2013年8月18日

「学校にローアンの風を」連続講座に参加して 番外(投稿)

民間企業労働者からみた学校の労働安全衛生
— 余りにもずさんな教師の時間外労働 —

民間企業労働者S


  私は民間企業で働く者で過去に組合側として安全衛生委員会に席を置き会社内の労働環境衛生に関わってきました。今回、「ニュース」の連続講座「学校にローアンの風を」を読み余りにもずさんな教職員の労働環境の報告に驚き、民間企業では労働安全衛生問題についてどのように取り組んでいるか、特に時間外労働の取決めなどを中心にご報告したいと思います。

民間企業の安全衛生委員会では~

 10数年前に企業内のサービス残業が社会的に問題となり各企業の法的倫理姿勢が厳しく問われてきました。その反省からか私が勤める会社でも労使が労働・安全・衛生に対し厳しくガードをかける形で審議し運用しています。 

 安全衛生委員会は会社側(主に課長)5名、組合側(執行役員1名と職場委員長4名)と工場長が議長となり11名の構成で月に1度の会議(2時間程度)を開きます。これ以外に各職場の安全パトロールを実施しています。議事内容は①一か月間の労災件数とその内容 ②安全衛生の実績説明(有機溶剤取扱い部署、特殊有害物測定結果報告等)③時間外労働報告などです。

 議事内容は会社側からの説明後、審議される。①と②は作業指針や作業指示などに問題がなかったか、法的に問題がなかったかなど厳しく審議されます。③時間外労働時間は下記の表で労使が36協定を結び労基署に届け運用しています。

限度時間 特別延長時間 特別再延長時間 45時間
45時間
超過回数年4回まで
60時間
左記の年4回の内2回まで  
80時間
80時間は不可
(手続き)
所属長
総務・組合に申請書提出
(手続き)
所属長
総務・組合に産業医の診断書提出
労使協議
(手続き)
80時間超の場合
事業所長
労使協議の上、労基署に届け書提出

時間外勤務手当は下記の計算式で支給されます。
割増基礎額(組合員平均約2300円)×係数×時間

早出・残業 土・日出勤 祭日出勤
係数 1.27 1.35 1.65
60時間超からは係数 0.35増
係数については3年毎に春闘で見直しをしている。

 さて、教職員時間外労働平均90時間を次のケースで想定し民間企業の時間外勤務手当であてはめてみると、
平日残業2.5h×20日、土・日出勤6h×6日、祭日出勤6h×1日 で考えると、基本給以外で実に28.5万円の手当が出る計算になります。

 あえて手当金を記したのはそれほどの労働対価が生じているという事と教職員の調整額が42年前の1971年(48代横綱大鵬が引退した年)の設定で運用されている事の異常さに気づいてほしいと思うからです。

自主的な勤務とされて~

 神奈川新聞で「教師が倒れていく」と題し6回シリーズ(2013,04,28~2013,5.3)が報じられ反響を呼んでいました。私も一読しましたが、毎月80時間以上の残業と、まともに昼食も休憩も取れない毎日から過労死になった実例が挙げられていました。残された家族が労災申請しても学校側は対応せず、裁判訴訟しても地方公務員災害補償基金が「自主的な勤務だった」「勝手に働いていた」として「公務外」を主張しており、本来、教職員の救済が役割である機関なのにとても奇怪に感じました。

 民間企業では、時間外労働が発生する場合は上司に申告し必ず勤務表に記入し勤務実績として記録に残しておきます(過労死認定裁判では大切な証拠書類になる)。
 

組合はもっと組織的に前面に出てチェックを

 私が思うに教職員が平均90時間以上の超過勤務を強いられているのになぜ組合が前面に出てこないのか不思議でなりません。もっと学校組織の中に入り込んで超過勤務にならないようにガードをかけることが組合の役目だと思います。

 最後になりますが、教師の皆さんが当たり前でより良い労働環境を作るために要求したいことは「措置要求書」に書き県に提出してください(県への措置要求書提出数は、2011年度2件、12年度0件)。

 そして自主研修の時間を多く作り、本来、大切であるべき「感動をもって子供たちに教育を」を築き上げてください。

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