2010年10月2日

2010年5月26日

夜間定時制給食廃止は、
定時制生徒の健全な身体と精神を破壊する


かながわ夜間給食を守る市民の会事務局長(神奈川県立高校定時制教員)


 夜間定時制高校では、今、給食制度が廃止されようとしている。この問題には教育の新自由主義再編によって、強きものはより優遇され、弱きものはより虐げられる現状の一端が象徴的にあらわれている。多くの生徒が昼間はフルに働いて、仕事が終わるとあわてて学校に駆けつけ、4コマの授業を9時過ぎまで受けている。この間の20分程度の休みの間に、夕食をかきこむ。

 これを読み、もしかしたら、夜間給食制度を集団就職時代の遺物のように思われるかもしれないが、それは違う。県の官僚も決まって「かつてのように定職に就いている生徒が少なくなった」ことを理由にあげる。確かにその昔より、就労生徒の比率は大きく減り、いったん社会に出てから入学してくる生徒も少なくない。しかし現実には、全日制公立高校の募集が減らされた結果、昼間に通える条件にありながら定時制に追いやられた生徒と、昨今の雇用破壊政策の影響をもろに受けて、働きたくともコンビニのアルバイトも見つからない生徒の多くなっていることが「定職の生徒が少ない」原因なのだ。
 

この苦しむ生徒たちを目の前に、県は「費用対効果」論を掲げられるのか

 県は「喫食率の低下」=「ニーズの低下」を根拠に「費用対効果が無い」と言う。最近の行政は「・・・・のニーズ(必要)」が大好きだが、「選んだもの」と「必要なもの」は違う。なぜなら、多くの生徒は必要でなくても選ばざるを得なかったり、必要であっても選ぶことが出来ない環境におかれているからだ。

 ある日、気分が悪いと保健室を訪れた3年生に、養護教諭がその日の食事を聞いてみた。朝6時に起きて、朝食と昼食をコンビニで購入する。8時ころバイト先でおにぎり1個を食べる。9時から4時のアルバイトの15分休憩でパン1個を食べる。バイトが終わり登校してから休み時間にまたパン1個とお菓子を食べる。学校が終わり夜中の11時に帰宅する。疲れすぎて眠れず0時から2時くらいに就寝する。彼女は1回分の食事を300円以内に決めているという。

 このような生徒は特殊ではない。空腹を感じてお菓子を食べて血糖値が上がり空腹感が無くなる。この繰り返しなのだ。かれらの多くには生活のリズムを整えてくれる家族はいない。親も仕事を掛け持ちして生活は
バラバラだからだ。

 これでも「ニーズ(必要)」がなく「費用対効果」がないといえるのか?彼らに、本当に必要なものは1日1食ぐらいは「まとも」なものを食べることであり、なにが「まとも」かを学習する環境だ。


必然性ある給食制度をないがしろにしてはならない

 夜間給食制度は約50年前に学習権・生存権の保障を根拠に国庫補助による実施を要望する運動によって勝ち取られた働きながら夜学学ばざるを得ない生徒の権利だ。同法には県の実施義務が明記され、各栄養素の内容までもが1日必要量の3分の1を基準に決められている。まさに、不十分ながら勝ち取られてきた権利なのだ。

 昨年度は労働組合でも交渉はしてきたが、今年度は18校中3校でのみ給食が維持され、あとは「学食化(給食法不適用)」とされた。来年度は原則全校で給食制度を廃止し学食化する方針だ。しかしもっと大きな問題は単なる「営業」に変わるということだ。現在は学食にも補助を付けるとしているが、「財政が厳しい」なかで利潤が上がらなければ補助どころか即撤退となるだろう。ここでも「規制緩和」とは人民の権利剥奪に他ならないのだと思い知らされる。


われわれは給食問題をはじめ、定時制のために運動を大きく広める

 われわれは、給食問題を中心に定時制高校の教員とかかわりのある市民とで、今年2月に「かながわ夜間給食を守る市民の会」を立ち上げた。これまでに、集会を1回、県議会議員への公開質問状と要請活動を行ってきた。集会の参加者は少なく、質問状への回答も1名だけだったが、まだまだこの問題が知られていないということだ。なによりも当事者である生徒やその保護者に知られていないのはわれわれの責任だ。

 給食問題を中心にそれに連なる夜間定時制高校や教育政策の問題に積極的に発言し、社会に大きく広げる運動に取り組んでいく決意である。
 

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