2018年6月24日
根本的に解決されていない教職員の超過勤務問題
教育の質低下、これ以上子どもたちを犠牲にするな!
元民間会社労働組合側安全衛生委員 沢崎 三郎
私は民間会社で働き、労働組合側の安全衛生委員として労働環境に力を入れてきた者です。2013年頃から教職員の超過勤務が問題になりメディアでも大きく取り上げられてきましたが、しかし抜本的な対策が打ち出されるどころか教育現場はさらに悪化している現状に私なりの意見を述べたいと思います。
教育現場はまさに「正常性のバイアス」状態
「正常性のバイアス」とは民間会社で言う生産ラインで何かの危険な異常警報を何回も鳴らしているのにも関わらず、生産を停める事を避けたいという思考が優先され危険な事象を無視する、過小評価してしまう事で、新幹線の台車亀裂事故がいい例です。
まさに教職員の超過勤務問題も先送りにされ根本の原因と解決方法が見出されていない事は同じ事象だと思います。子どもたちに充分な教育が出来ない教育の質低下と放置、いつまでも子どもたちが犠牲になっている現実に腹立たしく思います。
残業時間の記録を残す必要性
民間会社ではタイムカードかパソコンで出退勤記録を取り残業時間を管理しています。従って記録のない残業は残業とはみなされず残業代は出ません。
学校ではタイムカードやパソコンによる労働管理をしておらず、教職員一人ひとりの超過勤務が管理者も組合も把握できてない事は問題です。また長時間労働の裁判では記録の有無が決定的になります。
組合は教職員の超過勤務実態を監視する体制を
世間では、「教職員の超過勤務が問題になっているのに組合はなにをしているの?」と疑問を投げかける人は多いです。「教職員の健康を守る」というところでは当局と組合の役割と権利は同じであり、労働管理を上司だけに任せるだけでなく組合は教職員の長時間残業をしっかり監視する体制を作るべきです。
みなし労働のような「給特法」の撤廃を
1971年に制定された調整給である「給特法(教職員給与特別措置法)」は、現在の教職員の多くが月当たり80時間を超える超過勤務になっているのにも関わらず、あまりにもかけ離れた制度です。みなし労働と同じ性格のもので撤廃すべきです。
民間の会社と組合が取り決める36協定を結ぶべきで所定時間を超えた場合は時間当たりの割り増し賃金を払う賃金体系を作るべきです。
労働安全衛生委員会を有効活用し超過勤務の是正を
労働安全衛生法は「職場における労働者の安全と健康を確保」するとともに、「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。民間会社では労働安全衛生委員会があり、労使各5名程が安全推進委員となって対等に意見を出し合い、安全と健康に対する調査なども行っています。
教育現場でも法に定めた労働安全衛生委員会が実質を伴うように有効活用すれば超過勤務問題は是正されると考えます。