2012年12月29日
定時制生徒への教科書補助と
定通振興会補助金の削減は許されない黒岩知事、作り上げられた「県財政破綻」を口実に県有施設・補助金カットを打ち出す
9月27日、黒岩祐治知事は自分が任命した「県財政対策本部調査会」(神奈川臨調)の「最終意見」を受け、「神奈川県緊急財政対策案」を発表しました。「対策案」には、「県有施設の原則廃止」、「すべての補助金の廃止・見直し」という「神奈川臨調」の方針が貫かれており、定時制・通信制をはじめとして教育に大きな影響が生ずることが懸念されます(下表参照)。
廃止・移譲・集約・統合などとするとした県有施設の例
・近代美術館(集約化) ・武道館(移譲) ・青少年センター(縮小)
・県立図書館(集約化) ・学校事務センター(統合) ・スポーツ会館(移譲)など
廃止・削減を含め、見直すとした補助金の例
・定時制教育教科書給与費 ・定通振興会補助 ・教科書学習書(通信制の教科書)給与費
・高体連補助 ・高文連補助 ・高校総合文化祭開催費補助 ・文化財保存修理等補助など
県財政は破綻直前ではなく、一般会計決算は連続黒字 投資家には健全ぶりを宣伝
県の「対策案」は、今後2年間で1,600億円の財源不足が生ずると推計しています。しかし、この推計の根拠となっている県の中期財政見通しでは、地方交付税制度を無視し、歳入を小さく、歳出を大きくして、意図的に財源不足額を作り上げています。
県の一般会計決算は、下表のように実質収支でここ数年連続黒字です。また、県民一人あたりの県債発行残高は全国で最も少なく、財政力の強さを示す財政力指数も全国3位であり、県の投資家向け資料では、破綻どころか財政の健全ぶりを宣伝しています。
(単位 百万円)
(県のホームページより)
区分 2009年度 2010年度 2011年度 歳入総額 a 1,675,359 1,837,182 1,814,887 歳出総額 b 1,668,944 1,824,890 1805,350 歳入歳出差し引き額 a-b=c 6,414 12,292 9,537 翌年度に繰り越すべき財源 f 2,740 5,503 4,618 実質収支 c-f ☆黒字 3,674 ☆黒字 6,789 ☆黒字 4,918
「定通教育振興法」に則るならば、教科書補助と振興会補助は不可欠
定時制の教科書補助と通信制の教科書学習書給与費と定通振興会補助は、働きながら学ぶ青年に対して教育の機会均等を保障した「高等学校の定時制教育及び通信制教育振興法」 に基づいています。県の財政難や高校授業料の無償化を理由に、補助金をカットすることは許されません。
神奈川県は、この間夜間定時制の給食を廃止し、食堂経営の定食に対する一部補助に切り替え、働きながら学ぶ青年にとって経済的に厳しい状況を作りだしてきました。この上、教科書補助と振興会補助を打ち切ることは「定通教育振興法」を侵すことになります。「定通教育振興法」の趣旨に則るならば、これらの補助を廃止するのではなく、入学定員問題をはじめとする高校教育の矛盾を定時制や通信制に押しつけてきたことを直ちにとりやめ、定通教育を充実発展させることが今求められています。