2004年6月25日
つめこまれ、劣悪な環境の中で苦しむ定時制生徒
― 定時制1クラス40人定員のその後 各学校からの報告 ―
2004年度入試は前期入試、後期入試、二次募集さらには4月に入っての三次募集をもって終了した。今年度入試は、100人を超える中学生が高校への入学できないという大きな課題を残した。さらに1年生が全日制39名より多い1クラス40人定員募集、原級留置者を含めると45名となった学校もあり、各校は生徒指導、教科指導で大きな困難を強いられることとなっている。
さらに、クラス増、クラス定員増に対して職員定数増、非常勤講師時間数増要求にほとんど応えない県教委の姿勢に不満が大きくなっている。入学後2ヶ月が経過したいくつかの定時制高校の現在状況を報告したい。
A校
原級留置者を含めると45名を超える人数でスタートしたクラスもある。全日制39名より多い机を教室に入れ、後ろまでいっぱいの過密状態。その中に定時制を最初から希望して入学した生徒、中学時代に学習習慣ができていない生徒、定時制に不本意で入学した生徒が混在した状態の中で授業の中抜け、立ち歩き、私語による騒音に我慢できず「こんなはずじゃない」と登校しなくなった真面目な生徒が何人か出てきている。
不本意に定時制に入学した生徒の欠席も目立ちはじめ、家庭への連絡で本人、保護者ともども悩んでいることを知ると心が痛む思いである。
学習習慣の確立できていない生徒は、無断欠席、大幅な遅刻、早退、中抜けをして他のクラスに入り込んで授業妨害、教員の指導を無視するなどの行動をしている。週1回の授業では、日々入れ替わる40名以上の生徒の名前も覚えきれず、教科指導上困難を訴える教員も多い。
全日制の定期試験中は、机の7列配置では隣の机との間隔が狭すぎカンニングができてしまうので、6列配置につくりかえる。全日制にとっての余分な机は廊下に出すことを生徒が帰ってから定時制担任が行い、翌日全日制の担任が定時制のために机を元にもどすといった定時制40人定員にした結果生じた煩雑さがある。
生徒指導上での問題点は、毎年のことではあるが喫煙、コンビニにたむろする生徒の指導、外部からの苦情の処理、ロッカー破損、全日制とのトラブル等々、新入生の人数が多い分1学年担任および生活指導担当に多大な負担を負わせる結果となっている。
B校
新1年は、定員120名(校長の意向でさらにプラス5名)、原級留置者を加え4クラス展開でスタートした。1クラス増と学級定員増にもかかわらず教員定数は増えず(非常勤講師時間数は若干増)、さらに、選任教員転出後の再任用配置で実質は定員減となり教員の負担が大きくなっている。自由選択の授業では40名を超える授業も出現することとなった。
心の病を持った生徒も多くなっている。真面目な生徒とそうでない生徒が半々という感じがする。
C校
教職員定数および非常勤講師時間数は昨年度と同じだが、悪質な暴力事件が発生し、生徒の事情聴取、警察への対応に追われ、部外者対応、オートバイの校内乗り回し、たばこ等の校内指導に手が回らず、教職員の疲労が蓄積してきている。
生徒の人数が増えたことによって、不登校気味の生徒が息苦しくなって学校生活に嫌気がさし、登校しなくなってきている状況がある。また、部活動においては特定の運動部に人数が集中し、部活動顧問は活動に当たって事故の発生の危険性を回避するために苦慮している。
D校
原級留置者を含め1年生約80名を3クラス展開しているため、現在のところ生徒指導上特に大きな問題は出ていない。新1年生が大幅増となったため、ロッカー、下駄箱が不足したが、今年度は無理して間に合わせた。来年度も同じような状況になればパンク状態になるのは必至である。
職場での一番大きな問題は、人的配置がきちんと行われていないことである。例えば、理科は昨年度再任用1名と非常勤対応であったが、今年度においては専任1名分を非常勤講師時間数に砕いた。定員5名の教科では、専任が2名しかおらず、残りは臨任、再任用の情況が長く続いているなど人的保障がないため、改善を求める声が強い。
E校
新入生の情況は、学校へ登校はするけれど教員の目の届かないところでチョロチョロしている女生徒を中心とした行動が見られるが、以前の教室に入らず廊下にたむろする情況ではない。これらは、不本意入学者の心が反映した行動かもしれない。
保護者との関係では、生徒と担任の些細な行き違いで保護者が県教委に電話連絡するなど、学校に対する保護者の対応も変化してきている。
校長は、生徒定数増による必要な非常勤講師要求の獲得には意気込みが感じられず、新校準備委員分としての非常勤講師5時間の配当など再編計画には熱心である。校長は、神奈川総合高校のような進学校を目標に構想を練っていると思われるが、教員とのコミュニケーションをとろうとする姿勢が見られない。
公立全日制定員枠を増やし、少人数で充実した定時制の実現を!
県教委が昨年10月29日、計画進学率を下げ、公立入学定員の削減を発表したとき、私たちは受験生と保護者、県民の「15の春を泣かせない」という願いに反する計画であると強く批判してきた。今年度入試は、私たちが指摘したように100人を超える中学生が高校へ進学することができず、また多くの生徒が定時制に不本意入学せざる得ない情況になった。私たちは、このことに対して県教委の責任を問いたい。
定時制は、定時制への不本意入学者、中学時代不登校であった者、問題行動から立ち直ろうとしている者など、さまざまな子どもたちの「居場所」となってきた。それは学級規模が少人数であり、教員と生徒が人間的に密な関係をつくりあげ、お互いの信頼関係で生徒の成長に大いにつながってきたからである。しかし、多くの職場では、職員定数が減らされ専任が削られ、臨任や再任用が増やされ、さらに非常勤への砕きなど人的な配置で大きな問題がある。さらに生徒増、クラス増に対する専任、非常勤要求に県教委はまともに応えていない。つめこまれ劣悪な教育環境の中で苦しむ定時制生徒を直視したとき、現場は条件整備を含む前向きな解決を強く求めている。