2026年2月11日
寄 稿
2025年度の教科書採択について
教科書を考える川崎市民の会 畑山 裕
川崎市の教科書採択の実状
川崎市の教科書採択を審議する教育委員会議は、基本的に日曜日を利用して開催され、会場は180名程度の傍聴が可能な会議室(2015年度は会場前のロビーも解放して257名が傍聴)を使用しています。
また傍聴者へは採択に関わる基本的な資料が提供されます。そのため、一見すると川崎の教科書採択は、市民の要求に応じた、開かれた採択を行っているような印象になっています。
しかし、2014年の採択時には、東京都や神奈川県・横浜市と同様に、現場が選定した実教出版「高校日本史A」を、デタラメな理由で採択拒否。また、事の顛末を把握するため、教育委員会議の音声データの開示請求を行った市民に対し、廃棄したとウソをつき、あげくにデータそのものをいん滅するなどの不法行為をはたらきました。
この件に関し、担当者は停職3ヶ月の懲戒処分を受けましたが、教育委員会は、内部の体質や組織ぐるみとも思える不正を省みようとはしませんでした。その後の情報公開をめぐる別の事件では、司法から情報の開示拒否を「条例違反」と断じられても、反省する様子を見せていません。
採択会議では2019年から昨年まで、会議冒頭に毎年4月に決定する「教科用図書採択方針」に含まれない「確認事項」を教育長が提案し、教育委員の了承により採択の指針とすることが続きました。
本年は教育長が交代し、会議冒頭の確認事項の提案はありませんでした。しかし、新教育長は発言の中で、学習指導要領や川崎教育プランで扱う学習の留意点に触れ、行政サイドからの視点を重視する観点を示しました。また前任者が必ずあげた、「生徒を把握している現場の声を大切にしたい」という文言にも触れました。
しかし「現場」がどこまで「学校現場」や「教科会での協議」・「生徒や教員の意見」などを指すか不明で、「現場=校長や指導主事」の場合も考えられます。言葉自体は丁寧な印象ですが、「現場」の対象が明らかでない以上、恣意的な運用が可能で、今後とも留意する必要があり、市民・教員からの監視が欠かせません
右派勢力の採択への介入について
昨年の中学校教科書の採択では、川崎市と横浜市へ右派団体から採択に関する請願が出されました。内容は、歴史・公民の教科書について @教育基本法(2006年改悪)の趣旨や学習指導要領の目標・内容に最もふさわしい(右派の考えに則した)教科書を採択するA南京事件・慰安婦・LGBTQの記載に留意すること、などを要求するものでした。
今年は両市への請願はなく、全国で神奈川県を含め10都県(当該団体のホームページによる)へ以下の請願が行われました(要旨)。
@実教出版「歴史総合 新訂版 むすびつく世界と日本」の南京事件の記載は、誤解を招きかねない不適切なものなので採択を控えること
A「南京事件」を授業で教える場合は、中国軍が国際法違反の便衣兵として戦闘行為を行ったこと。20〜30万人の「大虐殺」等の根拠がないことを補足説明すること。
この主張は長年にわたる多角的な「南京事件」の実態解明の成果を省みない、右派サイドの一方的な歴史修正の見解表明に過ぎず、到底認められるものではありません。
各都県では
@教科書検定に合格した教科書をあらかじめ定めた採択方針に基づいて採択するので、「請願者とは認識が異なる」として不採択(神奈川県)
A教科書採択の手続き(現場で選定し教育委員会議で採択)が必要で「手続きを経ずに特定の教科書を採択できない」・各教科の指導方針は学習指導要領に則り各学校で教育課程を編成し、それに基づいて授業が行われるので、「教育委員会が方向性を導くことではない」ため、(教育委員会議に)付議しない(完全な門前払い)」(千葉県)など、当然と言える対応でした。
しかし、昨年の中学校歴史教科書の検定に令和書籍「国史」が合格するなど、右派勢力の教科書採択への介入が強まっています。来年度以降も教科書採択へ右派の団体や政治家が介入する可能性が高いのではないでしょうか。歴史を歪める流れを許さない取組みがさらに必要です。
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