2000年6月2日

シリーズ  「県立高校再編統廃合計画を斬る」 C

問題山積の「フレキシブルスクール」は根本的見直しが必要



  前回は、「単位制による高校」一般の問題点を指摘したが、今回は「県立高校改革推進計画」の目玉の一つともいえる「フレキシブルスクール」を取り上げる。

「構想検」答申で触れなかったことを、県教委の判断で計画に押し込む

  今回の「再編計画」のベースになったものは、県立高校将来構想検討協議会(「構想検」)の答申「これからの県立高校のあり方について」である。「フレキシブルスクール」については、1年半の協議期間中に検討されたことはなく、答申では一言も触れられていない。

  それが、答申が出てわずか9カ月後に突然、「骨子案」に盛り込まれた。どこからか、何らかの圧力により、十分に検討もされず、現場や県民からの要望が全くないのに、県教委が一方的に計画に押し込んだのが「フレキシブルスクール」である。

全国的に初めてともいえる「全定間併修による高校」を、検討期間もなしに導入

  「フレキシブルスクール」は、全日制と定時制との併修をもとに、1日8〜12時間の授業を行う高校であるといえる。生徒は1日12時間の時間帯のなかから、好きな時間に授業を受け、単位を修得することができると宣伝されている。

  しかし、全日制と定時制との併修には様々な問題が生ずることが予想され、わずかな時間帯だけでの相互乗り入れさえ、かなり難しいのが現実である。研究指定校による検討期間も一切ないなかで導入を急ぎ、フレキシブル化を強制するのではなく、「フレキシブルスクール」そのものを根本的に見直すことが必要である。

不規則な生活と不規則なアルバイトを前提とする学校は問題

  県教委は、「フレキシブルスクール」の展開例において、「身体のリズムに合わせて朝の時間帯を除いて計画」「午前中はアルバイト、仕事と勉強を両立」などと記している。朝起きられない子は、午前中は寝ていて午後から授業を受けることのできる学校、午前中でも、夜でも好きな時にアルバイトをして、空いた時間に登校して勉強するのが「フレキシブルスクール」というわけである。

  しかし、このような不規則な生活、不規則なアルバイトを前提にして成り立つような学校では、早寝早起きなど、規則正しい生活をおくるようにという指導は難しくなり、また仕事や労働に対する指導も困難となるだろう。

「フレキシブルスクール」は、新たな学校間格差を生じさせる

  「改革推進計画」では、単位制普通科高校は中退者をほとんど受け入れず、大学受験を重視する高校、「フレキシブルスクール」は単位制で普通科である点では単位制普通科高校と変わらないのに、中退者や社会人を受け入れ、昼間定時制的な性格の高校として示されている。

  「フレキシブルスクール」は、「単位制による高校」のなかに格差をもたらすばかりでなく、全日制と定時制との間に、もう一つの高校をつくり出すことにより、新たな学校間格差を導入することとなる。

  以上、このような多くの問題をかかえる「フレキシブルスクール」の設置については、見切り発車をするのではなく、根本的に見直すことが必要である。

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