2015年5月27日


 危うい、『校長のリーダーシップ』  職員会議を無視した『校長のリーダーシップ』が学校を破壊

「パワハラ指針」を守り、「職員会議にもとづく学校運営」で教職員の衆知を集めた、
生き生きとした学校づくりを


 2015年3月、定時制課程のあるA高校で、分会決議が挙げられた。校長の解任を求める決議である(以下にその決議を掲載)。A高校では2014年4月のB校長着任以来、職員会議や企画会議さえ無視した校長の独断によって「改革」が断行され、全日制、定時制ともに校内運営に混乱が生じていた。
 B校長は在任1年で行政職に転出したが、その混乱によって残された痛手は大きい。

 教育改革の中で、「職員会議の形骸化」が言われて久しい。文科省や教育委員会などからは相変わらず「校長のリーダーシップ」が言われ続けている。2015年1月に県教委が出した「基本計画」にも、7つの重点目標の一つとして「重点目標4 学校の教育目標の着実な達成をめざす学校経営に取り組みます・・・・学校評価や第三者評価をいかしながら、校長のリーダーシップの下、学校経営力を向上させるとともに、高い専門性と実践的指導力を備えた教職員を育成します。」とある。

 しかし、この間「校長のリーダーシップ」が強く押し出される中で、一般教職員の「高い専門性と実践的指導力」や「日常の教育実践で培われた見識」を無視した、校長の「独断」があたかも「リーダーシップ」だとするような校長の行動が目立つようになった。
 校長主導の企画会議・総括教諭体制がすすむなかで、職員会議の「形骸化」は深刻である。職員会議が戦前の『御前会議』のように、報告や指示をするだけの場になってしまっている職場も多くなり、「校長のリーダーシップ」をチェックする場が学校から失われている。

 また、このケースでは、2012年9月に県教委が策定した「パワー・ハラスメント防止等に関する指針」からみても重大な違反行為が見られる。指針には「児童・生徒の目前における叱責等は慎重な配慮が必要である」とあるが、このケースでは人事評価を使って職員を「指導する」旨を生徒の前で公言しており、職員に対するパワハラだけでなく、生徒の人格をも否定する深刻な違反行為である。

 このようなケースを再発させてはならない。全県の高校職場で何が起こっているかを把握し、「パワハラ指針」に基づく一斉点検をするとともに、職場での合議にもとづく学校運営を復活させて、人権侵害や労働過重など、不適切な学校運営がされていないかを見直す必要がある。



A高等学校 B校長の解任を求める決議


 A高等学校のB校長は、10月21日の職員会議で、多くの職員の反対意見を無視して、2015年4月から、①従来の40分授業を45分授業に変更、②20分休憩を無くし、全て5分休憩とする、③1限前に10分間のSHRを設ける(新1年生は9分授業と1分のSHR)の内容の「17時45分始業、21時15分終業の新日課表」(現在は20時55分終業)を実施することを決定した。

 これについては、一学期より多くの職員から、生徒の通学条件、夕食時間の確保等生徒の健康面など、実施にともなう問題点や更に検討する必要等が指摘されていたにもかかわらず、それらの指摘や意見を全く取り入れないままに行われた。
 11月26日には全校集会を開き、全校生徒に対して「新日課表」の実施を表明し、もし要望や意見があれば話し合いに応じると述べた。それを受けて、12月12日には話し合いの場が設けられ、約20名の生徒が集まったが、対応したのは教頭と総括教諭の2名で、校長は参加しなかった。

 その後、12月24日の終業式において、複数の生徒の発言をきっかけに、多くの生徒から帰宅が困難になる等の重大な問題点、および生徒への校長の対応の不誠実さ(12日の話し合いに校長が不参加、12日に多くの要望が出た後も24日現在回答も含め何の具体的対応もない等)などが指摘された。

 1月5日、校長は総括教諭に指示して、12月24日の終業式での発言の中心となった3名の生徒に対して始業式前日の1月7日15時に登校するよう電話連絡を行い、3名の生徒は5日の電話連絡のあと7日まで、極度の緊張を強いられた。

 1月7日の「話し合い」は、3名の生徒に対して、校長、副校長、定時制教頭、総括教諭の計4名の教員で対応し、15時から17時までの2時間に及んだ。しかも、この「話し合い」は、他の教職員には全く知らせず、校舎一階の応接室でカーテンを閉じた密室状態で行われた。
 「話し合い」の中でB校長は、翌8日の始業式の全校集会で話す予定の「生徒の質問に対する回答」を示して了解を求め、8日の全校集会での発言を封じる事前工作を行った。また、やりとりの中で、「校長の考えに反対の先生が居ることは承知している・・・そういう先生を辞めさせることはできないが、(人事評価の)評価を下げることはできる。」との内容を発言した。
 8日の全校集会で校長は「生徒からの話は聞く」といいながら、既定どおり4月からの「新日課表」をそのまま実施することを再度表明し、生徒からの要望は全く無視された。

 こうしたB校長の度重なる圧力に対して生徒会は、校長相手では全く事態の改善がないと判断して神奈川県教育委員長宛の署名行動を始めたが、これに対しても、生徒会の生徒を呼び出し、「これは裏切り行為だ」と発言した。

 2月4日、校長は全校集会を開き、「新日課表」の修正を表明し、「①終業時刻を9時15分から21時10分にする。②1限の前に置かれていた10分のSHR(新1年生は9分授業と1分SHR)を4限の後ろ(一番最後)に変える。③SHR10分間としてあるが、事情のある生徒は担任に申し出れば早く帰っても良い。21時に下校することもできる。」との内容の説明を行い事態の収拾を図った。 

 これまでのB校長の対応には以下のような問題点がある。
(1) 校内教職員の持つ情報の共有や意見の把握、収集をせず、独断で問題の多い「新日課表」を決定したこと。

(2) 帰宅時間が遅くなり、学校に通えなくなる、夕食がとれなくなるなどの生徒の不安や意見に対して誠実に対応しなかったこと。

(3) 多くの生徒の不安や意見を代表して発言した生徒会の生徒に対して、密室で長時間にわたって圧力をかけ、その後も繰り返したこと。

(4) 事態の収拾ということで「21時15分終業」を「21時10分終業」に修正し、新2年~4年生に対しては「21時に帰っても良い」と公言したが、 新1年生は「9分授業と1分SHR」であり21時10分まで拘束するため、21時に下校することは全く不可能である。深夜の帰宅時間について、1年生だけを遅くまで全員拘束することは、社会常識から逸脱しており、上級生と1年生とを別の基準で指導することは学校運営の基本から外れていて混乱を招くことは必至であること。

(5) 「校長の考えに反対の先生が居ることは承知している・・・そういう先生を辞めさせることはできないが、(人事評価の)評価を下げることはできる。」との発言は、
① 人事評価について校長が恣意的評価をすることが当然であるかのような印象を与えたこと。
② 校長が職員の合意形成に失敗し、職員集団の力を活用できていないこと。
③ 生徒に対して、条理でものごとを説くという教育者の姿勢に欠けること。
④ 生徒の校長に対する信頼、一般教員に対する信頼、学校に対する信頼、ひいては大人に対する信頼を失う、信用失墜行為であること。
⑤ 生徒の前で公言するということは、その保護者、兄弟、友人、先輩、卒業生、一般県民にそのことが周知されることであり、世間一般の学校に対する信頼を失う行為でもあること。
  の点で、きわめて重大な問題である。
(6) さらに、2015年4月の人事異動では、職員会議等で校長に対して積極的に修正や反対の意見表明をした複数の教員を含む10名以上が転出予定であり、教員定数28名の3分の1以上にも及んで来年度の校内運営にも支障が出る事態のみならず、校長に意見をすると冷遇されるとの印象を教員集団に与える結果となっていること。

 以上のことから、A高等学校B校長は、学校教職員の先頭に立ち、生徒も含めた学校総体を代表する学校長としては不適格であり、解任を要求する。
 以上、決議する。

2015年3月18日     神奈川県高等学校教職員組合   A分会(定時制)一同


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