2014年8月14日

「学校にローアンの風を」連続講座に参加して F  最終回

「労安法」を現場に定着させ、
     改悪された教育委員会法との矛盾を突く闘いを



 この連載を終える今月の13日、皮肉にも参院本会議で、自民、公明などの賛成により、首長が直接任命する教育長を教育委員会のトップに据える教育委員会法の改悪が可決成立した。そこで、「労安法」にとってのこの事態と、今後の「労安法」定着の方向性とを考えておきたい。
 

教育委員会に貫徹する国の姿勢が、「労働安全法」の後退に?

 この法案に対する最も強い批判・危惧は、教育が時の政権、首長の政治姿勢に左右されたり、支配の下に置かれるというものであった。もっともである。生きた例は、石原都知事時代、橋下大阪市長の言動で知られる。確かに今日の教育委員会には問題が沢山あるが、ともかくも国や自治体首長からの「独立の行政」として維持されてきたのである。

 それがこの改悪により、昨今の専断的な政府の姿勢が文科省を通して都道府県教委へ上意下達で下ろされ、自治体の「大綱」に貫徹する可能性が大となる。もちろん、経済効率本位の教職員人件費等の「合理化」などにより「労働安全法」の目指すものが大打撃を受け、その一方で教基法の「教育の目的」と「国家の目的」の方向とが一致していくのも十分予想される。こうした向こう見ずな「教育行政」が、さらに現場に混沌と疲弊をもたらすのを座視するわけにはいかない。

 

教育現場の条件改善に、いささかの猶予も許されない

 「労安法」を活かす方向が後退すれば、現場の教職員の「身分・健康・生活・生命」の保全も、致命的に不安定になってゆくのは避けられなくなるだろう。比例するように、児童・生徒たちの受ける教育の実質性が薄まらざるを得なくなるのは明らかである。

 教育委員会のトップに立つ新教育長は、教職員が月平均90時間の超過勤務で病んでいる現場実態を前に大きな矛盾と困難に直面するだろうが、ぜひ抜本的改善を図るべきである。

 

労働実態を記録し、公務員災害の救済と防波堤に 

 新教育委員会制度の下での対抗策の基本は、もちろん「労働安全衛生法」を生かした現場の取り組みである。労働密度の程度が更に高まることは自明と思われるので、多様な闘いの展開はもとより、この「講座」レポートで述べてきたことに加え、不幸にして心身に公務・通勤の災害が発生したり過労死した場合に備えて、ぜひ面倒に思わず日々の「勤務記録」をストックしておくことを緊急に提起しておきたい。職場で記録しやすい書式、方式を協議して生み出す。また、家族に記録を頼んでおくとなおよい。補償申請し認定を得るうえで決め手の「証言」となるからである。

 労働災害の受付・審査の所轄は、民間は労働基準監督署だが公務員は都道府県と指定都市に支部を置く地方公務員災害補償基金(地公災)である。因みに本県・地公災への全申請数は12年度で1349件、うち小学校から高校までの教員で547件で約40%、認定率は約91%であるという。

 ただし、過労死の認定には数年から10年、中には訴訟の事案もある。原因の一つに、「申請」には学校長や教育委員会の「承認」が必要で、彼らは、承認すれば自らの監督責任を問われかねないと逡巡することがある、と指摘する声もある。あれば「救済本位」に是正させたいものである。

 今日のこの教育行政の歪んだ、退廃した姿を象徴する事例(エピソード)を銘記し、こうした現実をも教職員は乗り越えていかねばならないのだと呼びかけて、この連載を終えたい。

 
 静岡県の磐田市の小学校に新採用赴任した女性教師が、わずか半年で自家用車内で焼身自死する事件が発生した。荒れる学級と孤立無援の下で追い詰められての自裁であった。彼女の葬儀の折、当時の磐田市の教育長は「大事な会合が…」と式の直前に、後は部下に任せて帰ってしまったという。

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