2003年11月7日


県教委は、公立入学定員枠を減少させ矛盾を定時制に押しつけるのではなく、

受験生と保護者の願いに応える入学定員策定を

― とんでもない! 定時制1クラス 40人募集 ―


 10月29日、県教委は来年度の公立高等学校生徒入学定員を発表した。これを見ると、三点について、県教委が教育行政の責任を放棄したのではないかと疑われても仕方がない入学定員の策定となっている。

 第一に、全日制高校の計画進学率を、94%から93.8%へと十分な根拠もなく引き下げ、全日制の門を狭めたことである。
 第二に、実績に合わない定員枠と深刻な不況下の経済的な事情から、毎年充足することがない私学の入学定員枠を減少させることなく、公立枠を中学卒業予定者の減少分と同じ969人も減らす定員となっている。
第三に、昨年度、募集定員に対し入学者が250人少なく、余裕があった定時制について、募集定員を若干減らす一方、これまで全日制(1クラス39名募集)よりも小人数クラスであった定時制(1クラス35名募集)を40名募集として全日制より多くしたことである。

 以上三点それぞれ、なぜこのような定員策定になるのかという根拠がまったく明らかでなく、受験生と保護者、県民の「15の春を泣かせない」という願いに反する計画である。
 

今年は、私学枠が減り公立枠が増えたことにより、公立高校進学者数が376人増加


 今年(2003年)の入試を中心に、この間の県教委による入学定員の策定のどこに問題があり、今回の定員発表がその問題点をいかに増幅させているかを見てみよう。

公立中
学卒業
者数
前年比 計画進
学率
実績進
学率
公立枠 前年比 公立進
学者数
前年比 私学枠 私学
実績数
01年 71,792 Δ3,073  94%  91.2% 45,024 44,024 Δ2,528 17,400 15,060
02年 69,106 Δ2,686  94%  90% 42,301 Δ2,723 42,077 Δ2,741 17,300 14,654
03年 68,850  Δ256  94%  91% 42,635   334 42,453   376 16,700 14,653
04年 67,881  Δ969 93.8% 41,666  Δ969 16,700
  

 進学率についてみると、県教委は受験生をはじめとして県民に約束している全日制高校への計画進学率を、この間まったく達成できていない。とりわけ、2002年の入試(02年度入試)では、私学枠を100名しか減少させず、公立枠を2723人も縮小させた結果、公立高校への進学者数が2741人減少し、実績進学率が90%と1972年(高校増設100校計画以前)の水準まで後退した。

 この年、全日制に入学できなかった受験生が定時制に殺到したことに加えて、横浜市教委が定時制3校を保護者や生徒の反対の声にもかかわらず、募集停止したことにより、横浜地区を中心に高校へ進学できない子どもたちが生ずる事態となった。
 15の春を泣かすことになったこの年の入試を反省し、今年(03年度入試)は不十分であるが私学枠を600名減少させ、公立枠を334人増加させた。その結果、公立中学校卒業者が256人減少しているにもかかわらず、公立高校に進学できた人が376人増えて実績進学率がやっと91%にもどった。しかし、依然として94%という計画進学率は達成できていない。

なぜ、計画進学率が達成できないのか

― 私学の空枠が根本原因 ―

 計画進学率が達成できないのは、私学が決められた定員枠(私学枠)だけ入学者を確保できていないからである。2003年の入試においても、16,700人の私学枠に対し、実際に私学に進学した公立中学卒業者は14,653人であった。約2000名の空枠(私学枠−私学実績数)が生ずるのは、私学経営の配慮から入学者数の実績に見合わない、大幅に水増しされた私学入学定員枠が設定され、その分公立の入学定員枠が低く押さえられているからである。
 したがって、計画進学率を達成するためには、県教委が教育行政の責任において、私学定員枠を実績に応じたものに減少させ、その分公立枠を増やすことである。このあまりにも自明なことが、私学経営者への配慮等により長年先送りとされ、15の春を泣かす事態となっている。


定時制1学級40名募集にするのではなく、公立全日制の希望82%という声に
応える入学定員策定を

 今回発表された入学定員にもとづき、入試が行われると、全日制高校へ進学できない子が大量に出る事態が予想される。そもそも、公立中学校卒業予定者の進学希望調査(02年10月)によると、卒業予定者の81.7%である56,148人が公立全日制高校を希望している。しかし、前頁の表からわかるように実際に進学できたのは、42,453人であった。約13,700人が希望に反して、私学や定時制、通信制へと進学している。

 この実態をふまえるなら、公立全日制の入学定員枠(公立枠)を増やすことが、中学卒業予定者とその保護者の願いを叶える道である。しかし、今回の入学定員の発表は、まさに子どもたちと保護者の願いに反する内容になっている。

 そればかりか、全日制の門を狭めたため全日制に入れない子が定時制に回ることを想定して、これまで1学級35名募集で全日制に比べて1クラスの生徒数が少なかった定時制を40名募集にするという「暴挙」を行った。

 定時制は、これまで不登校の子をはじめさまざまな問題を抱えてきた子どもたちの「居場所」となってきた。学級規模が少人数であったからこそ、それができたといえる。今回の発表は、この定時制の良さを失わせてしまうのではないかと懸念される。 昨年度の入試で、横浜地区を中心に定時制高校で多くの不合格者が出るに及んで、急遽臨時的に定時制が1学級40名募集とされたが、それによって取り返しがつかないさまざまな問題が生じた。

 たとえば、希望せずに定時制に入学した生徒が多くなり、入学当初から学校になじもうとせず、問題行動を繰り返し、教職員の指導を受けつけない事態となった。また、地域住民とのトラブルなども発生した。こうした生徒が大量に入学したため、初めから定時制を希望していた不登校の子やおとなしい子、昼間働いている子などが圧迫感や恐怖感を感じ、「居場所」を見つけることができず、退学していく状況が生じた。今回発表された入学定員は、こうした事態を再現させる恐れがある。

 今、県教委に求められているのは、誤った入学定員策定を行い、その矛盾を定時制に押しつけるのではなく、中学卒業予定者と保護者・県民の願いに真摯に応え、公立定員枠を増加させることである。

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