2003年2月21日
川崎市教育委員会会議で、請願に対する第2回審議が行われる
3部制単位制高校は、定時制が果たしてきた役割をカバーできるのか
2月18日午後1時50分より、川崎市役所第3庁舎会議室において、川崎市教育委員会会議が行われ、前回継続審議となった「市立高校教育振興計画(案)」に対する請願(市立定時制5校を2校に削減する計画を見直して下さいなど)についての審議が行われました。当日は、市立高校定時制の保護者、生徒、教職員、市民約22名が傍聴に駆けつけました(なお、教育委員長宛署名は、1万6千筆を超え、市教委事務局によれば空前の数とのことです)。
最初に、請願者より出されている再度の陳述要求(市教委事務局は無制限に発言が許されるのに、請願者には15分間の制限付きで、1回しか意見陳述の機会がない。もう一度、意見陳述の機会を与えてほしい)に対しては、他の請願事案との公平性ということを理由に認められず、審議の過程で必要があれば行ってもらうということにされました。
次ぎに、教育委員会事務局が、福岡県や兵庫県の3部制単位制高校について、HPや新聞記事を使い紹介しました。これら2校の昼間部は、定時制と称しているものの実質は全日制と何ら変わらず、本当に定時制を希望している子が入学できるのか、極めて疑問であると感じました。昨年開校した横浜総合高校(定時制の3部制単位制高校)に対し、横浜弁護士会が、入学することは決して容易ではない学校であり、「これほどの人気校になってしまえば、もはや横浜総合高校は、これまで、定時制高校が果たしてきた役割をカバーすることは不可能であると思料せざるをえない」と認定したことが思い出されました。
続いて、市立定時制の普通科2校から教頭などが、現場の実状を教育委員に紹介しました。こうした定時制の状況については、教頭など教職員から話を聞くだけではなく、ぜひ定時制生徒および保護者を審議に呼んで、今回と同様に定時制の真の実態と生の声を知ってほしいと思いました。会議は、2人に対して若干の質問が行われ、再び請願は継続審議となりました。
以下に、昨年の12月17日教育委員会定例会議において、請願者(定時制高校を守る市民の会かわさき)を代表して行った、定時制生徒の意見陳述を資料として紹介します。
定時制生徒の意見陳述
川崎市立高校定時制生徒
僕は中学を卒業して、最初は全白制の専門科に通っていました。しかし、その専門の授業についていけず三学期から学校に行くのが嫌になり、行かなくなりました、そして三月にその学校を退学しました。
最初は就職しようと思いましたが、中卒ではちゃんとした就職先もありません。それで、もうー度、今度は普通科の高校に行こうと思いました。
しかし、もう一度受験しようと思ったときには、全日制も定時制も入学試験はすでに終わっていました。どうしようかと困っていたときに、定時制の二次募集があるという事を聞き、受けてみようと決めました。でも、近場の定時制はどこも二次募集をしていませんでした。残っていた選択肢は戸塚まで行くか川崎に行くかでした。僕は横浜の鶴見区に住んでいます。原付で通うと、戸塚は1時間、川崎なら30分かからずに行けます。毎目行くことを考えると、どうしても戸塚は遠く、川崎に行くことにしました。
試験を受け学校に通うようになりました。最初は知っている人もいなくて辛かったけれど、クラスの人数が、全日制に比べると多くないため次第に打ち解けていきました。馴れてくるとクラスメイトだけではなく、その友達を通して他のクラスの人や先輩なんかとも話すようになり、気づいたら学校のほとんどの人と友達になっていました。
これが定時制の魅力だと思います。全日制に通っている場合、他の学年どころかクラス内でもほとんど話をしない人がいたりします。それに他のグループに馴染めないで一人になってしまうかもしれません。しかし、定時制では全日制よりも人が少ないため全員と話す機会も多いので、みんなと仲良くなりやすいのです。定時制には元々人と話すのが苦手だったり、過去にグループに馴染めなかったり、そういうのが嫌で学校に行かなくなった人もいます。それが定時制に通うことで、それを克服できるのです。全員がとまではいきませんがほとんどの生徒が中学のときに比べて明るくなったと言っています。
理由はそれだけではありません。生徒数が少ないため、先生方が生徒一人一人に親身に接してくれる事ができるのです。これは僕の中でかなり大きいと思います。全日制に通っているときは、僕は先生にとって、ただの大勢いるなかの一人の生徒に過ぎないとという印象しか得られませんでした。しかし、定時制の先生方は僕たち一人ひとりを大事な生徒という目で見てくれているという印象を受けます。最初はそんなに親身に接せられたことがなかったので、戸惑い、目障りだと思うこともありましたが、今では逆に最初に思っていたことが嘘のようにその行為にすごく喜びを感じます。
実際、学校に来ていると、以前に卒業した先輩方がよく先生に近況報告などをしに会いに来ているのをよく拝見します。これは全日制に通っているときには見たことがなかった光景でした。最初は驚きましたが、時間が経つにつれて納得できました。全日制と違って、定時制では、先生と生徒の距離が短いからだと思います。
さらに定時制のいい点は自分の居場所を見つけやすいと言うことです。僕は昔から人前に出るのが苦手で、自分から進んで何かをするということがありませんでした。しかし、定時制に入って、人前にでなくてもやれることがあるのが分かりました。それで、生徒会に会計という役職ですが参加し、積極的に裏方の仕事をこなすようになりました。気づいてみると三期連続で生徒会の役員になっていました。人前にでるのは相変わらず苦手で、ずっと会計ですが、残っている一年間、頑張って学校のみんなが喜んでくれる仕事をしていきたいと思っています。
こういう前向きな考えができるようになったのも、定時制に入ったからだと思います。前の高校を辞めたとき、何でこんな道に進んでしまったんだろうと思いましたが、今では通ってきた道に後悔はありません。今では定時制は自分に一番合っている高校だど思います。もし、定時制の統廃合で定時制の数を減らしてしまったら、どうなると思いますか。全日制が合わない人や中学に行ってなかった人、事情があって全日制に通えなくなった人、通えない人、この人たちは定時制を選ぶかも知れません。しかし行こうと思ったときにはすでに定時制がなくなっている。もしくは近くにない。それではこの人たちの進む道がなくなってしまうのです。定時制に通えば、この人たちも、もっといい人生になるかも知れないのです。
(後略)
定時制の統廃合で、定時制の数を減らさないで下さい。よろしくお願いします。