2017年12月27日


統廃合見直し、学校規模縮小、事務・司書・現業の定時制専任化を要求



 11月13日「くらしと営業を守る神奈川県市民連絡会」による教育・文化・スポーツ分野交渉が行われ、「かながわ定時制通信制教育を考える会」メンバーも参加しました。この交渉は毎年、秋に県民生活全般にわたって行われている県との交渉です。7月に「要求書」を提出、9月に県から文書回答があった後、対面での「質疑応答」が行われました。県側の参加者は、県教委・総務室から企画調整担当課長をはじめ、22名でした。

 交渉を通じて、県の担当者が高校現場の状況や生徒・保護者の実態を把握できていない面も明らかになっています。現場教職員や生徒・保護者・県民に寄り添った教育行政の実現のため、粘り強い交渉の継続が必要です。以下、交渉の主な内容を紹介します。


観点別評価、定期試験の共通化、35週問題、卒業式・入学式での国歌斉唱の強制、教科書介入について

 県立高校に押しつけている法的根拠のない「観点別評価」、「定期試験の共通化」、「1単位授業35週確保」、
「教科書選定への介入」、「卒業式・入学式での国歌斉唱の強制」をやめること

<文書回答要旨>
 「観点別評価」に関しては、国からの「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(いわゆる「指導要録の改善通知」)の中で、高等学校及び特別支援学校高等部における評価の観点及びその趣旨が記載されており、これからの時代に求められる資質・能力の育成には必要不可欠なものです。

 「定期試験の共通化」に関しては、各県立高等学校等の学習評価に対する妥当性、信頼性を高めるとともに、定期試験に関する事故防止に資することを目的としており、組織的な授業改善の推進に向け大変重要な考え方であると認識しております。

 「1単位授業35週分確保」及び「卒業式・入学式での国歌斉唱の強制」に関しては、学習指導要領に実施の趣旨が記載されております。
 「教科書選定への介入」に関しては、教育委員会が採択するという原則に基づき、対応しております。

<質疑による県教委の回答>
1.上記の5項目の内容について、「県教育委員会として、指導・助言であり、指導・助言は命令ではない」ことを認めた。

2.「観点別評価は教育的効果と数値化について否定的な意見があり、多くの疑問が学校現場から出されている。学校教職員全員の意識調査をすべきではないか」という質問に対して、県教委は、「観点別評価と数値化などは、文科省が観点別評価で5段階と言っている。教職員の意識調査でなく、アンケートなどは検討してみる。」と回答。

3.「定期試験の共通化は、強制できないのではないか。主体的で対話的な深い学びが言われているが、生徒集団によっては、様々な工夫によって内容的に深い内容の授業となるが、低学力の場合には基本的な学習内容となるため、単純にテストの共通化は難しく矛盾する。」という質問に対して、県教委は、「妥当性と信頼性から共通化を言っている。」と回答した。「他県ではやってない」との質問に対し、「他県は準備を進めていると解釈している」と回答

4.「1単位授業35週分確保は、現在の多忙化に加え、生活指導や学習指導などでゆとりがないために支障があり、強制することはできない。また、卒業式・入学式での国歌斉唱の強制については、本来、教職員に対しても強制はできないはずである。少なくとも生徒・保護者に対しては強制ができないことを事前に説明すべきではないか。文科省も強制ではないことを事前に説明することは創意工夫の一つとして認めている」という質問に対して、県教委から特に反論なし。

5.「教科書選定への介入」について、次のように問題点を指摘した。
 日本以外の多くの国では、教科書の採択権は教師にある。県教委の回答の「教科書選定への介入に関しては、教育委員会が採択するという原則に基づき、対応しております。」という内容では、回答になっていない。百歩譲って教科書の採択は県教委にあることを認めたとしても、教科書を「選定」する権限は各学校にある。したがって、実教出版の高校日本史教科書について、2013年から2016年まで行った県教委事務局による「各学校の教科書選定への再考」は県教委の不当な介入であり問題である。
 この意見に対して、県教委から特に反論なし。

6.「上記の1~5までに関わって、次の「ILO・ユネスコ勧告」を文科省も認めており、県教委も尊重するか」という質問に対して、県教委の高校教育指導課も尊重することを認めた。
  

相模原青陵と弥栄高校の統合について

今後12年で20校ちかくを統廃合する計画の見直し(中止)を行うこと

<文書回答要旨>
 相模原青陵と弥栄高校の統合は相模原南部にある単位制の高校であること、普通科では共通教科「数学」「理科」「外国語」等において、これまでの相模原青陵高校の多文化共生教育の取り組み、弥栄高校の国際科、理数科での成果を生かした特色ある教育を展開するとともに、「音楽科」「美術科」「スポーツ科学科」では、より専門性を高めた教育を行える事から統合の対象とした。新しい高校では、普通科、専門学科の教育内容を充実、発展させるとともに、グローバルな社会を生き抜き、様々な分野で活躍できる人材の育成を図ります。

<質問と発言>

青陵も弥栄も前回の再編からわずか10年であり、発展途上にある。この間の総括もしないでスクラップ&ビルドを繰り返すことに憤りを感じる。

双方の内容は大きく異なるものがある。多文化教育で入学する生徒は日本語の基礎から学んでいる。弥栄の3つの専門学科はエリートを集めたものであり、基礎力を重視し、2,3年生に多くの実技科目を選択科目にしている青陵とは普通科としてもタイプが異なる。

通学の利便性も問題がある。相武台前からも歩ける位置にある青陵を廃校にすることは地元の高校が新磯、相武台と2つなくなることで相模線沿線地域住民の要求に反する。
各現場の声を聞かないで決める再編統合(廃校)は止めてほしい。
担当者には前任者が決めたことが正しいものか否か判断し、誤りは正す勇気をもってほしい。

<県の回答>
 申し訳ないが、遠くからきている生徒もいる。←質問とずれた回答をしています
 

高校の過大規模校問題について

1学年9~10学級の大規模校を解消すること

<文書回答要旨>
 学校規模の適正化については県立高校改革推進検討協議会報告「県立高校の未来像について」(2014年6月)では、1学年8学級で全体24学級(960人)から1学年10学級で全体30学級 (1,200人)が望ましいとされています。この報告を踏まえながら2016年1月策定の県立高校改革実施計画では、「現行の標準規模以上」とすることを基本としつつ、それぞれの学校や生徒の実情にも配慮して取り組むこととしています。

<質問と発言>
来年度は36校が1学年9学級以上の大規模校になる。前回の高校再編時には、「1学年6〜8学級が適正規模」としていた。

90年代末、課題集中校の多くが8学級を10学級に増やし1クラス32人編成にしてきめ細かい教育を目指していた。2校が統合して新設された総合学科は6学級(240人)で募集したが、8学級展開(30人編成)して、一定の成果を上げた。中途退学者が減ったり、行事への出席者が増えたりした高校も多くなった。

その後できた単位制高校やクリエイティブ高校も同様で少人数学級を実施している。また、多くの学校30人以下などの少人数授業を展開している。逆戻りとも言える大規模校化はやめて欲しい。

市民会館などはほぼ定員1,000人以下である。大規模校では体育館に入りきらず芸術鑑賞も都内や市外へ行く有様で、行事そのものが中止になっている現実さえある。

小学校の35人学級も小1でストップしている。早急に小・中学校を計画に従い35人にした後に、高校でも35人学級を実現することが少子化時代の行政の仕事ではないのか。

来年36の高校で8を超える9・10学級となるが、超えた分を合わせると104学級4169人になる。9年後に子供数が減るが、規模は2017年度比で約6%減4200人である。1学年8学級を上限とすれば、現在の学校を減らす理由はどこにもない。⑦教育の質を高めようとするなら、統廃合ではなく、1学年9・10学級の解消を進めるべきである。大規模校による生徒や教職員へのしわ寄せ、教育の困難制や弊害について実態の調査を行ってほしい。

<県の回答>
 調査を実施することは約束できないが、検討することを含め上に報告する。
 

教育振興費・環境整備費・図書費などの私費負担をなくす計画はあるのか明らかにすること

 県立高校として、教育振興費・環境整備費・図書費などの私費負担をなくす計画はあるのか明らかにすること。制服購入や
修学旅行などについての負担軽減のための計画はあるのか明らかにすること

<文書解答要旨>
厳しい財政状況の中、教育振興費等の私費負担を解消することは困難であると考えております。

<質問と発言>
 「教育の無償化」が叫ばれている中で、授業料をとりながら、教育振興費などを徴収しているのは大きな矛盾である。とくに、県立高校の私費負担は全国・他県や横浜・川崎の市立高校に比べて突出して高い。「奨学給付金」があると言うがそれは全国一律基準となっており、神奈川の県立高校の生徒は高い私費を取られてしまうため他県に比べて大きな不利益を被っている。私費負担軽減策は考えないのか。

<県の回答>
 神奈川県の私費負担が他県(全国)に比べて高いというのは知らなかった。私費負担の状況を調べながら対応していきたい。←他県や全国の私費負担の状況について知らなかった様子です
 

定時制で生徒がいる時間帯に専任の事務職員や司書・現業職員が配置できていない状況について

 夜間定時制の生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、東京や埼玉では
置かれている夜間定時制専任の事務職員を配置すること。
 また、定時制専任の現業職員や図書司書を配置すること

<文書回答要旨>
定時制を併置している学校の実情に応じて、事務職はローテーション方式、司書・現業
職員については非常勤職員を配置している。

<要望・意見>(時間がなくなったため、回答は求めず)
 現行の「ローテーション」や「非常勤配置」は19時までで終わっている。しかし、生徒は21時から22時近くまで学校にいて、教員の勤務時間は21時30分ないし22時ごろまでとなっている。また、21時前後は夜間定時制においては最も事故やトラブルなどが多い時間帯であり、事務職や現業職員など専門職がいない、人手が少なくなる現状は不便であり危険でもある。速やかに改善して欲しい。

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