2014年5月16日



県立高校改革推進検討協議会がすすめられているが、
         わずか4ヶ月の拙速な検討協議でよいのか

学級数の縮小、教職員増員等の声を聞き報告をまとめよ!


 神奈川県教育委員会は、昨年8月末に出された「神奈川の教育を考える調査会」(教育臨調)の「最終まとめ」を受け、「県立高校改革推進検討協議会」(以下、「協議会」と略す)を設置し、1月31日から協議を開始、5月15日に第4回の「協議会」を行いました。

 県教委が「協議会」に検討を依頼したのは、@教育内容の充実 A教育環境の整備 B適正な規模及び配置の3点です。しかし、上記「最終まとめ」の内容から見て、Bに重点が置かれることは、昨年の9月24日付「朝日新聞」の記事から明らかです。そこでは、「県教委、県立高校の統廃合をすすめる方針を決めた」とされ、県内の中学卒業者数が来春をピークにゆるやかに減っていく見通しなので、2013年度中に協議会を設置し、14年度に再編の基本計画をつくり、15年度には具体的な校名などを盛り込んだ実施計画をまとめるとまで記されています。

 統廃合する県立高校を1年後に発表するため、検討協議はわずか4ヶ月で終え、すぐ基本計画をつくり上げようとしています。しかし、教育現場や県民の意見を十分聞くことなく進められる拙速な協議で、果たして県立高校の抱えている課題を改革していく基本計画が立てられるのでしょうか。
 以下、この間「協議会」を傍聴するなか見えてきた問題点と課題を指摘したいと思います。

検討協議会の委員を公募せず、神障教組(県立障害児学校の組合)も入れず

 17名の検討協議会委員は、時間の余裕がないという理由で公募されず、県教委指名で決められました。PTA関係3名、元県立高校校長3名、現県立高校校長、現私立高校校長、中学校校長、大学教授2名、県内市町村教育長、専門学校理事長、県経済同友会専務理事、国立教育政策研究所研究官、そして神教組委員長と神高教委員長が委員となっています。しかし、検討内容の一つにインクルーシブな教育が挙げられているのに、県立障害児学校の教職員組合である神障教組の委員長が委員に加えられていないのは、大きな疑問であります。
 

高校の観点別評価に、他府県はついてきていない

 これまで県内の大学教授が務めることが多かった「協議会」の会長には、国立教育政策研究所の統括研究官である屋敷和佳氏が就任しました。彼は挨拶の中で、「神奈川県の動向は、他府県の教育委員会にも大きな影響を与えておりまして、神奈川県の高校教育が変われば、それによって全国の動きがついてくる。発展するというふうな状況にございます。そういった中で、進取性や先進性が、この神奈川県の高校教育にはあるというふうに考えております」と述べました。

 しかしこの間の歴史を振りかえってみると、神奈川県は技術高校や企業連携、昼間定時制(厚木南)など全国に先駆けて「目新しいもの」を創設したものの、多くの問題が生じ見直しの声が高まる中で、閉校に追い込まれました。また、神奈川県が全国で初めて高校に導入した観点別評価は、10年近く経過した今でも他府県がついてくるという状況にはなっていません。

インクルーシブ教育をインクルーシブな学校に変える

 1月31日の第1回協議会で、検討協議の項目内容(案)として、以下の8項目が示されました。
1 県立高校の果たすべき役割 
2 新たな県立高校改革に求められるもの
3 課程・学科の特性を踏まえた適正な学校規模と配置
4 県立高校でのインクルーシブ教育の実践と展開
5 質の高い教育の提供(授業改善や教育課程の改善と充実)  
6 情報化・国際化に対応した教育と職業教育の充実
7 県立高校の施設・設備の抜本的な改善と教育環境の充実  
8 学校経営の改善と充実(地域共同)

 ところが、3月20日の第2回協議会では、4の項目が
4 県立高校でのインクルーシブな学校づくりと今後の課題
というように変えられました。

 最初の案では、インクルーシブ教育とインクルーシブな教育との区別がしっかり認識されていなかったために生じたミスでした。施設・設備、専門性をもった教職員など多額の費用がかかる「インクルーシブ教育」(最初の案)は県立高校では行わず、安上がりな「インクルーシブな教育」(案がとれた決定)を行うための検討を「協議会」では行うことを表明したといえます。
 

十分時間をかけ、幅広く現場や県民の声を聞いて報告をまとめよ

 「協議会」は、5月15日の第4回の協議(統廃合の検討も)の後、24日にはシンポジウムを開く予定です。その後、5月末に第5回の「協議会」、そして6月3日には「最終報告」がまとめられ、教育長に手交されるといいます。

 8項目もある検討内容や統廃合という重大な問題が含まれていることを踏まえるならば、検討協議の期間があまりにも短く(1項目40分程度)、十分な議論や検討が行われることなく、県教委事務局の意向が色濃く反映された報告になるのではないかと危惧されます。
 「かながわ定時制通信制教育を考える会」は、この間『ニュース』119号と120号で「神奈川教育臨調」の「最終まとめ」の問題点を指摘してきました。

 第一に、全国最下位の全日制進学率を向上させるためにも県立高校をこれ以上統廃合するのではなく、一学年当たりの学級数を縮小し横浜北部地区に県立高校を増設すること。
 第二に、本来のインクルーシブ教育を行うためには、専門性をもった教職員の充分な配置、施設・設備の拡充が必要であること、
 第三に、インクルーシブ教育にかかわらず30人学級(定時制は25人学級)、教職員増員、施設・設備の充実などを求めてきました。

 こうした意見や要求を集約するためにも、「協議会」は時間をかけ最終報告を半年遅らせるなど協議の回数を増やし、教育現場や県民の声を幅広く聞いて報告をまとめることを私たちは求めます。

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