2013年7月15日
「神奈川教育臨調」の『中間まとめ』が示した
柔軟な(41名以上)学級編成や高校統廃合などに反対の『意見書』提出
全日制進学率を91.2%以上に
定時制はクリエイティブスクールと同様30人学級に
神奈川県では2012年1月に「緊急財政対策本部」、同年3月に「神奈川県緊急財政対策本部調査会」(神奈川臨調)を設置し、同年10月に「緊急財政対策」をとりまとめました。教育課題については12年9月に「神奈川の教育を考える調査会」(教育臨調)を発足させ、経費の節減と教育の質の確保などを中心に審議されていますが、この3月に「柔軟な学級編成と教職員配置」、「県立高校の再編・統合」などを内容とする『中間まとめ』を公表しました。
最終答申は今年8月とされており、「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は6月、これについての『意見書』を提出しました。『中間まとめ』の問題点と私たちの意見と要求を紹介します。
「経費の節減と教育の質の確保の両立」というが、
公表された『中間まとめ』では、高校教育について、「全日制高校への進学率の低下」、「全国一律の基準による学級編成と教職員定数」などの課題をあげて、「公立・私立の柔軟な定員決定のしくみづくり」、「柔軟な学級編成と教職員配置の実現に向けた働きかけ(国への)」、「県立高校の再編・統合の検討」等が必要との論点整理をしている。
「ないないづくしの県立高校」ではさらなる県費の節減など論外
現在、神奈川の県立高校では学校の建設や維持補修、教育活動の運営に係わる県予算が他県に比べても極端に少なく、校舎の老朽化、施設設備備品等の貧弱さは際立っている。近年始まった教室へのエアコン導入も県費ではなくPTAの寄付によって行われており、図書費・維持運営費など日常の学校運営に係わる予算を見ても、東京の半分、関東近県の3分の2程度で、不足分の一部を「PTA特別会費」などの「私費負担」でまかなっているという現状がある。とても費用節減などできるレベルではない。
91.2%の「計画進学率」を掲げて
神奈川の全日制高校への進学率は88.3%と全国最下位であり、進学率の低下が課題となっている。
「希望する生徒が希望する高校に進学できる環境」を
『中間まとめ』では公立と私立とがそれぞれ募集定数を公表するという現行の方式の「検証と改善」をおこなうとしているが、県民にとってわかりにくい。県の目標値としての「計画進学率」を公表して、県民にわかりやすい定員計画にすべきである。
『まとめ』にも書かれている「公立、私立を問わず全日制高校への進学を希望する生徒が、希望する高校に入学できる環境の創出」は大切である。そのためにも、当面、全日制進学希望率91.2%(2012年)の達成を目指して、公立枠の拡大と、私学助成とくに私学進学者への学費補助の増額が欠かせない。
「支援が必要な生徒」の多い定時制は30人学級に
『中間まとめ』では「発達障害が疑われる事例なども見られており、個に応じた適切な指導・支援が行われなかった子どもたちへの対応が課題」としている。また、論議の中では「このような課題を持つ生徒への対応としてクリエイティブスクールは成功している。しかし入りにくくなっており定時制や通信制に多く流れている」、「こうした生徒への対応は公立の役割」との指摘もあった。
現在、定時制や通信制では、小中学校や全日制高校での不登校経験者、外国籍等で日本語の不自由な人、家庭事情で週30から40時間のアルバイトをせざるを得ない人など、様々な困難を抱えた生徒が通学している。事情は個人個人によって様々であり、まさに「個に応じた教育」が必要な状況にある。そのためには定時制はクリエイティブスクールと同様30人学級とし、教職員定数の増加が欠かせない。
しかし、現在、夜間定時制の普通科での専任教員ひとりあたりの生徒数は15人程度(全県平均)もあり、クリエイティブスクールの11人程度と比べると大きな差がある。早急な改善が求められる。
「柔軟な学級編制」の「41人以上学級」で教職員定数を減らすというのは
一方「柔軟な学級編成や教職員配置が行えるよう、国に働きかける」とあるが、これは、現在、国の定数法で高校は40人以下学級と定められているものを、「特区申請」などを行って、41人以上の学級編成も可能にしようというものである。しかし、現行の「40人学級」でさえまだまだ国際水準から見ても劣悪で、いじめや不登校、集団不適応などの問題を生んでいる。小中学校で始められている「35人以下学級」を高校でも進める必要があるし、さらに「30人以下学級」をめざして改善措置を進めるべきである。「柔軟な学級編成」として「41人以上」の学級編成も考えるというのなら時代錯誤も甚だしい。
35人学級など定数改善の努力に逆行
「県立高校の再編・統合」ではなく、30人学級など将来を見据えて、県立高校の増設を
「学校の適正規模化や適正配置を通じた、より効果的な教育の実現と活力の創造」や「再編・統合を通じた効率的な教職員の配置と組織体制の確立」が「期待される効果」としているが、いままた再編・統合(廃校)が必要とはどういうことなのだろうか。
2000年から2010年の「県立高校再編計画」で前期14校、後期11校の削減が行われた。その結果、2002年からの「定時制・通信制へのあふれ」や全日制進学率の大幅低下(全国最低の88.3%)が引き起こされている。また、「全日制は6〜8クラスが適正規模」とされたが、再編後間もない現在、横浜北部学区を中心に、全県で10クラス募集校が10校、9クラス募集校が13校にもなっている。この上、今後さらに「再編・統合(廃校)」とは理解に苦しむ。また、今後の40人学級から30人学級への改善も視野に入れると、これ以上の高校削減は行うべきではない。むしろ旧横浜北部学区などでの、将来も見据えた高校増設が必要である。
生徒・保護者・現場教職員の要求・意見を踏まえた教育政策が求められる。