2014年10月3日



「県立高校の将来像について(報告)」の問題点を踏まえ、「基本計画」の策定を!

校長のリーダーシップ強化ではなく、
教職員・生徒・保護者の協議や合意形成に基づく学校運営を

全県統一学習達成度テストの実施や各校科目ごとの共通テストの強制ではなく、
教職員の専門性や創意・工夫の尊重が重要


 6月3日に発表された「県立高校改革推進検討協議会」の「県立高校の将来像について(報告)」(以下「報告」と略す)には、前回の『ニュース』122号で指摘した学校規模と統廃合の問題点の他に、まだ数多くの問題や矛盾が含まれています。
 今号は、校長のリーダーシップと全県統一学習達成度テストや各校科目ごとの共通テストについて取り上げたいと思います。

校長のリーダーシップ強化により生じた問題は多い   企画会議等の見直しを

 「報告」は、「自主的・自立的な学校経営の推進」の項目で「校長のリーダーシップ」という一項を設け、以下のように記しています。
 「校長は、リーダーシップを発揮し、副校長や教頭、総括教諭等と企画・調整を円滑に進めながら、学校教育計画を着実に実行するための学校経営にかかる資質・能力の一層の向上を図ることが必要である。」

 校長のリーダーシップについては、以下に見られるように前回の「改革推進計画」(2000~2009年度)における「成果」のひとつとされています。
 「職員会議の位置づけの明確化やグループによる運営組織体制の確立などの取組みが進むとともに、予算・人事面における校長意見の反映など、校長の裁量権の拡大を図り、校長がリーダーシップを発揮して学校運営の活性化を図る体制づくりが進められた。」(「県立高校改革推進計画10年間の成果と課題」2010年8月 今後の高校教育のあり方検討プロジェクト会議)

 「報告」は今後、校長のリーダーシップを一層強化していくことを求めています。しかし、校長のリーダーシップや権限強化から、パワハラの発生(横浜S高校定時制など)、企画会議などによる管理職や一部教員の独走、教職員の教育に対する意欲減退、同僚性の希薄化など、学校運営に様々な問題が生じています。

 校長のリーダーシップ強化ではなく、教職員・生徒・保護者の協議や合意形成に基づく学校運営と企画会議の見直しを「基本計画」に盛り込むことが必要です。


全県統一の学習達成度テストは必要ない  科目ごとの共通テストの強制は専門性と矛盾

 「報告」は、国の「第2期教育振興計画」で指摘されている「達成度テスト」を全国に先駆けて神奈川で行うことをめざし、次のように記しています。
 「それぞれの学校段階で県内統一の学習達成の状況を調査するなど、全国に先駆けた取組みを期待したい。」 「また、各学校が生徒の学習状況の達成度を理解し、生徒と教職員が学力達成の目標を立てる根拠として、これまで県立高校で実施してきた学習状況調査を改善し、5教科の必履修科目の学習状況を測る県立高校生徒対象の学習達成度調査のような全県統一の調査を工夫することも考えられる。」

 しかし、私立や市立の高校が参加せず県立高校だけでおこなう学習達成度テストでは、県内統一の学習達成の状況調査とはなりません。さらに、神奈川だけの先行実施は十分な意義を見いだすことはできず、全国に先駆けることをめざして導入されたものの他県から見向きもされていない「観点別評価」と同じ道をたどることが予想されます。

 また、「報告」は全県の県立高校すべてで科目ごとの共通テストを行うことを強制しています。しかし、それぞれの科目は教員の専門性に関わります。共通テストは、教員の専門性や創意・工夫と矛盾する側面があり、強制することは教育の質の低下につながります。全県統一学習達成度テストの実施や各校科目ごとの共通テストの強制を「基本計画」に盛り込まないことを求めます。

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