2013年7月20日

「学校にローアンの風を」連続講座に参加して@

「労働安全衛生法」(ローアン)を働きがいのある教育現場のテコに


 この20年来、「改革」に名を借りて競争の原理を中核に据えた新自由主義が猛威をふるい、教育現場もその「圏内」で苦しみ、その結果として今日、教職員の健康問題が浮上している。いうまでもなく、教育現場が機能するにはそれを担う教職員の心身の健康が基本的条件である。それが即、児竜・生徒の教育にマイナス影響を与えるだけに問題は深刻である。

 この間題は、小紙『ニュース』がシリーズ「教育現場で働くみなさん 大丈夫ですか?」で夜間定時制教育の劣悪な条件を告発してきたが、その問題とも本質的に通底している。

 こうした思いから、この問題解決のアプローチの一つとして、労働安全衛生法に基づき学校現場でも設置されている労働安全衛生委員会に働きかけることも、重要ではないかと考えた。文科省でさえも今は「労働安全衛生体制の確立は・‥学校教育の質を高める」と言明しているのだから。そんな折、この問題に先進的に取り組む「教職員の労働安全衛生研究会」、「東京社会医学研究センター」、「きょういくネット」共催の「『学校にローアンの風を』連続講座」が開催され、本会でも受講を決め、全六回参加した。以下に、簡略ながらその報告を連載する。

最多の労働時間と精神疾患の実態解消を

 実は今から20年前、1992年ごろ最も週平均労働時間が多かったのは男女ともiこ学校教員である。多忙との印象がある業種よりも ーケ月に換算すれば、小・中学校の男性で8.5日、女性で約7日多く働いている。高校の教員でも5.3日多く働いていた。ところが10年前の全日本教職員組合(全教)の調査でも月の残業時間の平均は、小・中・高校の平均で約90時間、過労死認定基準の80時間を超えている。

 こうした結果の一つである精神疾患者数(文科省調査)は、1995年の1924人から2010年には5407人と約2.8倍の増え方である。精神疾患罹患者の就業復帰は難しいことを考えても、全国的な労働時間、労働実態の早急の改善が求められる。

各分野・各地で動きはじめた教育労働条件改善への取り組み

 全教と都教組などは、過重労働による精神疾患発症の教職員にする教育委員会の措置が、ILO・ユネスコ「勧告」にいう「客観性」に違反する恣意性があり差別的であること、また、給与決定と人事評価制度を関係教育機関との事前協議と承認なしに設け運用することも違反していると、ジュネーブに要請団を派遣して訴えた。これに対して、翌08年にILO・ユネスコ調査団が来日、同年12月に政府に全文43項目の是正勧告を行った。主な是正点は@「指導力不足教員」についての非好意的な見方を受け止めて措置する。A給与と関係する評価制度を根本的に再検討すべきである。B政府は教員団体との間で問題により、行うべき協議や交渉を「勧告」規定に即して再考すべきである、の三点である。
 こうした運動が反映して、資料(下参照)のような動きや成果が出ている。

<改善への取り組み>

・2007年12月  滋賀・兵庫・佐賀・愛知・大阪・京都市・宮城・埼玉等の教育委員会が、「勤務時間の適正」に関する通知等を通達。

・2008年4月  「労安法」改正で、長時間労働者への医師の面接指導制度が50人未満事業所でも適用。

・2009年1月  全教 −『教職員の長時間過密労働解消のための提言』

・2010年7月  中教審−「公立小中学校の1クラス編成を40人から35人に引き下げる提言」

・2011年12月  文科省一「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」を設置


労働安全衛生法をどう生かすか

 質問では労働安全衛生法についての管理職の無理解や曲解に悩んでいる職場の実態や、「この法をどう超多忙の職場のまっただ中に切り込んで生かしていくか、受講者から悩みながらも奮闘している声が聞かれた。筆者は、根本原因の一つである「形式的で不要不急の雑務の解消」にまず取り組むべきだと思われた。

労働安全衛生法の法体系は、教育行政に具体的に生かされつつある

 労働安全衛生法は憲法第27条2項を受け、労働基準法の主に第一章〔総則〕、第四章〔労働時間・休憩・休日および年次有給休暇〕の主旨を生かして制定されている法である。

 この法体系を具体的に生かしている自治体の動きと、二例の教育委員会(通知)の抜粋要約をく下資料〉として、これから取り組まれる方々への示唆としたい。

く資料〉(要約)

△愛知県が県立学校教職員長時間労働調査部会を設置(2008年7月)
 各高校などの安全衛生委員会とともに、総括安全衛生委員会を設置。さらにその中に教職員の長時間労働対策のために、調査部会を設置。現在、長時間労働解消のための調査を進めている。

△滋賀県教委・総括安全衛生管理者である次長による「長時間労働を行った県立学校教職員に対する健康管理対策の推進について(通知)」
 職員の健康管理の徹底
(1)健康診断受診指導とその結果の把握および事後措置の徹底。学校長は、法定の定期健康診断等の受診の徹底を図るとともに、適切な実施を随時確認し、受診指導等を適格に行う。
(2)日常の健康状態の把握と対応学校長は、職員の勤務状況にも留意しながら健康状態の把握に努め、変化の状況が認められる場合には、速やかで適切な対応に努める。

△兵庫県教組と県教委の「超過勤務をなくすための合意8項目
5.部活動について
(1)部活動の終了時刻は、学校の定める下校時刻が適当。
(2)生徒が、私生活の自主的な活動の支障とならないよう、土・日は原則なしとするなど、適切に対応する。行う場合は翌週に「なしの日」を設けるなど、生徒・教職員のゆとりを確保する。
8.超勤縮減の具体的策定は、職場の衛生委員会の重要審議事項である調査部会を設置。現在、長時間労働解消のための調査を進めている。

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