2015年4月5日

 県民団体「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は12月神奈川県議会に「高校統廃合を見直し、全日制高校進学率を近県並みに引き上げるよう求める請願」を提出しました。
 「請願」は「諸般の事情により不採択(県議会からの通知文より)」とはなりましたが、今後の計画進行過程で県交渉や要請行動などを重ねて、「計画」を生徒・保護者・県民の要求と学校現場の実態に合ったものにあったものに変えていくことが重要です。以下、12月17日県議会文教常任委員会で、「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える会」として行った口頭陳情を紹介します。

2015年12月17日

県議会文教常任委員会での口頭陳情(要旨) 

高校統廃合を見直し、全日制高校進学率を近県並みに引き上げるよう求める請願


 県立夜間定時制高校に勤務する保永と申します。

 2000年から2010年まで行われた、前回の「高校改革」で良い点は少人数授業が多くの高校で実施されるようなったことです。
 今回の「計画」では「生徒の学びと成長にとって何が必要かという視点(スチューデントファースト)」、「質の高い教育」「生徒の多様性(ダイバーシティ)」が掲げられています。

 いま神奈川の高校教育に必要なものはなにか。いまの神奈川の生徒の置かれた状況をよく把握したうえで、優先順位をつけて慎重に考え、知恵を出す必要があります。

 まず、神奈川の全日制進学率は90.2%で全国最低水準。約2000人の生徒が、全日制を希望しながら定時制や通信制に行かざるを得ないという状況が、ここ10年余りも続いています。
 入学できなければ、話になりません。東京の92%、埼玉の93%、千葉の94%に比べて格段に低い。全国平均、近県なみの、93.5%の達成がまず必要です。
 それを保障した上で、質の高い教育も求められています。

 いまやOECD諸国の高校での学級規模は30人以下、25人前後が主流となっています。
 世界保健機構(WHO)では、 1 校当たり 100 人規模の学校を目指すよう勧告を出していて 「非人格的な規則ではなく、人間的な関係に基づいたインフォーマルで個性的な教育は、こうした条件のもとで初めて可能になる」とも言っています。

 教育は生徒と教員、生徒相互のコミュニケーションの中から生まれます。密度の濃いコミュニケーションから、生徒自身を揺さぶり、生徒自らが活動し、個性を伸ばす教育が可能となります。そのためには少人数の環境が絶対的に必要です。

 「計画」ではこの12年間で、生徒数が7000人減るとしています。教員数・学校施設など、現在の教育条件をそのまま維持するだけでも、ほぼ35人学級が可能になる計算です。これはまたとない絶好の機会です。
 「質の高い教育」を目指すならば、まず学級定数の縮小と学校規模の縮小が必要です。30人学級を目指し、まず35人学級から始める。学校規模も1学年6学級から8学級以下をめざして整備を進めることが必要です。

 私は27年間、全日制高校に勤務した後、定時制に転勤して10年目になります。
1980年代の全日制では1クラス40人を8クラス担当して合計320人の授業を担当したこともありました。
 今年は全校生徒158人の夜間定時制で、1クラス17人から15人のクラスでの授業をさせて頂いております。生徒一人一人が常に把握できて、それに合わせた教材の準備など、これまでにない、「質の高い授業」ができています。生徒を十分に把握するには教員の側にも「ゆとり」が必要であると痛感しております。

 生徒の多様性(ダイバーシティ)への対応、インクルーシブ、共生社会に向けた取りくみなど、求められるものはたくさんあります。しかし、これらは30人、35人学級や、過大でない学校規模などの、少人数教育をベースとしてのみ、可能となります。
 その教育条件整備がないまま、「指定校」で学校を多様化して、生徒や各学校の間での競争をあおっても、生徒を発達、成長させることはできません。

 生徒を工業製品の原料のようにとらえるのではなく、みずから意思を持った、発達途上の人間であるととらえて、その尊厳を大事にしながら行う教育が必要であると思います。
 

かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会

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