2026年7月12日
3月に発表された県の「業務量管理・健康確保措置実施計画」で
教員の長時間過密労働は解消されるのか
神奈川県教育委員会は3月、「神奈川県立学校の教員の業務量管理・健康確保措置実施計画」(以下、「実施計画」)を発表しました。
これは、昨年6月に改定された「公立学校等における給与等に関する特別措置法」(給特法)において、各教育委員会に対して「教員の業務量の管理・健康確保措置計画の策定と公表の義務付け」が打ち出されたことに伴うものです。
ただ、当初から「公表の義務付け」は、校長に対する義務付けとなり、時間外労働(残業)を減らすために、「学校に残るな。早く帰宅せよ」というハラスメントや持ち帰り仕事が増加するのではないかという懸念が出されていました。今回の「実施計画」によって教員の長時間過密労働は解消されるのでしょうか。
約13%の高校教員が月45時間超の残業を行う
県教委は、2019年に「教員の働き方改革に関する指針」を策定し、時間外在校等時間の縮減(月45時間以内等)、年次休暇年15日以上取得及び5日間の学校閉庁日設定、部活動休養日週2日以上などの取組みを進めてきました。
しかし、時間外在校等時間が45時間を超える教員割合は以下の表(「実施計画」から引用作成)のように、ほとんど改善されていません。
時間外在校等時間が月45時間超の教員割合
県立高等学校 県立特別支援学校 市町村立小学校 市町村立中学校 2023年度 14.5% 6.6% 25.3% 42.2% 2024年度 12.8% 5.3% 23.6% 39.6%
時間外在校等時間が年360時間超の教員割合
※市町村立学校における年360時間超の割合は2024年度から調査開始
県立高等学校 県立特別支援学校 市町村立小学校 市町村立中学校 2023年度 29.4% 14.4% ー(※) ー(※) 2024年度 26.8% 12.5% 48.2% 56.1%
「実施計画」による業務の見直し
学校以外が担うべき業務の見直しについて、校外の見回り、児童・生徒が補導等された時の対応は、「放課後、特に勤務時間外における校外の見回りについて、学校による対応は原則行わないこととします」とされています。
しかし、課題集中校などにおいて果たして可能なのでしょうか。結局、例外として行うことになるのではないでしょうか。疑問が残ります。
学校徴収金の徴収・管理は、国の「指針」では
計画の策定にあたって、文科省は「業務量の適切な管理・・・・健康および福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」(以下、「指針」)を出しています。
学校以外が担う業務に分類
そこでは、業務の3分類を踏まえ、管理すべき業務を@学校以外が担うべき業務、A教師以外が積極的に参画すべき業務、B教師の業務だが、負担軽減を促進すべき業務として、三つに分けています。
国の「指針」では、学校徴収金等の徴収・管理については、以下のように@の学校以外が担う業務に分類されています。
「給食費等の学校徴収金について、歳入歳出予算に組み入れる対象範囲や徴収手続き等の精査を進め、○年度予算を目途に公会計化を実施する」
県の「実施計画」では、
一方、県の「実施計画」では、徴収金等の徴収・管理は、@(県の表記ではア)の業務ではなく、A(県の表記ではイ)の業務のなかで、次のように述べられています。
学校以外が担う業務には分類されず
「国指針では、『学校以外が担うべき業務』と位置付けられていますが、本県の県立学校は、学校によって様々な特色があり、学校徴収金等の種目や金額も異なることから、直ちに学校徴収金等の公会計化を行い、学校以外が徴収・管理業務を担うことは難しい現状があります」
学校により様々な特色があり、徴収金の種目や金額も異なると記されていますが、これは、別に神奈川県だけに限ったことではなく、全国どこにおいても言えることです。これだけで、学校以外が担う業務とすることは難しいというのは、説得力がありません。
結局、業務量の軽減にはつながらない
では、徴収金等の徴収・管理をどのようにおこなうのか。「実施計画」では、その後で次のように述べています。
「当面は、私費会計業務の見直しや、業務アシスタントの活用等により、教員の負担軽減に取り組みます。また、更なる負担軽減に向けて、事務補助スタッフの配置や、出納管理システムの導入等について検討します」
業務スタッフの活用は現在でも行われており、事務補助スタッフの配置や出納管理システムの導入等について検討するということでは、当面業務量の軽減にはつながらないといえます。
「検討します」ばかりでは、当面業務量は変わらない
イの「教員以外が積極的に参画すべき業務」については、六つの項目があげられています。
調査・統計等への回答では、「調査回数の縮減」と記されていますが、「大幅削減」とすべきです。また、「教員の専門性に深く関わるものを除き、事務職員等が中心となって回答できるよう、事務補助スタッフの配置等を検討します」とされています。
さらに、ICT機器・ネットワーク設備の日常的な保守・管理については、「日常的に機器や設備を保守・管理できるよう、専用のヘルプデスクによる支援を行うほか、システム改修等による負担軽減を検討します」と記されています。
学校プールの管理については、昨年川崎等の小学校であれほど問題になったものの「教員以外の人材等の活用を検討します」としか書かれていません。
校内清掃については、「教員は児童・生徒が行う教室等の清掃指導を行うこととし、その役割を超える業務について、教員以外の人材等の活用を検討します」とされているものの、教員による教室等の清掃指導は当然視され、あとは「検討します」で終わっています。
このような「検討します」「検討します」では、当面業務量は変わらない、軽減しないといえます。
根本解決のためには、
B(県の表記ではウ)の「教員の業務だが、負担軽減を促進すべき業務」についでは、「ICTの活用」、「ICT支援員による技術支援や業務アシスタントの活用」、「採点システムの活用」、「教員以外の人材の活用を進めるほか、ICTを活用した業務の効率化」など、現在でも行われていることの活用ばかりが記されており、これで業務の大幅軽減が可能になるとは思えません。
大幅に専任教員を増やすことが必要
また、学校における業務量の管理、健康確保に関わっては、「学校における教員の『働きやすさ』と『働きがい』の両立を図るためには、校長がリーダーシップを発揮し、効果的に学校マネジメントを行うことが重要である」と記されています。
さらに、「勤務時間管理システムを活用し、客観的勤務時間の把握を徹底するとともに、時間外在校等時間が規則上限を超えた場合に、該当職員に対して個別に注意喚起等を行います」とされています。
しかし、校長による「学校に残るな。早く帰宅せよ」というハラスメントをどのように防ぐかについて、「実施計画」は全く触れていません。
教員の長時間過密労働を解消するためには、教員未配置をなくし、県単独加配を増やすとともに専任教員を大幅増員することが必要です。
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