2014年3月30日
学校にローアンの風を 連続講座E
月平均90時間を超える超過勤務から、精神疾患と休職者の増大へ健康リスクは教職員へ 教育の損失は子どもたちへ
今回の講座は、前半が「パワハラを含むメンタルヘルス対策」、後半が「教職員の過重労働対策」のテーマでおこなわれた。前半では、休職者の60%(約5000人)が精神性疾患で占め、10年前の3倍であること、後半では6時間以下の睡眠が及ぼす病気発症のリスクに、教育現場の危うさを痛感した。
超多忙化は、パワハラ発生の「温床」
2012年度、精神疾患による休職者は5年ぶりに若干減ったが、文科省が「減少傾向」とする見解はどうだろう。全教が昨年10月発表した「勤務実態調査2012」では、半数以上が残業「過労死ライン80時間」を超え、その内1/3が月平均100時間以上という実態で、現実は楽観を許さない。
この背景には、○生徒指導や職場の人間関係のストレス○成果や評価が顕在化しない職の特性から「燃え尽きる」○不要不急の書類や保護者対応の増加○独自性と集団性の両面の統一が必要な反面、孤立しやすい○オールマイティを求められるわりには仕事量も多い…など、教職固有の問題がある。
文科省はこの問題で対策会議を設けているが、●主因である長時間労働、過密労働についての言及がない●各学校での「ローアン管理体制」確立への指導怠慢●人権無視、労働意欲の阻害、モラル低下を招いている現場への「競争主義」「成果主義」導入の反省とその撤回がない―などの姿勢を正す必要がある。
メンタルヘルス対策の決め手は、原因である過重労働の軽減で、△多忙化解消チームを設置し検討、衛生委員会の中心課題とする△仕事の「縮減・削減」項目を立て洗い直す等に、まず取り組むことである。
こうした過密の職場状況からうまれているのが、パワハラである。本県の県立高校でも管理職によるものが散見される。利潤追求の民間企業と同様のあり方を教育現場に「教育改革」の名の下に導入、管理・統制的強化を過密労働の上に重ねてきた教育的弊害と罪は大きい。その被害者は、もちろん児童・生徒たちでもある。教育委員会はもとより、教職員組合も心して教育現場のパワハラ対策を進めるよう励まし、組織の総力を活かして援助すべきである。
過労は、神経系統や臓器を蝕んでゆく
教職員の労働実態と、保護者や一般の人の抱く教職員のイメージとには大きな落差がある。
全教の調査では、事務職や養護教諭などを含む全体でも、月平均超過勤務時間は91時間13分(家に持ち帰った仕事を加えて)である。
この現実を講師の村上剛氏(東京社会医学センター)は「学校はブラック企業よりずっとブラックです」という。この「超過労死ライン」の結果、他産業の労働者より慢性疲労度も高い。
村上剛氏はこの点を心配し、健康の4原則「睡眠・運動・栄養・保温」を強調する。そして、労動の長時間の緊張やコンピューター利用が、脳、自律神経、血圧、内臓等々を次々に蝕んでいく関連を説明、7時間以上8時間の睡眠をとるよう、噛んで含めるように講義。それはそのまま、労働の重さを示唆し、過重労働軽減の取り組みの緊急性を訴える講義となっていた。この問題に組織的に取り組む教職員組合―愛知高教組、京都市教組、島根県教組(高校支部)の話はおもしろく、激励を含むものだった。
いまこそ、長時間過重労働解消に本腰を入れるとき
当然ながら、労働安全衛生法と規則を学習し、全面的に活用する運動、衛生委員会の活性化、文科省や厚労省が発する「通達」や「指針」「手引き」などの文書を活かすよう、運動からの教訓として提示された。
教育委員会が自治体首長の権限の下に置かれるかもしれない局面にある今日、市場原理的な教育行政が加速する惧れ大である。いまこそ、「長時間加重労働解消」に本腰を入れる差し迫った時機である。