2025年10月20日
 

今年春の全日制進学率は87.9% 過去30年間で最低
2018年度(90.9%)から7年連続低下を深刻視せず

 来年度の「計画進学率」も今年と同様90.01%と決定
 進学率向上を目指さないのか

 

春の進学率は87%台 ここ30年間で最低  「概ね9割を維持してきた成果」と主張

 7月31日の第2回公私立高等学校協議会(以下、公私協)で、今春の進学率が発表されました。公立中学卒業者66,347人に対し、公立38,486人(58.0%)、県内私立14,773人(22.3%)、県外私立5,079人7.7%で、全日制進学率は87.9%(昨年は88.2%)でした。

 全日制進学率が87%台になるのは、1995年度以降ありません(それ以前のデータを調べ切れていないので、もう少し遡るかもしれません)。この間、最低の進学率は2011年度の88.0%です。また、90.9%であった2018年度以来、進学率は7年連続低下しています(以下の表参照)。

 しかし、公私協ではこうした事実に深刻に向き合おうとせず、まったく議論が行われませんでした。

 入学定員計画の策定案の「令和8年度定員計画の方式」において、「これまでの経緯を勘案し、かつ、これまでの定員計画により全日制進学率が概ね9割を維持してきた成果を踏まえ、・・・・・策定する」とされています。

 進学率が87%台になったことや、7年連続低下していることに対して、四捨五入して「概ね90%」だから問題ないという姿勢が現れています。

公立中学校卒業者の進路状況別進学率

進学
年度 
 公立
中卒者数
全日制
進学率 
 公立
進学者率
 私立
進学者率 
 県外
進学者率
定時制
(県内外)
進学者率 
 通信制
(県内外)
進学者率
 2010  68,711  88.2  60.4  19.4  8.4 4.2  4.5 
 2011  66,521  88.0  60.4  19.5 8.1 4.3  4.7 
 2012  67,856  88.3  60.7  19.5  8.1  4.0 4.1
       
 2016  70,397  90.9  61.8  20.6 8.5 2.9  3.5 
 2017  69,996  90.7  62.1  20.2 8.4  2.9 3.6 
2018   69,140  90.9  61.9  20.9  8.1  2.6 3.9 
 2019  68,742  90.8  61.6  21.1 8.1   2.2 4.4 
2020   67,115  90.5  60.5  21.6  8.4 2.1  4.8 
 2021  65,159  90.3  60.1  21.8 8.4  1.9  5.4 
 2022  67,124  89.6  59.0  22.5  8.1 1.9  6.0 
 2023  68,002  89.3  58.8  22.1  8.3 1.8  6.3 
 2024  67,056  88.2  58.4  21.7  8.1 2.0  7.3 
 2025  66,347  87.9  58.0  22.3 7.7   1.9  7.4

来年度の計画進学率も90.01%に決まる

 来年度の募集計画は、8月26日第3回公私協で審議されました。来年度の募集定員について、私学側から14,900人、公立側から39,300人が提示されました。これに、県外私学進学者を8.16%として、進学率を算出すると89.86%になることが、県教委事務局から示されました。

 私学側から、最初から90%に届かない計画ではどうなのかという発言があり、それぞれで再検討され、公私ともに50人プラスされました。その結果、全日制進学率が昨年と同じ90.01%になると示され、この策定案を設置者会議に報告することが決まりました。

 公私協の「定員計画の策定について」の「基本的な考え方」の視点Aには「全日制高校への進学実績を向上させるように努めること。・・・そのために必要な抜本的な対策を検討していく」と記されていますが、今回も進学率を向上させるための抜本的な対策についてまったく議論がなされませんでした。

 9月5日の神奈川県高校設置者会議では、知事も「概ね90%」と語り、この策定案通り承認され、決定されました。

全日制希望率は89.4%  全日制進学実績は、88.2%(24年度)

 右のグラフが示しているように、全日制高校を希望する中学生の割合は低下してきています。一方で「広域通信制の希望増」により、定時制と通信制希望が増加してきています。

進学希望調査は夏休み前に行う必要がある

 ただ、この希望調査は毎年公立中学校3年生に対して、10月に実施されているものです。

 10月調査では、それまでの間に担任との面談で、全日制への進学が難しいことが強調され、定時制や通信制を選択せざる得ない状況に追い込まれていることが推察されます。

 特に、広域通信制では7月から8月には入学が保証され、進路が決まります。10月調査での全日制希望は少なめに出ることが想定されるので、夏休み前の6月頃調査することが必要です。

全日制進学希望と実績を、限りなく近づける対策

 定時制・通信制の希望が増えているものの、実際に定時制や通信制に進学した実績は希望を3.6%上回っています。この3.6%は、希望していない入学、不本意入学ともいえます。

 それに対して、全日制進学希望は89.4%であったのに、実際に全日制に進学できたのは88.2%であり、この1.2%は希望していたのに、全日制に進学できなかった数を示しています。

 公私協が、「基本的な考え方」で「全日制高校への進学実績を向上させるように努める」と謳っているのなら、全日制進学希望が低下していることを問題視したうえで、希望と実績を限りなく近づける対策を検討することが必要です。

県教委は深刻な状況変化に向き合っているのか

 かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会(以下、定通懇)は、7月27日8項目の内容の請願を県知事と県教育長に提出しました。以下、4項目の要旨を示します。

・全日制を希望するが子どもたちが全日制高校に進学できるのに十分な定員計画と条件整備を県が責任をもってすすめること。

・公立、私立の高校奨学金を充実すると共に、通学費など、授業料以外の費用についての支援制度も充実すること。

・現在、10月に実施している「公立中学卒業予定者の進路希望調査」を、当該年度の募集計画に反映させるよう、より早い時期に実施し、生徒の進路希望に沿った募集計画を作成すること。

・生徒の学ぶ権利を保障するため、一学年9学級以上の大規模校や過密学級を生み出す高校統廃合を中止し、今後あらたな高校削減はおこなわないこと。

 8月22日に行われた県教委8月臨時会で請願が審議されました。前年と同じ内容の項目については、情勢や状況の変化があるにもかかわらず、毎年のように、まったく審議することは行われませんでした。

 全日制進学率が7年連続低下し続け、ついに今春には過去30年間で最低の87%台になったという深刻な状況変化に対し、県教育委員会は真摯に向き合っていないといえます。
 
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