2014年7月5日


現行の学校適正規模(1学年6~8学級)を否定し、
     9~10学級規模も適正標準とする「協議会報告」は、
            高校削減と教育予算縮減を強く県教委に促す内容である

学校適正規模維持と
  統廃合反対の声に応える「基本計画」を策定せよ!



 県教委が設置した「県立高校改革推進検討協議会」(以下、「協議会」と略す)は、6月3日「県立高校の将来像について(報告)」(以下、「報告」と略す)をまとめ、教育長に手交しました。「協議会」は、昨年8月末に出された「神奈川の教育を考える調査会」(神奈川教育臨調)の「最終まとめ」を踏まえ、1月31日から協議を開始し、わずか4ヶ月6回の協議で「報告」をまとめました。

 「報告」は、現行の学校適正規模(1学年6~8学級)を否定し、1学年8~10学級規模を適正標準として、その学校規模を確保するために県立高校を削減することが必要であると、強く県教委に求めています。
 また、「報告」は、「すべての県立高校で科目ごとの共通テストの導入」、「5教科の全県統一学習達成度調査(テスト)の実施」、「単位修得型の教職員研修制度への改善」など数多くの問題を含んでおり、教職員組合の代表(神教組および神高教委員長)が委員に加わっている「協議会」の「報告」とは思えない内容になっています。

 わたしたちは、県教委が今後の「県立高校改革推進基本計画」策定にあたって、高校を減らし教育予算を縮減することを目指す「協議会報告」に沿うのではなく、子どもや保護者・県民の声を充分に聞いて、その願いに応える高校教育改革素案を作成することを強く求めます。


現行の学校適正規模(1学年6~8学級)の維持     1学年9学級を超える学校は8学級以下へ

 「報告」は、現行では適正な学校規模とされている6~7学級規模の高校について、「活力の低下や学校運営への支障といった学校の小規模化の課題が明らかになった」と決めつけ、「適正な学校運営・教育活動を行うためには、1学年8学級で全体24学級(960人)から1学年10学級で全体30学級(1,200人)を標準とすることが望ましい」としています。
 そのうえで、「適正な学校規模を確保していくためには、これから県立高校の再編整備や新たな高校づくりを行い、学校数の適正化を図る必要がある」と県立高校の削減・統廃合を求めています。

 「報告」は、学校の活力の低下の例として「生徒数減少による学校行事や部活動等への支障」を挙げています。しかし、これは生徒の参加率と関わっており、1学年7学級以下の高校でも活力が低下するどころか、学校行事や部活動で成果を上げている学校はいくつもあります。また、学校運営への支障の例としては、「教職員数減少による多様な教科・科目の展開の困難さや教職員一人あたりの校務分掌の分担増加等」が挙げられています。これについては、県単独措置など教育行政と関わっており、地方においては様々な工夫がなされています。そもそも地方では、1学年8学級以上の高校は数少なく、7学級以下の高校では学校運営に支障があるという声は全く聞かれません。

 このように、「報告」は十分な根拠を示すことなく、1学年6~7学級規模の学校について現行では適正であるとしてきた県教委の方針が誤りであったと断定しています。県教委は、これを認めるのでしょうか。

 学校規模については逆に、1学年8学級規模から9~10学級規模へ拡大した学校では、選択教室や特別教室が少なくなるなど、教育に支障が出ています。教育の効果を上げるために、1学級30人ないし35人編成にして授業展開を行う柔軟な学級編成が、9~10学級規模になった学校ではできなくなっています。1学年9学級規模以上の学校こそ、施設・設備の容量を超える生徒数増加によって問題が生じています。

 私たちは、県教委が1学年6~8学級という現行の適正な学校規模を守った「基本計画」を策定することを求めます。


県立高校削減ではなく、全国最下位の全日制高校進学率を上げるために入学定員増加を

 神奈川県の全日制高校進学率は、2000年度以降進められた県立高校の統廃合(25校削減)によって、ここ数年全国最下位(2012年度89.4%で47位 全国平均は92.3%)となり、毎年2000人もの子どもたちが全日制高校に入学できず、定時制や通信制に殺到し、定時制、通信制の大規模化と教育条件の悪化がもたらされています。「報告」には、このような深刻な状況についての分析と対策が見られません。

 「報告」は、「神奈川臨調」の「最終まとめ」にある「今後の生徒数の減少傾向はもとより、各校の取組成果と課題の検証を踏まえて、再編・統合を進めていく必要があり」を受け、「学校数の適正化を図る必要がある」と県立高校の削減・統廃合を求めています。しかし、「最終まとめ」が統廃合の根拠としている中学校卒業者の減少についてはあくまでも見込み試算であり、今後外国籍生徒の増加等、社会情勢の変化を踏まえることが必要です。全国最下位の全日制進学率を全国平均である92.3%、さらに県教委自身が前回の「改革推進計画」で目標として掲げた94%にするためには、県立高校の削減など考えられません.

 「報告」は、また定時制課程の適正な配置の箇所で、「全日制に併置の定時制は、生徒に誇りを持たせる点から独立校にすることが望ましい」、さらに「夜間定時制で学ぶ生徒の3割を超える者が昼間の時間帯での学習を希望していることから、・・・・・段階的に夜間定時制の縮減を図っていく必要がある」と記しています。夜間定時制については、原則1学年2学級以下であるべきところが、現在は4学級規模の定時制が6校(横浜市立1校含む)も存在します。また「報告」は、全日制のクリエイティブスクールには1学年30名定員を提案するものの、夜間定時制については現状の35名定員としています。しかし、学習障がいや生活指導上の問題を抱えた生徒は、クリエイティブスクールより夜間定時制に多く在籍しています。その点を踏まえるならば、夜間定時制も30名以下学級とすべきです。

 今、定時制について求められるのは、「独立校」や「縮減」(統廃合)ではなく、学級定員の縮小と学校規模の縮小です。それを実現するためには、全日制の入学定員枠を大幅に増やし、全国最下位の全日制進学率を向上させることが必要です。

 私たちは、「基本計画」の策定にあたって、現行の学校規模適正基準(1学年6~8学級)を維持したうえで県立高校を削減・統廃合するのではなく、公立全日制入学定員を増やし、大規模な夜間定時制を適正な規模にすることにより、全日制高校を希望する子どもたちが全日制高校に、定時制や通信制を希望する人が定時制や通信制に確実に入学できるような抜本的改善を基本に据えることを強く求めます。

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