2013年8月2日

「学校にローアンの風を」連続講座に参加してA

「労安法」で、生き生きとした教育現場を取りもどそう

 今回は、教育現場に労働安全衛生委員会が設置されている状況の下で、その実質化をめざそうと、労働安全衛生法(以下、労安法)の基本的な事項、〔各担当者の役割、作業・(環境)管理、安全衛生教育、労働者の申告・法令の周知、措置要求制度、教組の役割など〕15項目の講義がされた。講師は、元川口市教組副委員長で、現在は産業カウンセラ―の杉本正男氏である。


学校現場における「衛生推進者」の役割と権限

 労安法の態勢は、まず県教育長クラスが職務とする「総括安全衛生管理者」、その下に50人以上の学校現場では、免許や一定資格を有する教職員からの選任が義務付けられた「衛生管理者」、50人以下の学校現場では、同様の資格要件を備えた教職員から選任された「衛生推進者」の配置が義務付けられている。どちらも、教頭や養護教諭、体育科教諭等の「充て職」は認められていない。それに、教育委員会、学校長への勧告権を持つ「産業医」の配置が義務付けられ、この態勢の下に「(労働安全)衛生委員会」が設置されている。これが学校の「労働安全衛生管理体制」という構造である。

 特に身近と思われた「衛生推進者」について少し書いておこう。この職の資格取得には、労働基準監督署主催の正味10時間余の「一日講座」の受講が必要である。少しキツイが受講料は7000円である。実を伴った「衛生推進者」の完全配置には、教育委員会が、財政措置を伴ったプランを立てて、直ちに取り組むべきである。

 講義で、この法での「衛生推進者」の権限は、学校長と対等に近いものがあることを知った。
例えば、教職員の健康保持に悪いと思われる長時間勤務が続く場合、「早く帰ろう」と教職員が帰れるような措置や、学年会議や職員会議に「健康問題」に関する議案などを提案したりできるという。

 労安法が1972年に労働基準法第5章「安全衛生」から独立したことから、行政に現実的な要求を出しやすい、言わば「行政の職責を監視、取り締まる法律」になっていることも、講義から知る。


労安法で、「生き生きとした教育活動」を取りもどすために

 「長時間勤務」といえば、文科省は2112年1月に21ページに及ぶ『教員のメンタルヘルス』をまとめ、また3月には、『学校における労働安全衛生管理体制の整備のために(リ―フレット)』を全国の教委や学校に配布しているが、これ自体が深刻な現状を反映した動きである。

 講義によれば、休職者一人で自治体の財政負担は1000万円増えるという。2010年度の公立学校の病気休職者は8,660人(精神疾患者5,407人・それ以外3,253人)の実態は、国としても座視していられなくなったというより、遅きに失した面は否めない。しかし、だからといって事態の放置は許されない。

 こうした点にこそ、労安法が担っている重大な役割を具体的に生かすことが求められているのである。そのために、中央・地方の行政と、「労働安全衛生管理体制」の中枢である職場の衛生委員会とが闊達に連携していくことが今日、喫緊の課題であることを聴講しながら思い知らされたことである。

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