2000年12月6日
浜高教主催シンポジウム 「これからの定時制を考える」
募集停止ではなく、定時制は今求められている
中陣 唯夫(秦野曾屋高校)
 
  1118日、横浜市従会館において定時制高校の統廃合・募集停止に反対する「これからの定時制を考える」シンポジウムが横浜市立高等学校教職員組合(浜高教)主催で開かれた。
  これは、横浜市が一昨年の12月末に突然発表した「再編整備計画」に反対する運動の一環として開かれたもので、定時制の卒業生や父母、教職員、県立、川崎市立の定時制高校教諭など約80人が参加した。
 再編計画は、生徒数で全国最大級の港高校(1学年5クラス規模)、4クラス規模の横浜商業と戸塚高校、3クラス規模の横浜工業、2クラス規模の鶴見工業の5校を募集停止して、横浜工業の施設を使い、三部制(午前・午後・夜間)の総合学科高校を開設するという案である。学校が一つになってしまうと、通学に時間がかかりすぎて通えない子が出てしまうし、また夜間部は2クラス規模といわれており、働きながら学ぶことは難しくなるということは、計画案では全く考慮されていない。
 シンポジウムでは、浜高教の飯田洋委員長が、「定時制高校の統廃合は理不尽」とあいさつ、浅野茂雄副委員長が経過を報告。この後、浜高教製作の定時制生活を紹介したビデオ、『もう一つの挑戦』が上映されてから討論会に入り、卒業生3人父母4人のパネラーから要旨、以下のような発言が出された。
「あいまいな年齢には、あいまいな時間が必要。それには定時制がよい」
「いろんな資格が取れ、身になる勉強で皆出席」
「定時制で、人生は崩れても失敗しても幾度でもやり直せることを知った。定時制に恩返ししたい」
「学力が遅れているがそれも丸ごと認めて、指導いただき感謝している」
「せき立てられて自分を見失う若者が多い中で、定時制は大切な場。定時制はこのままでいいとは言わないが、だから廃校してもいいということにはならない」
「先生との関係がとてもよい。いつの世になっても脱線する子はいるし、居場所を求める子はいなくならない。それなのに定時制をなくするのは、すごく悲しいことだ」
「定時制は雰囲気がよく先生が一生懸命。娘も息子も中学までほとんど登校していないが、“学校紹介”で知り入学、一日も休まない。組合の『浜高教が考える再編整備計画』を読み、全面的に支援したい」
「私学を退学になった息子を定時制が受け入れてくれて、涙がとまらなかった」
 コメンテーターとして参加の元都立高校定時制教諭の小島昌夫氏から、戦後の年代ごとに変遷してきた定時制の意義などが親告され、会場からは「教育行政はまずソロバン勘定になっていて、教育とは何かが欠落している」「県立も市立の闘いと連帯していきたい」「三崎の県立定時制の廃校は地域性を考えない暴挙だ」などと定時制教育の今日的な必要性や擁護の意見が続いた。
 小島先生がまとめで発言されたように、横浜市の計画は全国的にも異常な計画できわめて問題である。県立高校定時制の「募集停止基準(2年連続入学生15名以下の場合募集停止)」の異常さとともに、神奈川の定時制教育は、「教育の機会均等」を守る上でも、定時制にかけられている期待に応える上でも深刻な危機にある。「今、大きなたたかいが求められている」それを実感させる意義あるシンポジウムであった。
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