2020年5月17日

寄 稿

夜間定時制高校の削減狙う
「川崎市立高等学校改革推進計画第2次計画(案)」について

 
  現在、川崎では市議会に多部制の市立川崎高校定時制夜間部の募集停止と、高津高校定時制(夜間)の募集クラス数削減を含む「市立高等学校改革推進計画第2次計画(案)」が報告され、教育委員会会議での決定と議会での採決待ちの状況となっています。

2003年再編計画」は市民の運動でストップに

 2003(H15)年5月に公表された「川崎市立高等学校教育振興計画」は、市立定時制5校を11クラス募集は変えずに三部制高校1校と夜間定時制1校の2校とする計画でした。

 この計画で再編を審議した「定時制課程検討委員会」の報告は、定時制の生徒や保護者さらには公募市民に加え現場教職員もメンバーとなり夜間定時制の必要性を打ち出し、加えて多くの市民の方に協力いただいた署名が力となり、「再編が必要」とする意見と「生徒にとって通いやすくゆったり学べる夜間定時制が必要」だとする意見の両論併記になり、再編はストップしました。

 しかし、どうしても多部制高校を作りたい行政は市立川崎高校の全面改築に便乗し、定時制の11クラス募集は変更しないものの商業高校定時制を廃課程とし、2014年に川崎高校を昼間部2クラスと夜間部2クラスの多部制定時制にしました。

夜間定時制希望の生徒を閉め出す
「川崎市立高等学校改革推進計画第2次計画(案)」

 今回の「2次計画(案)」は、その川崎高校の昼間部は希望者が多く夜間部は志願者が少ないので、夜間部を廃止し昼間部を4クラスにし、高津高校も倍率が低いので3クラス募集を2クラス募集とするものです。

 しかし、1月30日発表の今年の入試では昼間部2クラス70人募集に対して志願者54人と「空き」がでています。

 議会での「夜間部が廃止されると夜間を希望する生徒が行き場を失うのでは」との質問に対し、担当者は「市立川崎高校の夜間部がなくなっても近くに県立川崎高校定時制があるから生徒は通える」などと、生徒や現場の実態を一切考慮しない回答を行いました。

 県立川崎高校定時制は単位制のフレキシブル校なので、1時20分から授業を受けることが出来て実質は昼間定時制と変わらないため倍率が出ています。市立川崎高校夜間部と県立川崎高校定時制の受検者は、下表に見るとおり過去4年間では合計108人~81人となり、70名の定員では行き場を失う生徒が出てしまいます。

県立川崎校と市立川崎校について各夜間部の受検者数と倍率 ( )内数値が倍率

定員 2017年 2018年 2019年 2020年
県立川崎高校 70  83  (1.19)  83  (1.19)  67  (0.94)  65  (0.93)
市立川崎高校 70 25  (0.36) 14  (0.20) 14  (0.20) 18  (0.26)

教員増員等で改善すべき勤務条件を夜間部の廃止にすり替え

 さらに、同校では多部制にもかかわらず教員の勤務時間は通常の定時制の時間帯とし、昼間部の授業は2時15分開始で切れ目なく夜間部の授業を接続させるため、県立の多部制高校にもない勤務態勢を現場に強いた結果様々な問題を引き起こしています。

 行政は、この無茶な学校運営を省みることなく「昼間部に1本化するのは教員の勤務軽減の意味もある」などと、自らの施策の失敗を棚に上げた説明すら行いました。また高津高校のクラス減も、基準も作らず応募者の少なさのみが理由で非常に恣意的な判断です。

 計画が認められると市立定時制11クラスが10クラスとなり、夜間のみに限ると9クラスが6クラスになってしまうだけでなく、さらに夜間定時制の削減を進める布石とも考えられます。

夜間定時制は様々な事情を抱えた生徒の大事な成長の場

 夜間定時制に学ぶ様々な事情・状況にある生徒の学習権を守りひとり一人の、成長の場を保証するためにも、夜間定時制を守る事が必要です。

 川崎市議会文教委員会で1月30日に行われた陳情の審査は、市教委がパブリックコメントの結果も示していない事もあり陳情は「継続審査」となりました(2月末現在)。市立川崎高校定時制夜間部と高津高校夜間定時制を守るため、ご理解とご協力をお願いいたします。
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