2021年5月1日

コロナ禍、深刻な影響を受ける夜間定時制生徒の実態と生の声

 
 「かながわ定時制通信制教育を考える会」は、コロナ禍で夜間定時制生徒が仕事や生活でどのような影響を受けているのかを知るために、昨年末に県立夜間定時制高校(2校)の生徒にアンケート調査を行いました。

 その結果、厳しい家庭環境のもとで、仕事や生活に深刻な影響を受けている実態が明らかになりました。

ひとり親家庭と考えられる生徒の割合は、驚くほど多い(60%以上の学年も)

 アンケートでは、「誰と同居しているのか」と問うことによって、父母と同居している生徒、兄弟・姉妹、祖父母との同居は問わず母親とだけ同居している生徒(以下の表で母と同居と記載、母子家庭と考えられる)、同じく父親とだけ同居している生徒(父と同居と記載、父子家庭と考えられる)、同じく祖父母とだけ同居している(祖父母と同居と表記、両親がいない家庭かもしれない)生徒の割合がわかりました。

 父母と同居   母と同居   父と同居  祖父母と同居 一人で生活 その他
 A校  1年生   7(32%) 13(59%) 1(4.5%)    0 1(4.5%)  0
2年生  20(53%) 9(24%) 7 (18%) 1(2.5%)   0  1(2.5%)
 B校 1〜4年生  25(62.5%) 10(25%) 1(2.5%) 3(6.5%)   0 1(2.5%)

 

 ひとり親家庭と考えられる生徒は、A校1年生では63.5%であり、なかでも母子家庭と思われる生徒は59%と驚くべき割合となっています。2年生でも、ひとり親家庭と考えられる生徒は42%と高い割合を示しています。

 B校では、両親ではなく祖父母と同居している生徒が3人、姉とだけ同居している生徒が1人いました。

 母子家庭の年間収入は、243万円(2017年厚労省発表)であり、経済的な理由から夜間定時制を選択していると思われます。高校にも、小・中学校と同様な就学援助を行うことが必要です。

コロナ禍で、働く時間が減り、給料額が減少する事態に

 コロナによって、「働く時間や給料額がどうなったか」をアンケートで調べました。

 
 働く時間が減った   働く時間が増えた   変わらない   辞めることになった 
 A校  1年生     1(12.5%)      1(12.5%)  6(75%) 0
2年生     9(39%)     4(17%) 1(44%) 0
 B校 1〜4年生     2(12.5%)     1(6%) 10(69%)       2(12.5%)

 給料額が減った   給料額が増えた   変わらない 
 A校  1年生 2(25%)    1(12.5%) 5(62.5%)
2年生 8(35%) 2(9%) 13(56%)
 B校 1〜4年生 1(6.5%) 1(6.5% 13(87%)
 

 両校とも、コロナ禍で働く時間が減ったり、給料額が減少した生徒がかなり出ています。特にA校2年生の39%で働く時間が減り、35%で給料額が減少しています。3分の1以上の生徒が深刻な影響受けています。

 また、「コロナの影響によって仕事の内容や強度など何か変化がありましたか」と問いました。    

   
 変化があった   変化はない 
 A校  1年生 1(12.5%) 7(87.5%)
2年生 11(48%) 12(52%)
 B校 1〜4年生 3(21。5%) 11(78.5%)
 

 A校2年生では、半分近くの生徒が仕事の内容や強度に変化があったと答えています。

 どのような変化があったのかについて記入してもらったところ、「出勤時間の変更」、「お客も減ったが、人手も減ったのできつくなった」、「アルコール消毒が強化された」、「接客業だが、接客を控えるように指示が出ている」、「マスク、手袋常に着用」、「手を洗う回数、アクリルの壁、アルコールの使用」など仕事が増えていることなどが示されました。

 また、「仕事がなくなって、新しい仕事(配達)を見つけた」という記述から、仕事を辞めさせられ、転職することになった生徒がいたことがわかりました。

家族の収入が減った生徒は20%以上

 次に、「コロナの影響によって家族の収入に変化があったかどうか」を問いました。

   
 収入が減った   収入が増えた   変わらない   未記入・わからない 
 A校  1年生 4(18%) 0 16(73%)     2(9%)
2年生 9(24%) 1(2.5%) 24(63%) 4(10.5%)
 B校 1〜4年生 8(20%) 1(2.5%) 26(65%) 5(12.5%)
 

 両校とも20%以上の生徒にとって、家族の収入が減る事態となっています。特に、ひとり親家庭と考えられる生徒が多かったA校2年生では、約4分の1の生徒において家計の収入が減少しています。

コロナ禍で、生徒は不安と怒りをかかえている

 アンケートの最後で、「今一番感じていること、考えていること、怒っていること」などを書いてもらいました。以下に、主な生徒の声を紹介します。

・経済面が不安なので、できるだけ早くこの環境を終わらせてほしい。(15歳)
・バイトが全然できない、友達と遊べない。(16歳)
・満員電車で感染してしまう可能性が高いのが心配。自分がうつしてしまうか不安に思う。(20歳以上)

・家族のストレスがたまり、自分もイライラすることが多くなったと思っています。高校生になり、人が減ったことも原因ですが、外で遊べないということが思っていたよりも辛いです。収入が減ってお金のことでギクシャクしています。早く終わってくれ。(1年)
・仕事がない。(20歳以上)
・介護とか福祉系がコロナで大変になっても、まだ収入が低いこと。(17歳)

・家族がコロナに感染し、関係が破断したのが残念である。(18歳)
・すべてのことにおいて何かしらを気にしなければならない。友達と騒げない(大声を出せない)(15歳)
・早く収まれば良いなと思う。でも学校には電車に乗ってこないといけないし、うつらないかこわい。自分がコロナになった後、他の人にうつしちゃうのが一番こわい。犬にうつらないか心配。(1年)  
・なかなか出かける(主に都会)ことができなくて少しストレス。(1年)

・いつ休校になるかわからないので心配です。(16歳)
・学校の勉強の進度が不安(2年)
・コロナが蔓延している中、これ以上感染者を増やさないために努力をしている人がいるのに、平然とルールを破ったり、それに対して文句をいう人たち。(1年)
・自転車こぎながらのマスクはつらい。(1年)

・Go to 〜 をやっているから感染者が増えていると思うから考えてほしい。(1年)
・あまり外食ができなくなり、友達と遊びに行けなくなったことがコロナの影響でショックを受けています。(2年)
・GWにスケジュールがあったがどこにも行けなくなった。(17歳)
・大阪だけにコロナ治療センターを置くのはかわいそう。Go to キャンペーンを今すぐ停止してほしい。感染者を増やさないように国民が徹底してほしい。(2年)

・国の対応がずさんすぎて怒りを感じている。政治家の給料を減らせば少しは国民に給付できると思う。(2年)
・最初に比べ、間違いなく全体の危機感が薄まり、自分本位な行動をとる人が増えた印象がある。(2年)
・マスクが嫌いなので落ち着いてほしい。(18歳)

・楽しみにしていたイベントがなくなった。(16歳)
・コロナの中、マスクを着けていない人がいていや。(16歳)      
・オリンピックやるってまじ言ってんの? あと飲み会とか忘年会やったやつらには罰金でいいんじゃない。たのむから遊びに行く奴らを止めてくれ!(1年)

 

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