2014年12月14日


11月7日、「かながわ定時制・通信制教育を考える会」では、県立高校改革に対しての意見書を神奈川県教育委員会に提出しました。


「県立高校改革 基本計画(仮称)【素案】」に対する意見書

現行の学校適正規模の維持
県立高校の統廃合ではなく、全日制高校進学率の大幅向上を

  

かながわ定時制・通信制教育を考える会 代表  保永 博行


教育の質を低下させる学校規模の拡大ではなく、現行適正規模の維持を

 「素案」は、「学校の活力をより高め、円滑な学校運営を行うためには、県立高校の再編をとおして、現行の標準規模以上にすることが望ましいと考えます」として、1学年6〜8学級という現行の学校適正規模を拡大することを打ち出しています。その根拠として、「学校行事の活気が乏しくなる、生徒会や部活動などの生徒の活動が成り立たなくなる」、「教員数も少なくなり、結果として、教員一人当たりの校務分掌が増える傾向・・・・授業の準備に費やす時間がとれなくなるという傾向にあります」等が挙げられています。

 「素案」によれば、クリエイティブスクールや定時制の高校は初めから8学級以上の学校より活力が低いということになります。そもそも、学校の活力を高めるために生徒数を増やすという発想そのものが安易であり、教育的でありません。学校行事や部活動については、生徒の参加率が問題であり、生徒数を増やしても参加率が低下すれば活力が高まらないのは明らかです。

 また、教員一人当たりの仕事量については、前回の県立高校再編以降急激に増大した調査や報告など重要性の乏しい事務仕事を精選し削減することが必要です。神奈川県内だけではなく全国の状況を見れば、7学級以下の学校でも円滑な学校運営を行い、活力ある教育を行っています。

 逆に何より問題なのは、適正な学校規模を1学年9学級〜10学級までに拡大すると、さまざまな問題が生じてくることです。すでにこの規模にまで拡大した学校では、選択教室や特別教室が少なくなったため選択授業が削減されただけではなく、2クラス3〜4展開という少人数授業ができなくなってきています。また、校内措置で1学級を30人ないし35人編成にする柔軟な学級編成も不可能となりました。

 この間の少人数授業や柔軟な学級編成が不可能となった経過は、まさに学校規模の拡大が教育の質の低下をもたらしているといえます。私たちは、1学年6〜8学級という現行の学校適正規模を維持することを強く求めます。


県立高校削減ではなく、全国最下位の全日制高校進学率の向上を

 「素案」は、「神奈川の高校で学ぶ意欲をもった生徒に対して教育を受ける機会を提供できるよう、公教育の保障の観点から検討します」と記されています。

 神奈川県の全日制高校進学率は、2000年度以降進められた県立高校の統廃合(25校削減)によって、ここ数年全国最下位(2012年度89.4%で47位 全国平均は92.3%、2013年度89.8% 46位 全国平均92.4%)となり、毎年2000人もの子どもたちが全日制高校に入学できず、定時制や通信制に殺到し、定時制、通信制の大規模化と教育条件の悪化がもたらされています。このような深刻な状況を踏まえるならば、「基本計画」は「検討する」という表現ではなく、明確に「全日制進学率の向上を目指す」とすべきです(前回の「改革推進計画」では進学率を94%にするという数値目標を掲げていました)。

 ところが、「素案」は今後の県内中学校卒業者数の減少を強調し、学校規模の拡大を目指しているため、県立高校の統廃合(削減)が懸念されます。しかし、中学校卒業者の減少についてはあくまでも見込み試算であり、今後外国籍生徒の増加等、他県に比べて人口移動の多い神奈川県の状況を踏まえることが必要です。県立高校の削減ではなく、全国最下位の全日制進学率を全国平均である92.4%、さらに県教委自身が前回の「改革推進計画」で目標として掲げた94%まで向上させることを「基本計画」に盛り込むことを求めます。


校長のリーダーシップ強化ではなく、教職員・生徒・保護者の協議や合意形成に基づく学校運営を

 「素案」は、「校長のリーダーシップの下、全教職員が一丸となって、すべての生徒への質の高い教育の提供に向けて、組織的で機動的な学校運営を進める」と校長のリーダーシップを強調しています。

 しかし、前回の「県立高校再編」によって導入された校長のリーダーシップや権限強化から、教職員の意見を無視したトップダウン、企画会議などによる管理職や一部教員の専断、教職員の教育に対する意欲減退、同僚性の希薄化、パワハラの発生など、学校運営に様々な問題が生じています。校長のリーダーシップ強化ではなく、教職員・生徒・保護者の協議や合意形成に基づく学校運営と企画会議の見直しを「基本計画」に盛り込むことが必要です。


「単位制高校」の改編削減は、説明責任を持った総括を行うべき

 「素案」は、単位制普通科高校について「比較的簡単に単位が修得できる科目など安易な科目選択をしてしまう生徒もみられる」、「学年制の高校との差異が少ない教育課程を編成している高校もあります。」と指摘、また総合学科高校について「普通科目を選択する傾向が強くなっていること、比較的簡単に単位が修得できる科目など安易な科目選択をしてしまう生徒もみられる」などと記し、改革の方向において「教育課程の編成と運用の改善」(単位制普通科高校)、「学科の設置趣旨に沿って、これまでの取り組みを見直し」(総合学科高校)と根本的な改革を打ち出しています。

 そもそも、単位制普通科高校や総合学科高校については、前回の「県立高校再編」(2000〜2009年度)の最大の目玉であり、この期間中に再編新設された全日制40校のうち20校、定時制10校のうち10校がこうした「単位制高校」でした。

 しかし、「素案」がここで挙げている問題点は、前回の再編計画が実施されるまえに私たち「考える会」をはじめ何人かの識者がすでに指摘し、「単位制による高校」を設置することに対し、十分すぎるほど慎重でなければならないと主張していました。こうした批判に耳を傾けることなく「単位制高校」を美化し量産したものの、初めから憂慮されていた問題点が肥大化し財政的な問題が浮上するもとで、撤退をする方向を打ち出したものと思われます。

 しかし、わずか10年ほどでの方針転換はあまりに無責任です。単位制普通科高校や総合学科高校の改編削減については、説明責任を持った総括を行う必要があります。

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