1998年10月1日
岡崎知事は14日、「県財政の窮状を訴える」とのアピールを発表、知事の責任を棚上げにしたうえで、「今年度640億円、来年度2200億円の財源不足がみこまれる」ので、今後は「県民の期待に応えられないケースも」でてくると語り、一律の緊縮予算編成を指示し、県民と私たち県職員に新たな犠牲を強いる姿勢を表明した。
確かに消費税増税や医療費負担増などによる不況により、今年度の法人事業税・地方消費税が予想より落ち込むことは推察できる。しかし、今年度の県税収入の下方修正された予想額は9700億円であり、この額は93年度〜96年度の各年度県税収入額より大きい。したがって、「財政危機」の原因は一般的な県税収入の減少ではなく、構造的なものである。
県には、92年度末で1660億円もの貯金があった。しかし、バブルが崩壊し、92年度から税収が減少したにもかかわらず、国の公共事業2.4倍化計画である「公共投資基本計画」に追随し、ゼネコン奉仕の大型プロジェクトをはじめとした公共投資などに、毎年3000億〜4000億円もの投資的経費をつぎ込み、この貯金を使い果たしてしまった。それだけでなく、毎年2000億から3500億円も借金(県債)を重ね、公共投資につぎ込んできた。その結果、91年度6000億円だった借金が、97年度末には1兆8000億円へと、6年間で3倍にもふくれ上がった。この借金の元利金の返済が、毎年、1300億円から2000億円にものぼり、「財政危機」を招いたのである。
国に補助金を抑えられているから、公共投資はやらざる得ないという議論(9月19日の神奈川高教組中央委員会における本部執行部の答弁) もあるが、そうであっても自治体の財政を守るために公共事業を見直す自治体も増えている(たとえば、橋本高知県知事は、和歌山―四国・四国―大分の二橋の建設からの撤退を表明した)。公共事業を押しつける政府・自民党の政策を無批判に受け入れ、追随・推進してきた岡崎知事の責任は極めて重い。
県の「財政危機」の原因として、教育費や人件費の県予算総額に対する比率が類似県に比べて高いことをあげる議論がある(高校百校計画が良くなかったという議論と結びつくこともある)。神奈川県の教育費や人件費が高く見える理由は、次の通りである。政令指定市(神奈川県では横浜市と川崎市)になると、道路や福祉など大部分の分野の予算は県から政令指定市に移されるが、小・中学校の教員の人件費と県立高校の全費用は県の予算に残される。したがって、政令指定市の人口の割合の高い(約55%)神奈川県の教員人件費の比率が高くなるのは当然のことである。このことを考慮に入れて比較すれば、神奈川県の教員一人あたりの生徒数は全国ワースト7位(公立高校 97年度)であり、決して教職員のが多いわけでもなく、教育費や人件費が多すぎるわけでもない。
マスコミでは、知事のボーナス返上が大々的に宣伝されている。しかし、ボーナス返上程度で、「財政危機」を招いた失政の責任は免罪されない。むしろ、これは「県民や公務員に犠牲を押しつけるためのパフォーマンス」であり、万が一にも、知事のボーナス返上をテコに一般公務員の人件費に手をつけるようなことがあれば、労働基本権の代償措置としての人事院制度の根本を揺るがすことであり、断じて許すことはできない。「人件費に手をつけるべきでない」は当然の要求である。
神奈川県職員労働組合は、知事の発表に対し、いち早く「県民・職員への犠牲転嫁ではなく、知事の責任明らかにし、県民本意の県財政再建に取り組もう」という提言を発表した。
そのなかで、今年度決算での財政再建団体入りをさけるために、
@9月補正予算案について緊急なもの以外は凍結すること、
A「しんみちみらい計画」など大型道路計画などの執行を抑制、凍結、または先送りすること
などを提案した。その上で、財政再建策として、
(T)巨大プロジェクト中心の「かながわ新総合計画21」を抜本的に見直し、当面、投資的経費をバブル前の2000億円程度に戻す。
(U)大企業に対する法人2税の超過課税を枠一杯の10%までに戻す、などを提言している。
さらに、莫大な借金については低金利への借り替えや元本返済の繰り延べを行うなどの措置を取らなければならない。また、国の補助金の補助率をもとに戻させるなど、国の地方への負担の押しつけをやめさせる必要がある。
このように、浪費的な財政構造にメスを入れ、不要不急な公共事業を削り、収入増を積極的にすすめるならば、岡崎知事のような「県民・職員への犠牲転嫁」ではなく、県財政を再建することは可能である。
失政のツケを教育・福祉に回させるのではなく、30人以下学級を求める大運動を攻勢的にまきおこしていこう。「財政危機」を口実に教育や福祉を切り下げる攻撃に抗し、三崎高校定時制の募集停止の動きを阻止し、全日制・定時制の一方的・機械的な統廃合を許さず、教育と福祉のいっそうの充実を求める運動を展開していこう。