2015年10月20日
県教委発表の『20〜30校削減』は言語道断!これ以上削減するとやっと戻った90.2%の全日制進学率の低下は必至
県立高校142校を維持して、 少人数学級(全日制35人、定時制30人)の実現と
全日制進学率92.1%の達成を!
9月10日の県議会・本会議で桐谷教育長は質問に答えて県立高校の20〜30校削減を含む県立高校改革実施計画の概要を答弁しました。その後、9月30日の文教常任委員会で「県立高校改革実施計画(全体)【素案】」が発表されました。
『2016年度を初年度とし、2027年度までの12年間で、現在142校ある県立高校のうち、20校〜30校を削減する。障がいのある生徒を受け入れるインクルーシブ実践推進校を20校程度指定する。学校規模についてはこれまでの標準規模(6〜8学級)以上にする。』など、時代の趨勢や生徒の変化に逆行するなど、教育予算の大幅削減に貫かれた内容となっています。このまま実施されれば、生徒・保護者・高校現場の混乱は必至です。
また、9月7日には「神奈川県公私立高等学校設置者会議」が開かれ、全日制進学率90.3%を目指す来年度の生徒募集計画がほぼ決まりました。2015年度の全日制進学率は90.2%と、10年ぶりに90%台を回復しましたが(2005年90.1%)、まだ47都道府県中46位と、非常に立ち後れています。しかし、来年度以降の県立高校削減を見込んで、公立高校募集枠を抑えたため、これではいつまでたっても近隣の千葉(94%)、埼玉(93%)、東京(92%)に追いつくことはできません。
県立高校削減は言語道断 強行すれば「定時制の混乱」が再現
神奈川の全日制進学率(90.2%)は、全国最下位レベルです。2000年〜2010年にかけて行われた「県立高校改革」で25校の県立高校が削減されたため、全日制進学率は92.5%(97年)から88.0%(11年)にまで低下し、定時制は1.3%(97年)から4.3%(11年)、通信制は1.7%(97年)から4.7%(11年)へとそれぞれ3%ずつ増加して、全国でも飛び抜けて多くなり、全日制希望者が定時制・通信制に殺到する不本意入学が大問題となって、その影響は現在まで続いています。
他県なみに高校に入れる条件づくりが必要
こんな理不尽な事を更に繰り返してはなりません。99年の「県立高校改革推進計画」では93.5%の進学率達成と更に向上させることを目標に掲げました。その実現は県行政および公立・私立学校関係者の責任です。そのためにもこれ以上の県立高校削減をしてはなりません。
高校削減は高校の大規模化をまねき、教育条件を悪化させる
「実施計画」(素案)では「質の高い教育の充実」を第一に掲げています。しかし、142校の県立高校で20校から30校を削減するというのは余りにも乱暴な話です。
「質の高い教育の充実」は不可能となる
校舎施設などの条件で、6〜7学級以上に拡大できない学校もあるため、それ以外の高校では1学年10クラス以上、場合によっては11クラスや12クラスの大規模展開も予想されます(下表参照)。
現在でも横浜北部地区などでは、1学年10学級の高校も多くなり、全県的にも前の計画で適正規模とされていた6〜8学級を超える高校が増えています。その結果、選択科目が減らされたり、少人数での授業展開ができなくなるなどカリキュラムの変更を余儀なくされ、『教育の質の低下』を招いています。
教育条件を悪化させておきながらの「質の高い教育」とは、現場教職員に「死ぬまでガンバレ」と言っているようなもので、『ブラック企業』そのものです。
学校規模や学級規模の縮小のないインクルーシブ教育は無責任もはなはだしい
「インクルーシブ教育」は計画の目玉になっています。障がいを持つ生徒が高校の普通学級で共に学ぶことは大変意義があることです。しかし、生徒同士が相互に理解し合って共に学ぶ環境をつくり、教職員も目が行き届いた実践を行うには、それなりの条件づくりが欠かせません。その第一は学級規模の縮小と学校規模の縮小です。しかし、計画ではクリエイティブスクールが「弾力的学級編成(現在1学級30人)・1学年6学級」とされているのに対して、今までの経験もなく、さらに指導が困難と思われるインクルーシブ教育実践推進校は「1学年7学級規模を標準」としています。
いま、神奈川では全体に少子化がすすむ中で、障害児学校への入学者が急増しています。今後もさらに10校程度は必要といわれるなかで、2校しか増設の予定はなく、高校の数倍維持コストがかかるといわれる障害児学校の増設を減らすための「計画」と言われても仕方ありません。被害を受けるのは安上がりの教育を受ける立場の生徒たちです。
高校削減をやめて、数年内に近県なみの93.5%の達成をめざして
来年は全日制進学率92.1%の募集計画を全日制35人・定時制30人学級の実現で「質の高い教育」を
現在の高校数を維持すれば、全日制進学率を近県並みに引き上げても近い将来、35人学級や30人学級の実現が可能になります。国際的に見て、今の日本の高校教育の問題点の1つは「大規模・過密教育」です。
生徒数が減少するいまは大規模学校解消・少人数学級実現のまたとないチャンスです。各生徒が受け身でなく積極的に参加する機会も増え、「質の高い教育」も可能になります。高校削減をやめて、全日制進学率を引き上げ、学級規模を縮小する。それがいま、県当局のなすべきことです。