2003年6月5日
本来の定時制の良さを取りもどそう !
ー つめこまれて苦しむ生徒たち ー
2003年度の入試は、3月28目の定時制2次試験の発表をもって終了した。「ニュース」71号で、すでに明らかにしたように、県教委は、実質進学率を押し下げてきた一因である私学の空枠(初めに決められた入学定員枠から実際に入学した人数を引いた数)を600人減らし、公立全日制の定員を334人増やし、さらに県立定時制普通科5校(翠嵐、希望ヶ丘、追浜、湘南、津久井)、横浜市立2校(戸塚、総合)に学級増を押しつけ、昨年の撤を踏まないように万難を排してのぞんだように見える。
その結果、定時制第一次募集では、当初募集定員2345名に対し、2105名が受検し、1894名が合格した。しかしその内容を見ると、横浜地区の県立翠嵐と横浜市立戸塚で数名の不合格者、横浜総合のI、U、V部で118名、県立川崎で33名の定員オーバー(志願変更前)など、「15の春を泣かせるな」という県民の願いと程遠い結果となっている。
今年の入試は、どこが問題か
県教委が全目制高校の定員を334人増やしたことについては、一定の評価ができよう。しかし、多少の手直しによっても、多くの不合格者をだすなどまったく不十分であることは明らかである。その内容についても、県教委は、定時制高校のクラス増によって、再編計画からおこる諸矛盾を「弱い」定時制に押し付け、いま何とかその場をしのごうとしている。その結果、定時制の教育現場では、さまざまな困難な状況が生まれている。
こうした事態の原因の一つは、県教委の前期の再編計画による全日制高校の大幅な削減によって、多くの全日制高校入学希望者が、門前で拒否されていることにある。もう一つは、横浜市教委の再編計画により、市立港、横浜商業、横浜工業(02年度から)、鶴見工業(03年度から〉が募集停止となり、定時制高校にもいけなくなった受験生が出ていることにある。これらの結果として、大規模校化した定時制では、ひとり一人に対する暖かい教育、行き届いた指導が出来なくなってきている。
劣悪になってき施設・設備
定時制高校の現場では、クラス増により、学校によっては大規模校化がさらにすすみ、総数400名近い高校も出現した。そのために、施設・設備面において、教育活動上様々な支障が起きている。ロッカーや下駄箱が不足して、再編該当校のうち統廃合される学校へ教職員を動員して貰い受けに行ったり、生徒用ロッカーの置き場がなくなり廊下に設置するなど、現場の教職員はその対応に苦慮している。食堂では、一回に入りきらず、給食時間に食べられない生徒も出てきている。また、多目的ホールや視聴覚教室に1年生全員収まらず、各クラスでの対応を余儀なくされるなど、生徒にとって教育環境の劣悪化は限度を超えてしまっている。
生徒指導上でも頭を抱える!
定時制の適正規模を超えたクラス増や一クラス生徒数の増大は、指導上の間題をいっそう複雑多様にし、その解決能力の限界を超えようとしている。
@募集停止校が増えるなかで、遠隔地からの入学者が増え、通学時間がかかるために帰宅時間が遅くなり、生徒の安全確保に問題がでてきた。仕事や部活動にも制約が加わって、思うように活動できないなど、教育活動上支障をきたしている。
A上級生も1クラスの生徒数が増え、教室内の机や居場所を取り合うなど、いままで定時制になかった現象も現れ、息苦しくなっている。本当に定時制に居場所を求める生徒たちの中には、「恐怖感」を感じて、登校しなくなった生徒も出てきている。
B生徒が増えたために、教職員はひとり一人の顔と名前を覚えることが出来ず、本来、きめ細かい指導がモットーであった定時制は、どこかにいってしまった感がある。
C生徒増に伴い、不本意入学者の増大をもたらし、1年担任団や生活指導部が多大な負担を負わされている。たとえば、学校近隣からの苦情が絶えず、コンビニにたむろする生徒の指導を求める電話が毎目のようにかかってくるなど、対応に追われている。
D学習意欲に欠ける生徒が特に目立ち、授業中に廊下等でたむろする生徒が著しく増えている。
教育課程上も問題を抱える!
A校では、クラス数が増えたために教育課程上、時間割編成が困難になっている。また、教育効果をあげる授業を進めるに当たって、多くの問題点がでている。全日制との施設使用の調整問題もあり、体育などの実技実習の教科では、学習グループの数や施設設備面で制約が出ている。B校では、選択科目が1クラス30数名になり、ここでも教育条件の劣悪化が目に付く。
全日制募集枠の拡大と市立港、横浜商業の募集再開を!
今、悩みながら立ち上がろうとしている子ども達に手を差しのべるためには、次のことを早急に取り組むべきである。
@今進められている横浜市の再編計画を見直して、横浜市立港高校と横浜商業高校の募集を再開すること。
Aクラス増した県立5校と市立2校を元のクラス数に戻す措置を来年度に行うこと。
B少人数でゆっくり学べる定時制高校を適正規模で通える地区に設置すること。
C県立高校の再編計画を見直し、全日制高校の生徒定員枠をさらに拡大すること。
こうしたプランに向けた取り組みこそが、再生の場としての定時制高校がもっている本来の良さを取り戻す道である。