2012年10月23日
2013年度募集計画
公立43,700人程度、私立13,900人程度は必要
公私協議会案の「公立42,000人程度、私立13,500人程度」では、全日制進学率88.7%にしかならず、「全国最低」は改善しない
2012年9月10日、神奈川県公私立高等学校設置者会議が開かれた。今回はこれまでの募集計画策定の方式が大幅に変更された。2006年から始まった「公立枠のみ決める」との合意、2007年から導入された「率による割り振り」(公立の募集枠を公立中学卒業生の6割に抑える)はなくなり、とりあえず公立と私立それぞれが単年度ごとに目標値を出し合うことになった。
2006年以来続いてきた「私学学費補助の増額を極力抑えて」、「公立枠を絞って私学進学を増やす」という方式は、経済状況の悪化の中で、私学進学の低下を改善できず、全日制進学率が全国最低へと急低下して、定時制・通信制への不本意入学者が急増する大きな原因となっていた。今回の変更は、この間の世論を受けての、生徒の困難を改善する方向への変化と受け止められる。
しかし、発表された計画では全日制進学率は89%程度にしかならず、全国最低の状態からは変わらない。定時制、通信制の進学率がそれぞれ4%台で全国平均の2倍以上といった実態の改善にはほど遠い。2011年10月調査の全日制希望率91.6%の実現を目指して、公立43,700人と私立13,900人(合計57,500人)の募集はしなければならない。
「年次計画で時間をかけて改善」などと言っている余裕はない。いまを生きている生徒の将来を考えれば、思い切った改善策が必要である。
全日制進学率が88.0%から88.3%へ長年続いた低下に歯止め
しかし、まだ約2250人が全日制を断念
2012年3月の入試では、2004年以来、毎年低下を続けていた全日制進学率が、9年ぶりに上昇して88.0%から88.3%へと、ごくわずかに改善した(左グラフ参照)。
2012年度の募集計画で、『緊急措置』として公立募集枠を、60.0%に120人上乗せして「60.0%+120人」とした効果は明らかである。
経済の低迷が続く中で、家計も悪化を続けている。「経済的な理由で私学進学が難しい」生徒が多数存在し、公立枠を拡大することによって、それらの生徒の全日制高校への進学が可能になることが証明された。しかし、まだまだ改善にはほど遠い。今年の入試でも約2250人もの生徒が、全日制進学をあきらめて、定時制、あるいは通信制へと進学せざるを得ない状況は続いている。
神奈川の全日制進学率 「全国最低水準」は2006年以来7年連続
この10年間、全国的には高校進学率は0.6%程度の微減にとどまっている。しかし、神奈川では2001年から2011年までの間に2.8%も激減し、順位も37位から47位(全国最低)へと10ランクも下げた。2006年以降は愛知と最下位を争い、2011年にはその愛知からも0.5%低く、全国平均より3%も低くなってしまった(下表参照)。
神奈川県の全日制高校進学率の全国順位の推移
(公私協議会提出資料より作成)
*神奈川県が募集計画に使用している「全日制進学率」
卒業年 公私立中学卒業者の
全日制高校進学率全国平均との差
(a−b)*公立中学校卒業者の
全日制進学率a神奈川 b全国平均 順位 2001 92.0% 92.8% 37 −0.8% −91.3% 2002 91.0% 92.7% 40 −1.7% −90.1% 2003 91.9% 92.9% 39 −1.0% −91.1% 2004 91.7% 93.0% 40 −1.3% −90.8% 2005 91.0% 92.8% 44 −1.8% −90.1% 2006 90.6% 92.7% 46 −2.1% −89.6% 2007 90.3% 92.5% 47 −2.2% −89.3% 2008 90.2% 92.4% 46 −2.2% −89.2% 2009 89.7% 92.1% 46 −2.4% −88.7% 2010 89.3% 91.9% 47 −2.6% −88.2% 2011 89.2% 92.2% 47 −3.0% −88.0%
進学率の全国順位
(2011)
順位 都道府県 公私立中学
卒業者の
全日制進学率1 山形 95.6% 2 鹿児島 95.6% − − − 10 千葉 93.9% − − − 28 埼玉 92.2% − − − 38 東京 91.6% − − − 45 岐阜 90.6% 46 愛知 89.7% 47 神奈川 89.2% 全国平均 92.2%
いつになったらできる? 定時制の「適正規模化」
2011年3月、県教委は「これからの県立高校のあり方」(最終報告)を出し、その中で、「定時制高校の適正規模・適正配置の検討」を打ち出している。しかし定時制の適正規模化は、全日制進学率の大幅改善がなければ実現しない。
通信制も大規模化を改め 適正規模での教育環境の充実を
また、大規模通信制の修悠館高校(1250人募集)は、通信制の適正規模を大きく上回り、教育条件が悪化し、単年度に700人以上の退学者を出している。こうした事態をすぐに改善するためにも、全日制進学者を増やして、定時制や通信制への不本意入学を解消して、小規模化・適正規模化を図ることは重要である。
2013募集計画、「公私合意」では全日制進学率は88.7%がやっと
9月10日の設置者会議で確認された「公私合意」は「公立42000人程度、私立13500人程度」であるが、これを元に2013年の進学率を推測すると、88.7%にしかならない。
「全国最低」を直ちに解消し、希望率91.6%の実現のために公立43700人・私立13900人募集を!
我々「かながわ定時制通信制教育を考える会」が掲げる91.6%の進学率(公立中卒業者比)は、「公私立中学卒業者の全日制進学率」の全国平均92.2%(2011年)に相当する数値であり、本来実現しなければならない数値である。
2012年度の入試実績および2013年度の公私合意による募集計画と「考える会」の提案
公立中学卒業生 全日制進学者(進学予定者) 進学率 公立 県内私立 県外 計 2012年度実績(a) 67,856 88.3% 41,200 13,203 5,501 59,904 60.7% 19.5% 8.1% 2013年度公私
合意68,907 88.7% 42,000 13,500 5,586 61,086 61.0% 19.6% 8.1% 2013年度
考える会提案(b)68,907 91.6% 43,570 13,963 5,586 63,119 63.2% 20.3% 8.1% 進学率の増加分(b−a) 3.3% 2.5% 0.8% −
日本国憲法では、「法の下の平等」と「教育の機会均等」を国民に保障している。しかし、神奈川の進学率の低さは突出しており、このような無権利状態は放置できない。もはや「段階的改善」などは許されない。直ちに全国平均なみの91.6%を実現しなければならない。
やはり計画進学率は必要 県民にわかりやすい募集計画を
今回の「公私合意」の募集計画は、公立と私立の双方が目標を出し合い、公立枠のみ決めていた昨年度からの「前進」はあるものの、まだ受験生や県民から見た「全体像」の把握や、県の高校教育をどうするのかという政策目標としては不十分である。県民、公私の学校関係者、県行政の共通の目標として、「計画進学率」を掲げることは民主的な県政実現のためにも欠かせない。