2013年10月6日


    9月9日設置者会議で来年度募集計画決まる

全日制進学率は最大でも89.1%

公立43,200人(今年度比1,200人=約30クラス増)

私立13,800人(今年度比300人増) 中卒生徒は1584人増

少なくとも進学率91.4%を達成する募集枠の設定を!


 9月9日、本年度第2回目の神奈川県高等学校設置者会議が開かれた。来年度の公立中学卒業予定者は今年より1,584人増えて70,491人。それに対して生徒募集枠は、公立43,200人、私立13,800人で、県外国公私立高校等(高専含む)への進学率を今年と同じ8.2%とすると、全日制進学率は最大89.1%となる。2013年の88.8%、2012年の88.5%と比べれば微増はするものの、依然として全国最低であることには変わりがない。全国平均の92%(2011年度)にも遠く及ばない。神奈川だけが、異常な状態をいつまでも生徒に強いて良い理由はない。全国平均並に早く戻すためにも、来年度は91.4%(公立44,500人、私立14,200人)の達成を目指すべきです。

高校改革の県立25校削減で 神奈川の全日制進学率は全国最低に

 2000年から2010年の高校改革で、県立高校が25校削減されました。また、2006年以降は、入試生徒募集枠を決める「公私協議会」がはじまり、「公立6割」に抑えるために、公立高校募集枠の削減が行われてきました。その結果、神奈川県の全日制進学率は、2011年には88.0%にまで落ち込んでいます。その後、「公立6割」が見直されるなかで、2012年88.3%、2013年88.8%と「微増」ながら増加に転じるようになりました(以下グラフ参照)。

 全国との比較で見ると、神奈川の全日制進学率はもともと高い方ではありませんでしたが(2001年37位)、この間の削減で神奈川の順位は低下を続け、高校改革の後期計画が始まった2006年以降は全国最低位を愛知と争っています(下表参照)。

 10年以上もこうした状態を続けて居るのは異常です。せめて、全国平均の92.3%以上の進学率確保はただちに実現すべき課題です。


  進学率の全国順位
 (2012年度) ここでの進学率とは、公私立中学校卒業者の全日制進学率である
順位 都道府県  進学率 
山形 96.0%
岩手 95.3%
千葉 93.9%
22 埼玉 93.0%
33 東京 91.8%
45 三重 90.4%
46 愛知 89.7%
47 神奈川 89.4%
全国平均 92.3%


神奈川県の全日制高校進学率の全国順位の推移
  (公私協議会資料・文科省学校基本調査より作成)
卒業年 公私立中学卒業者の
全日制高校進学率(x)
全国平均
との差
(aーb)
公立中学校
卒業者の
全日制進学率(y)
a神奈川 b全国平均 順位
2001 92.0% 92,8% 37 -0.8% 91.2%
2002 91.0% 92.7% 40 -1.7% 90.1%
2003 91.9% 92.9% 39 -1.0% 91.1%
2004 91.7% 93.0% 40 -1.3% 90.8%
2005 91.0% 92.8% 44 -1.8% 90.1%
2006 90.6% 92.7% 46 -2.1% 89.6%
2007 90.3% 92.5% 47 -2.2% 89.3%
2008 90.2% 92.4% 46 -2.2% 89.2%
2009 89.7% 92.1% 46 -2.4% 88.7%
2010 89.3% 91.9% 47 -2.6% 88.2%
2011 89.2% 92.1% 47 -2.9% 88.0%
2012 89.4% 92.3% 47 -2.9% 88.3%
 y:神奈川県で募集計画に使用している「全日制高校進学率」
 x:yに私立中学卒業生も加えたときの全日制高校進学率


「全国平均並(92.3%)の全日制進学率」をめざして募集枠の拡大を

 2013年8月26日の公私協議会で2014年度の募集定数が公立43200人、私立13800人とされました。しかし、これが全部充足しても全日制進学率は89.1%にしかなりません。全国平均の92.3%(2012年度)を大きく下回っています。2012年10月の進路希望調査では、全日制希望(高専含む)が91.4%ですが、進路未決定者が2.5%もあります。仮に未決定者の約3分の2が全日制希望としても、全日制希望は93%程度となります。91.4%を基準に募集定数を定めても「希望者全入」にならない事は目に見えています。少なくとも、当面91.4%を来年の計画とする必要があります(以下の「かながわ定時制通信制教育を考える会」の 「2014年度募集計画への提案」参照)。

2013年度の入試実績および募集計画と2014年度に向けての「考える会」の提案
公立中学校
卒業生
全日制進学者(進学予定者)
進学率 公立 県内私立 県外等
2013年度
実績
68,969 88.8% 42,155 13,403 5,662 61,220
61.1% 19.4% 8.2%



2013年度
公私合意
68,907 88.8% 42,000 13,500 5,657 61,157
61.0% 19.6% 8.2%
2014年度募集計画
設置者会議合意
70,491 89.1% 43,200 13,800 5,787 62,787
61.3% 19.6% 8.2%
「考える会」の
2014年度募集計画への提案
70,491 91.4% 44,495 14,147 5,787 64,429
63.1% 20.1% 8.2%
進学率の増加分 2.6% 2.0% 0.6%


全日制希望率の低下は 「進路希望の多様化」ではない

 2001年には、94%もあった「全日制希望率」は、高校統廃合が行われて、全日制進学実績が毎年急速に低下する中で、「前年実績に合わせるように」年々低下し(上に掲載したグラフ参照)、91.3%(2010年入学生)、91.4%(2011年入学生、進学実績88.0%の最低値)にまで低下しました。この低下について公私協議会の中の議論では「中学生の進路希望の多様化」といった議論もありました。

 しかし、これは高校受験を控えた中学生の気持ちや進路指導のあり方、学校現場の状況を全く知らない人たちの議論です。全国の中で神奈川だけが全日制への希望が少なくて定時制や通信制が多いなどと言うことはあり得ません。中学から高校への進路指導の中で、最初は全日制希望だった生徒が、入試の時期が近づき、前年度の先輩の状況や家庭と社会の経済状況などを知るにつれて、自分の進路を定時制や通信制に変えていく。その積み重ねが「全日制進路希望の低下」を生んでいます。その証拠に、全日制進学率の低下が止まり、微増がはじまった2012年、2013年では希望の低下傾向に歯止めがかかり始めています。いま、進学実績を高める事が大事です。必要な公立枠と私立枠を設定し、私学学費補助を充実させて「希望率が年々増える教育環境」をつくることは大人の責任です。

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