720人である。
(注4)定時制の希望者数は、不登校の中学生、過年度生、社会人、中退者などが含まれ ていないので、実際にはもっと多くなる。

③この「空枠」の分が全日制不合格者となり、定時制などへ殺到し、不本意入学者が増えています。また、学級増などで定時制の教育条件が悪化しています。

④それに3年前からの横浜市の定時制5校中4校募集停止の暴挙が重なり、定時制にも行けない中卒者が大量に生み出されてきました。

来年度は空枠をなくすチャンスだったが、空枠を半分以上も残したので、
来年度も定時制への殺到が起こる

 来年度は、「空枠」をなくすチャンスでした。私立等の枠を実績に基づき2000程度減らし残りを公立で減らすとすれば、公立は約40学級減らすことになり、中卒者の希望を考えるとそれでも逆行なのですが、少なくともそうすべきでした。

 そうすれば、「空枠」があることによる、全日制不合格者の定時制への殺到は、なくすことができたのです。

 そうすべきであったのに、「空枠」を半分以上も残したので(「空枠」900減というのは、朝日新聞も書いたように、公私の比率で言うと私立の比率を0.7%上げるものでしかない)、定時制への殺到は、来年度も起こることになります。また、全日制の計画進学率の引き下げも、公立の枠をさらに減らす要因となりました。

 来年度は、その上に、学区の撤廃による混乱が、全日制不合格者をさらに増加させることが予想されます。

公立全日希望52,000人(予測)に対し、
その枠を41,067から38,128に減らす

 中卒者の希望との関係でいうと、公立全日制希望52,000人台(予測)に対し、その枠41,067人を38,128人に減らすことになります。全日制を減らして定時制を増やすとは、やることが全く逆です。

 この構造的な矛盾を解決するには、私立等の枠を実績どおりにする(2000程度減らす。その分は自動的に公立枠にまわる)しかありません。

 私立高校としても、枠を大きくしておいても進学者が来ないのですから、なぜ枠の維持に固執するのか、理解できません。

定時制の学級増・学級定数増は、
募集計画の誤りのツケを定時制に押しつけるもの

 県教育委員会は、定時制にも行けない中卒者の増加を少しでも緩和するために、定時制に学級増と学級定員増を押しつけてきました。

 従来から定時制は、様々なハンデイを抱えた人たちやもう一度やり直しをしようとする人たちに対し、少人数で、きめ細やかな生活指導と学習指導がなされる場として、評価されてきました。全教員が全生徒のことをよく知っている、そうでないとやっていけません。

 しかし、この間の募集計画の失敗により学級増や学級定員増を押しつけられた定時制では、こうした定時制のよさを発揮することが難しくなっています。1学級40人への定員増は、留年者を加えて50人近い学級をも生み出しています。しかも、その多数が不本意入学者です。「全日制に行きたい子が大勢定時制に来ているのに、なぜ全日制を減らして定時制を増やすのか」という現場の声に、教育委員会はどうこたえるのでしょうか。

空枠をなくし公立全日制枠をふやさないと、この3年間の大失態が続くことに
 「後期計画」の11校削減は撤回を 

 3年前の入試の大失態のとき、二度と同じ失敗は繰り返さないとの言明がなされましたが、このままでは同じ失態が続くことになります。
 事態の解決には、「空枠」をなくし公立全日制の定員を増やすしかありません。

 さらに、「後期再編計画」における県立全日制の11校削減は、この問題をいっそう深刻にします。中卒者は2005年度を底として増加に転じるのですから。「後期計画」は、公立全日制への進学率を65%として立案されていますが、希望者は82%であり、これほど中学生と県民の希望を無視したやり方はありません。

 公立全日制への進学率を65%に抑えると言うことは、大幅な「空枠」を維持し続けると言うことと同じです。

 不本意入学を減らすために、定時制にも行けない子どもたちをなくすために、定時制教育のよさが存分に発揮できるために、「空枠」をなくし公立全日制の枠を増やせ、「後期計画」の11校削減は撤回せよ、横浜市立定時制の募集再開を、定時制の学級定員を35人以下に、定時制は小規模で、必要な専任教職員を増やせ、の声を挙げていきましょう。

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