2000年1月20日
翠嵐定時制、3年卒業可・「単位制」の1年担任の一人として
横浜翠嵐高校定時制 松藤 哲
翠嵐高校定時制では、今年度一年生から、3年卒業可・「単位制」のカリキュラムが導入された。私は、その1年担任2人のうちの一人である。二学期を経たが、教員の中では、問題は多いが大枠は良いと考える人もいるし、私を含め、4年卒業制に戻すほうが良いと考える人もいる。私が、感じている問題点を報告したい。
はじめに、新形態の概要を述べる。従来のように4年間で卒業したい生徒は、必修部分(1時限から4時限まで)で年間20単位(計80単位)をとる。3年間で卒業したい生徒は、さらに0時限と5時限におかれた自由選択科目の中から3年間で20単位をとる。必修科目は1年で20単位、2年で16単位、3年で4単位、残りは必修選択科目となる。
年間で20単位収得できなくても、部分的に収得した単位は生きるが、未収得必修科目は翌年度に一つ下の学年の生徒と一緒に履修しなければならない。
今の一年生では、3年卒業希望(0時限や5時限を4単位以上履修している)者が60人、4年卒業希望者が22人である。
教職員・講師時間での県からの条件整備は、一切なし
問題点の指摘に移る。まず、教職員数・講師時間での県からの条件整備は一切なく、何と講師時間は昨年度の28時間から22時間へ大幅に減らされた。そして、3年卒業のための0時限や5時限授業の設置が最優先された。そのため、上級生の授業の一部を1、2組合併とせざる得なかった。こうして、上級生と1年生の必修部分(4年卒業希望者はこの部分のみ受講する)へのしわ寄せの上でのスタートとなった。
また、一年生の人数は、新入生70名に留年生12名を加え、82人である。本来ならば、内部運用で3クラスとしたい人数だったが、講師時間数減のためとてもそんな余裕はなかった。
単位さえ取れればよいという態度の生徒が増えた
欠課可能時数までは欠席する権利があると言わんばかりの生徒、授業時間の半分経過直前に入室する生徒(授業時間の半分以上在室が「出席」の要件)、行事や生徒会活動に参加しない生徒などが一年生に例年になく目立つ。コマ切れの単位を修得することに価値がおかれ、教育の総合的に展開される面が軽視される「単位制」の弊害であろう。
従来と比べて、慌ただしさは格段である。四月初めの一週間、1年の担任は各生徒の0時限や5時限の選択科目決定の指導で忙殺され、この時期に必要な不登校生徒等への対応が十分できなかった。毎日のSHR(ショートホームルーム)は、直前直後に0時限、5時限があるため、まったく慌ただしい。生徒の授業出欠の確認もたいへんである。
中学時不登校であった生徒の定着率が下がった
二学期末の時点で、欠課時数が多く、ほぼ全科目単位収得不可能と予測される一年生の割合は、43%である。中学校で不登校だったと私が確認できる生徒に限ると、全科目収得不可能と予測される生徒の割合は、64%にのぼる。
本校は、不登校だった生徒の定着率が高い(7、8割)と言われてきたが、このことは崩れた。学校での学習がまだ不得手な生徒にとっては、新形態は、居心地の悪い制度であることは間違いない。
(3年卒業制を導入する前の定時制高校の実態については、松藤 哲氏の報告「労働と学習を並行し、ゆっくりと丁寧な時間が生徒を育てる ― 定時制高校から」を参照して下さい。
さらに、夜間定時制高校に3年卒業制や「単位制」を導入することが、どれほど弊害が多く、現にさまざまな問題を生みだしているかについては、以下の報告をお読み下さい)
「3修制」導入は、定時制教育と高校教育全体の改悪(『ニュース44号』)
夜間定時制への3年卒業制導入はなぜよくないのか(『ニュース38・39号』)
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