2014年2月21日



県立高校を統廃合することなく、特別支援学校を増設すること

インクルーシブ教育に関わらず、

30人学級(定時制は25人学級)、教職員増員、施設・設備の充実を!


 昨年の8月末に発表された「神奈川の教育を考える調査会」(神奈川教育臨調)による「最終まとめ」は、県立高校の学級数の拡大や統廃合を促しています(「ニュース」前号で指摘)。また、これに関連して、「障害のある子どもと障害のない子どもが同じ場で学ぶインクルーシブ教育」(「最終まとめ」の表現)の推進を強く求めています。

 しかし、インクルーシブ教育を推進していくためには財政的な問題など、様々な課題が存在すると述べてはいますが、本来のインクルーシブ教育を行うためのしっかりした財政的な保障なしに、特別支援学校の不足を県立高校の統廃合によって賄い、経費縮減などの目的から特別支援学校の増設や整備をせずに、障がいを抱える子どもたちを小中の「通常の学級」や「特別支援学級」へ誘導し、高校に初めて「通級による指導」や「特別支援学級」の導入を求める内容となっています。

 私たちは、必要な特別支援学校を県立高校の統廃合ではなく増設すること、インクルーシブ教育に関わらず、通常学級を30人学級(定時制は25人学級)とすること、教職員を増員すること、施設・設備の耐震化をすすめ、老朽化を早急に改善し充実させることを強く求めます。


財政的な保障なしに、県立高校に「通級による指導」や「特別支援学級」の導入を求める「最終まとめ」

 「最終まとめ」は、インクルーシブの視点による教育の推進の項で、「障害の有無にかかわらず、共に学び育てるインクルーシブの視点による教育課程を編成するとともに、小中学校から高校まで『通常の学級』、『通級による指導』、『特別支援学級』、『特別支援学校』など『多様な学びの場』による連続性の確保とそれぞれにあった特別支援教育を推進する必要がある」と述べています。

 しかし、インクルーシブ教育とは学びの「場」の問題ではなく、どの学びの場を選択したとしても「発達権」、「学習権」についての権利が同等に保障され、諸能力を可能な限り最大限発達させることを目指す教育です。また、一般教育において支援の必要な子に対して多大な負担を強いたりしない限りにおいて、充分な合理的配慮(人的配慮・施設設備の拡充)や調整を行うことが必要です。

 すなわち、障がいのある子どもたちの発達を最大限保障するためには、通常学級、通級学級、特別支援学級、特別支援学校などさまざまな教育の場が用意されたうえで、それぞれの教育条件が十分に整備される必要があります。しかし、「最終まとめ」にはそれについての言及はありません。逆に、この「最終まとめ」のいたるところに垣間見えるのは、基本的視点で第一に掲げられていた「できる限り少ない経費で最大限の効果を得ることのできる『効果的な教育』」です。このような合理的な配慮のない単なる学びの場の統合はダンピング(投げ込み放置)になってしまいます。

 わたしたちは、どの学びの場を選択したとしても子どもたちが教育から排除されず、一人ひとりの発達が保障される教育環境の整備、すなわち特別支援学校の増設・適正規模化、県立高校通常学級の30人規模化(定時制は25人)、教職員の加配、施設設備の改善・拡充を強く求めます。それが、真の「インクルーシブ教育」への道を開くと考えます。

  

県立高校の統廃合によって、特別支援学校の不足を賄おうとする「最終まとめ」

 「最終まとめ」は、同じ項で「これから障害のある生徒の進路選択の幅をさらに拡大するためには、発達障害などの支援を要する生徒に対し、インクルーシブな教育を実践できる高校づくりを県立高校の再編・統合の中で検討し、より連続性のある特別支援教育を実現していく必要がある」と記しています。

 一方現在、県内の特別支援学校はどの学校も適正規模(知的障がい部門の単独校で最大130人、知的障がいと肢体不自由等の併置校で最大160人)を大幅に超え、生徒であふれています。また、県立高校内の支援学校分教室(20校)に800人近くの子どもたちが通っています。こうした過大規模を解消し適正規模にするためには、15校以上の増設が必要であると言われています。
 そこで、県立高校の統廃合が持ち出されてきているのではないかと考えられます。しかし、「ニュース」前号で詳細に述べたように、統廃合による高校削減は再び全日制に通えない子どもたちを大量に生み出し、その子どもたちが定時制や通信制に殺到することにより定通教育を悪化させてしまうことにつながる暴挙です。

 現在、定時制や通信制には発達障がいなど、障がいを持った子どもたちが一定数通っています。県立高校の統廃合は、この間生じた定時制などの入学定員オーバーをまた生み出し、障がいを持った子どもたちや不登校など様々な問題を抱えた子どもたちを定時制や通信制から排除していくことになります。また、同時に働きながら高校教育を受けようという人にとっても定時制の敷居が高くなります。

 私たちは、全日制の進学率を向上させ定時制通信制教育を充実させるために、これ以上県立高校を統廃合することには強く反対します。それと同時に、県立高校を統廃合するのではなく、特別支援学校を増設することを求めます。


資料  「最終まとめ」(概要)の抜粋

《2 高校教育》
(3)再編・統合を通じた新たな県立高校づくり

○県立高校全体の成果と課題の検証や生徒数の減少傾向等を踏まえて計画的に再編・統合を進め、その際、学校の活力を高める観点から、各校の実情に応じて学級数を拡大
○全国に先駆けて、学習の遅れなどの課題のある生徒や支援を要する障害のある生徒を受けとめる高校づくり

《3 特別支援教育》
(1)インクルーシブ教育の推進

ア インクルーシブの視点による教育の推進
○小中学校から高校まで「通常の学級」「通級による指導」「特別支援教室」「特別支援学校」など「多様な学びの場」による「連続性の確保」と、それぞれにあった特別支援教育の推進
○県立高校全体の再編・統合の中でインクルーシブな教育を実践できる高校づくり
○特別支援学級等における障害のある児童・生徒が通常の学級に移行し、共に学びやすくする環境づくり

(2)地域における自立促進のしくみづくり
○県立の専門高校と特別支援学校の連携による、実習プログラムや職業体験プログラムの工夫

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