2002年3月8日

  神奈川高教組の本部執行部役員選挙が、3月15日の投票日を前にして、今各候補者がそれぞれの分会をまわり、政策を訴えています。「かながわ定時制教育を考える会」の会報『ニュース』に、この役員選挙に対する投稿がありましたので、紹介します。
 

働きやすい職場を実現し、
父母・県民と共同してたたかう教職員組合運動を

 

 今、3月15日の投票日に向けて、神奈川高教組の本部役員選挙が展開されている。
 候補者を選択する組合員をはじめ、教職員全体が直面している問題は何であろうか。それを一言で指摘すれば、「教育改革」という名による教育の国家統制であろう。

 神奈川ではこの2年間、どうそれが具体的に現れているか、見てみよう。

管理強化と多忙化で、職場から悲鳴

 職員会議に於ける校長の権限強化、「指導力不足等教員」を特定しようという動き、新たな人事評価システムの導入計画、「君が代・日の丸」について処分もほのめかした教育長通知、年度半ばにいきなり学校に強要した「学校へ行こう週間」などなど、あげればきりがない。

  これに、労働基準法や教育公務員特例法に定める休憩時間や研修権さえ、実質的には認めない日常的な「服務」の名による管理強化や推薦入試の拡大、「特色ある教育」の推進や事故防止委員会など委員会の増加が加わって、教育現場は忙殺されている。

 その結果、どんな事態がひろがっているのか。これまでになかった規模の教職員の健康被害と定年前退職の増加である。

 こうした実態が教育現場をゆがめ、学習指導や生活指導、さらに就職難に苦しむ生徒を何とかしたいという進路指導にさえ、不本意にも「手がまわりかねる」という状況が出はじめている。通院や短期間休職、さらに発症したときは手遅れと言った死亡事例が身近に起こってきている。少なからぬ教職員がひそかに、「命があぶない」と叫んでいると思われる事態である。

「組合は何をやっているんだ」という声

 「教育改革」の現実が皮肉にも、教育の営みを不条理に破壊しつつあるということである。被害者は、もちろん生徒であり、父母であり、教職員である。

 問題は、こうした教育本体を傷つけていくような国家統制的な教育政策が教育委員会を通じて現場に「スムーズに」具体化していく現実である。

 これに対して、当然の声の一つとして「教職員組合は何をやっているんだ」という強い批判が出てくるだろう。

 この批判にきちんと応えることが、今回の役員選挙立候補者の責務だろう。特に、当局との「話し合い」のワク内で執行部活動を行い、それをよしとしてきた現執行部の候補者に重い責任と率直な弁明が求められるのは当然である。

「打ち合わせのテーブル」こそ問題

  これについて、職場の教職員は、当局と同じキーワードである「教育改革」を用いるだけでなく、同じスタンスで「教育改革」をすすめ、「県立高校再編計画」という高校リストラ計画を容認していることに強い不信を抱いている。

 組合員の切実な要求を聞いておきながら、統制的攻撃に対抗できる組合員の権利意識や良識を動員するのではなく、当局と「交渉(実質的には、打ち合わせのテーブルになっているのではないかという声が多い)」だけでことを進めようとする現執行部に、多くの組合員は期待感を持てなくなっている。

 それは、教育委員会の強権的姿勢が現場に「スムーズに」具体化する条件の一つに、この「打ち合わせのテーブル」があると認識しているからである。

 今回の役員選挙は、こうした組織内に根強くなっている不信感を根本的に払拭し、新たな人事評価システムと大規模な高校リストラの攻撃にどう立ち向かい、30人学級など父母との共同による学校づくりをどうすすめるか、その方向性を明確にできる候補者の選択が求められている選挙である。この選択ができるかどうかが、組合が組合として生き残れるかどうかの鍵でもある。

父母・県民と共同したたたかいを

  こうした教育破壊の政策の強行は、生徒や父母らの教育要求との間に矛盾を生んできている。たとえば、「少子化」と言われながらも受験競争が解消せず、学校間格差や選別化がいっそう強まり、募集定員が過剰に減らされ、競争率が上昇してきている。

  定時制も横浜市にみられるように、極端な統廃合計画が進行し、定時制や通信制に入学できずに、高校進学を断念せざる得ない事態が生じることも懸念されている。

  こうした状況の中で横浜市では、定時制の保護者が中心となり「よこはま定時制父母の会」がつくられ、定時制の生徒や卒業生らとともに、募集停止に反対し、定時制の入学定員の見直しを求め、請願、署名運動、シンポジウムなど大きな運動を展開している。

 1月には、「父母の会」のメンバーが中心となり、教職員の協力を受け、定時制の現役生徒や卒業生も参加して、定時制・通信制の進学説明会を開き、定通教育が果たしている役割をアピールした。

  こうした運動にみられるように、今後の教職員組合運動は、生徒の立場に立ち、父母・県民と共同してたたかうことこそ強く求められている。これに応えられるような広い視野と見識を持った執行部の選択ができるかどうか、この点においても今回の役員選挙は、まさに神奈川高教組の命運の分かれる選挙となると思われる。
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