2019年7月16日


      

「フル・インクルージョン」の強調ではなく、
増設されたインクルーシブ教育実践推進校(11校)による20年度開始は、延期を



 神奈川高教組(神高教)は昨年末、「インクルーシブな学校づくりをすすめよう」という職場討議資料を出しました。そこでは、県教委のインクルーシブ教育に対する位置づけ、県立高校改革におけるインクルーシブ教育、インクルーシブ推進事業に対する神高教の評価、インクルーシブ教育実践推進校の課題などが記されています。これまでの神高教本部執行部のインクルーシブ教育にたいする評価や方針がまとめられた資料と考えられます。

 しかし、討議資料にはまだ評価が定まっていない語句や課題が含まれており、今後分会内で共通理解が得られなかったり、意見が分かれたりすることが予想されます。
 

通級による指導、特別支援学級などを認めるのは「フル・インクルージョン」に反するのか

 討議資料は、「県教委は、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校による『多様な教育的ニーズに応じた教育の充実』を掲げており、『フル・インクルージョン』を志向していません。今後の神奈川の具体的なとりくみを『できるだけ高校で学ぶしくみづくり』としています」と記されています。「フル・インクルージョン」については様々な考えと評価がありますが、討議資料では何の説明もなされていません。

 神高教本部執行部は、特別支援学校や特別支援学級を認めることは「フル・インクルージョン」に反すると考えているのでしょうか。「通級による指導」は「フル・インクルージョン」からははずれていると考えているのでしょうか。「通級による指導」も認めないとなると、現在インクルーシブ教育パイロット校の一部で行われている「個別授業」(『取りだし』授業)も厳密に言うと「フル・インクルージョン」に反するということになります。

 討議資料では、神高教の今後の運動方向として「フル・インクルージョンをめざして、教育条件整備を前進させることです」とも記されています。

インクルーシブ教育実践推進校に対しては教育条件の整備・充実と20年度開始の延期を求めよう

 「障害者権利条約」では、「教育の目的を人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること、精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること、・・・・それを踏まえ、障害者が初等教育から又は中等教育から排除されないこと、・・・・個人に必要とされる「合理的配慮」が提供されること」などと規定されています。

 「障害者権利条約」を踏まえるならば、「学ぶ場が分離しているのか、同一なのか」という「場」の問題だけに着目し「同一時間・同一空間・同一内容」を絶対的なものとして強調することは、障がいのある生徒を通常の学級に単に押し込む「投げ込み」(ダンピング)になってしまい、生徒一人ひとりに必要とされる「合理的配慮」の否定につながり、インクルーシブ教育とは言えません

 今、組合に必要とされているのは、「フル・インクルージョン」を強調することではなく、昨年10月に増設指定されたインクルーシブ教育実践推進校(11校)に対して強制されている2020年度開始の延期を求めることであり、パイロット校をはじめとするインクルーシブ校への十分な教職員加配と教育条件の整備・充実を強く要求することです。

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