2013年10月30日


「学校にローアンの風を」連続講座に参加してD


長時間過密労働の放置は安全配慮義務違反
措置要求を活用して勤務条件の改善を



 日本の教員の年間法定勤務時間(1876時間)は、OECD(経済協力開発機構)の法定勤務時間(後期中等教育1676時間)と比較すると大幅に長いという調査結果があります(2012年)。さらに、日本の教員の時間外労働が月平均80時間を超えることを考えると年間労働時間は、2500時間を超えると推定されます。そのような状況から、教員の自殺者は、149人を超え大きな社会問題になってきています(2011年度)。

 今回の講座は、過労死裁判に携わってこられた本郷合同法律事務所の佐久間大輔弁護士の裁判例に基づいて、いかに勤務条件の改善を求めていくかという内容の講座でした。

安全配慮義務違反ー電通最高裁判決(2000.3.24)

 電通の新入社員(24歳)が、慢性的な長時間労働に従事していたところ、うつ病となり自殺に至った事件。遺族の両親が損害賠償を請求した裁判で、最高裁は「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負担が過度に蓄積し、労働者の心身を損なうことがないよう注意する義務を負う」とし、使用者に安全配慮義務違反があったとし損害賠償を認めた画期的判決となりました。

京都市教組超勤裁判

 京都市教組は、2004年、無定量な長時間労働の是正を求め9人の組合員が裁判闘争に立ちあがりました。

 裁判は、違法な超過勤務に基づく損害賠償と安全配慮義務違反による損害賠償の請求を行い、特に電通事件の最高裁判決で認められた安全配慮義務違反を争点にしたのが特徴でした。その結果、京都地裁は、違法な超過勤務に基づいた損害賠償請求については、校長の具体的な指示に基づかない自主的・自発的な労働として請求を否定しました。しかし、安全配慮義務違反については、週休日の振替の配慮がされず時間外勤務が常態化していたことは安全配慮義務違反があったとし1名に55万円の損害賠償を認める判決を出しました。

 その後、大阪高裁は3名に安全配慮義務違反があったとする前進した判決を出しましたが、2011年最高裁は、一審、二審を破棄し、原告らの請求を退ける不当な判決を行いました。しかし、その中で教員の時間外労働が長時間である実態を大筋で認め、安全配慮義務については、公立学校の職場にも適用されることを明確にしました。

学校現場と教育行政に大きな変化が

 過労死や超勤裁判を通し教育行政や学校現場にも大きな変化が生じてきました。文部科学省は「教員に時間外労働はない」、「教員の仕事は勤務時間の把握になじまない」と言ってきたのが、裁判を受けて全国的な勤務調査を行った結果、深刻な超過勤務の実態が明らかになりました(2006年)。京都市では、2009年教育長名で超勤勤務の減少を求める通知を出し勤務時間管理を実施し、研究発表の縮小、教員の事務負担の軽減などが始まっています。

労働組合の動きも出てきました。山口県教組は、地公法46条に基づいて勤務時間の是正を求め10人の組合員が措置要求を県人事委員会に提出しました。その結果、県教委から「管理職による勤務時間管理の徹底」の通達が出されたり、多くの学校現場から「タイムカード・ICカードの導入」と「ノー残業デー・ノー部活デー」等の提案の動きが出始めています。

地公法46条に基づく措置要求の活用を

 今回の講座を受けて、教職員の長時間過密労働による心身の疲労、精神疾患、さらに過労死をなくすには文部科学省に対し、県教委に対し声を上げていく必要を感じました。

 教職員個人での対応は限界があります。長時間過密労働を減少させ余裕ある職場を作っていくためには、組合の力に依拠し、地公法46条による措置要求を活用し、勤務条件の改善を求めていく運動の重要性を感じました。

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