2003年11月22日
定通手当は法の趣旨に則り現行通り支給し、定通教育の人材確保を
制度変更に便乗する県の定通手当削減提案
学問の自由を脅かすなど多くの問題点を抱えながら強行された国立大学の独立行政法人化と連動して、04年度から公立学校の教員の賃金は国基準がなくなる。これに伴い、「定通教育振興法」第5条が、「俸給月額の百分の十を乗じて得た額の定通手当を支給する」から、「定通手当は、……条例で定める」に改定された(04年4月施行)。
県はこの機に乗じて定通手当の大幅削減(ほとんど廃止に近い)を提案し、神奈川高教組と交渉に入ったという。県の提案理由は、高教組によると、「法の創設期と比較すると、定通教育をとりまく社会環境は相当変化している。・勤労青年教育を保障するためにあるものに変わりないが、勤労青年は著しく少ない。・夜間における勤務の困難性は一定認めるが、法制定時と比較すると、24時間社会化、交通の発達等を考慮すると、困難性は著しく低減している」とある。定通振興法の中身は全く変わっていない
私たちは、今回の提案が、定通教育の充実とは逆の方向をもたらす、全く不適切なものと考える。
第一に、今回の法改定は、国基準がなくなるため賃金支給の根拠を整えた形式的な改定である。だから改定は上記部分に限られ、「働きながら学ぶ青年に対し、教育の機会均等を保障し、…定時制教育及び通信教育の振興を図ることを目的とする」という第1条をはじめ他の部分は全く変更されていないのである。県がこの形式上の変更を機に賃金削減という中身の変更を提案することは、削れるものがあれば何でも削ろうという非教育的な態度の現われである。
むろん、定通教育を希望する勤労者が存在する限り、その数が多少減っても、定通教育振興の必要性は全く変わらない。定時制の職務の「困難」は、「低減」どころか激増
第二に、「社会環境の変化」により、定時制の職務の「困難性」は、「低減」どころか激増している。勤労青年の教育保障に加え、高校中退者、障害者、外国人、帰国者などが進学する実態が加わり、困難性・特殊性は増している。
その上、この困難は、希望者数に比べ大幅に少ない全日制公立入学枠の設定のため、多くの全日制希望者が定時制に不本意入学することにより、大幅に増幅している。県は、「困難性は低減」などとのんきなことをいうのでなく、定時制を、本来の定時制希望者が中心の学校にするため尽力すべきだ。夜の勤務は体内時計に合わない不健康な勤務
本来、人間の体は、明るい時に働き暗くなったら休むようにできている。定時制の教職員は、このことを犠牲にし寿命を縮めながら働いている。定通手当が削減されれば、定時制への転勤希望者の激減が予想される。不登校者などにとって最後の砦と言われる定時制、しかもそこに著しい困難がある今、定時制教育充実のための人材確保の視点は欠かせない。定通振興法の趣旨にのっとり、定通手当は現行どおり支給し、定通教育の質を確保することが行政の責任である。
また、生徒にとっては教育条件でもある教職員の処遇に地域格差が生じることは、教育の機会均等に反する。国は、教職員賃金について全国的な基準を設けるべきである。定通手当については、現状水準維持を基準とすべきである。