2013年10月13日


「学校にローアンの風を」連続講座に参加してC


勤務時間の厳守と「献身的教師像」の再考を



 教職員の時間外労働が月平均80時間を超え、過労死、精神疾患の増加など教職員の長時間過密労働の問題が新聞などで取り上げられるようになりました。今回の講座は、一橋大学田中康彦教授による長時間過密労働を制度的条件と文化的条件の二面より分析し、それとどう向き合うかを考えるという内容でした。

長時間過密労働の制度的側面 ー 条件整備的側面と職務構造的側面

 条件整備的側面は、教職員集団が抱えている職務負担の総量と教職員定数のバランスが取れていないことを意味しています。根本的には教職員定数の改善を行うしかないが、ペーパーワーク(報告書作成等)を減らすなど職務の見直しをすることが必要です。

 職務構造的側面は、時間外勤務が予定されているにもかかわらず代替措置が取りづらいことを意味します。平日に1日単位で代休を取るのは大変なことです。結局、教師の自己犠牲、自己負担で乗り切らざるを得ない状況を作り出しています。

 教職員の長時間過密労働の問題の解決は、簡単ではないが、基本的には制度的側面の条件整備こそが重要な課題です。現実の問題に対し改善していくことが困難だという教師の認識が、根本的な措置に踏み込むことを妨げ、教師の負担で吸収する構造を継続させている実情があります。さらに教師一人ひとりの意識のもちよう(文化的側面)を再考する必要があるとの指摘がありました。

長時間過密労働の文化的側面

 日本の教員文化の特徴として、子ども・子どもの教育に献身的であるということが教師のアイデンティティーを支えています(献身的教師像)。これは本人が自覚しているというより、教師一人ひとりの行動を分析する中からから浮かび上がってくる、教師の意識・行動を規定する要因です。
 全て子どものためにと目標を定めると職務の無限定につながり、ここまでという線引きができなくなり、さらに職務に当たる時間も無限定になってしまいます。このような教師の特性から、教師は長時間過密労働の現実を、「子どものために」は止むを得ないと自分自身を納得させてしまいます。その結果、心身に疲労が蓄積し精神疾患、過労死に至るのではないでしょうか。

職場がどのように変化してきたのか

 今日の学校を取り巻く状況が大きく変わってきました。校長、副校長、教頭、総括を中心とした官僚的学校運営。目標管理からくるペーパーワークの増加。教師の裁量・自由の喪失。生きがい・やりがいの喪失からくる早期退職等々。また、若い教師の現在の労働条件を「そういうものだ」と思う意識と、経験ある教師の「職場は自分たちでつくる」「権利は勝ち取ってきた」等の認識のギャップ。それからくる先輩・同僚との相談、助言といった多くの職場で行われてきたことができなくなってきています。

 その結果、教員の孤立化と「学級王国」にみられる自分のクラスだけは、批判は許さない、他のクラスより頑張る、という意識からますます仕事が無制限になり、長時間過密労働になっているのではないでしょうか。

長時間過密労働の軽減に向けて

 今回の講座を受けて、労働者の権利として労働法で定められている勤務条件の厳守を求めることと、教育専門職として「子どものために」という「献身的教師像」を再考することの必要性を強く感じました。

 子ども・保護者と「きちん」と向き合うためには、時間的、精神的ゆとりが絶対的に不足し、条件整備抜きには教職員の長時間過密労働を解決できないことを、実態調査や措置要求等を通じて県当局に改善させる必要があります。

 長時間過密労働の問題は、教師個人の対応では解決できないところまできています。教師集団の力で、教師像や長時間過密労働の問題を含め、お互いの悩み、苦しみ、喜びが共有できる職場づくりの重要性を再認識しました。

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