2020年10月16日
 「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は10月1日、神奈川県教育委員会教育長に「『県立高校改革実施計画』の見直しと新型コロナウイルス感染症の拡大にともなう社会の変化に対応した高校教育を求める要請書」を提出しました。
神奈川県教育委員会
 教育長 桐谷 次郎 様

    

「県立高校改革実施計画」の見直しと
新型コロナウィルス感染症の拡大にともなう社会の変化に
対応した高校教育を求める要請書



 2020年10月1日
かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会

<懇談会団体>
横浜市立定時制高校の灯を消さない会          代表  高坂 賢一
  かながわ定時制通信制教育を考える会          代表  保永 博行
定時制高校を守る市民の会かわさき           代表  浅野 栄子
  不登校の親の会(こだまの会                代表  馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会                  代表  土志田栄子
港南区・教育を語る会                    代表  田崎秀一郎
県民要求を実現し県政の革新を推進する連絡会  事務局長 神田 敏史
  新日本婦人の会神奈川県本部               会長  田中由美子
神奈川県教育運動連絡センタ-             事務局長 宮田 雅己

                
【請願趣旨】
 新型コロナウィルス感染症の拡大により、世界中で感染防止のため、ロックアウトや学校の休校が行われました。ドイツのメルケル首相は「開かれた民主主義」「一つの共同社会として、私たちはお互いを見捨てない」と演説し、世界中の人々からの共感を呼びました。また、イギリスのジョンソン首相も「社会は存在する」と、当初の新自由主義的政策を改め、国民の支持を受けています。

 いま、世界では「コロナ後」あるいは「感染と共に生きる社会」への模索がはじまり、新自由主義的な動きを改め、人間が互いに共同・共生する社会をいかにつくっていくかへと大きく転換しつつあります。そこには「経済も大事だが、一人ひとりのいのち、人権がもっと大事だ」という民主主義の考え方が世界共通となりつつある事が示されています。

 全国一律に3月の臨時休校が要請され、4月7日の緊急事態宣言によって、県立高校では臨時休校が6月上旬まで延長されました。学校を再開するにあたっては、当初「身体的距離の確保」のため、クラスを半分に割って20人以下学級で行う方法がとられましたが、今では40人学級に戻ってしまい、生徒・保護者の不安と混乱は増すばかりです。

 子どもたちのいのちと健康を守ることと学習権を保障することが大きな課題となっています。いま安心・安全な「20人以下学級」を展望した少人数学級の前進が求められています。

 「生徒個々に応じた教育」「質の高い教育」を掲げて、県立高校改革実施計画が進行しています。しかし、統廃合の進行で学校数を減らし、学校規模の拡大で教職員数を減らし、生徒一人当たりの教育費を「節減」する「教育財政の節減」が先行して、教職員は多忙化する一方です。生徒一人ひとりを見る余裕がなくなっています。

 また、この「コロナ禍」による学校の長期休業を機会に、生徒家庭の経済格差によって、個々の生徒の教育の格差拡大が進んでいることが明らかになっています。2020年のユニセフ報告書では、日本の子どもの精神的幸福度はOECD38カ国中37位となりました。自殺率の高さや自己肯定感の低さが問題となっています。いまこそ、生徒一人ひとりを大切にする少人数学級が求められています。そのためにも、学校数を減らし、大規模校を生み出す「統廃合」をやめ、「高校改革実施計画」を見直す必要があります。

 また、日本の教育予算は年々後退し、GDPに占める割合はたったの2.9%、OECD38カ国中37位となってしまいました(2020年OECD報告書)。OECD諸国平均4.1%との差は約6兆円にもなります。この6兆円を教育にまわしてOECD諸国平均に近づければ、小学校・中学校・高校の20人以下学級も、小・中・高校教育の完全無償化も十分に可能となります。

 神奈川県の人口一人当たりの教育予算(県・市町村合計)は104,200円(2017年度)で全国の都道府県中47位と最低です。これを大幅に増やして、危険なボロボロ校舎の改修や耐震工事、トイレの改修などをすすめ、学校に配当される維持運営費を大幅に増額して、図書費や教育振興費などの私費負担を解消し、「お金の心配なく、だれでも安心して安全な高校に行ける」環境づくりが必要です。

 神奈川県は約920万の総人口に対して、18歳未満の子どもたちは133万人、小・中・高の学齢期の人口は92万人です(2020年1月現在)。「教育は百年の計」。少子化のいまこそ、教育への大胆な予算支出が、将来のしっかりとした社会の構築につながります。

【要請項目】

1.全日制高校および定時制高校の統廃合を行わないこと。

2.20人学級実現に向けて、少人数教育の段階的実施計画を策定すること。

3.全日制高校進学率93.5%以上を早急に実現すること。

4.高校教育の完全無償化を実現すること。

5.一学年8クラス(1クラス40人)を超える高校については、校舎施設の制約上、少人数学級化が困難となるため、8クラス以下にするよう、クラス数の削減を進めること

6.また、過渡的にやむを得ず8クラス以上となってしまう学校や校舎施設の不足する学校については、プレハブ校舎の増設など、校舎施設の整備を行うこと。

7.ICT教育について、人と予算の充実を図り、生徒の家庭環境による格差解消に配慮しつつ、オンライン授業も可能となるよう教育条件を整備すること。


<添付資料>
 一人ひとりを大切にする教育が必要です。幸福度37位の日本の子ども(OECD 38カ国中)

 ユニセフ報告書では、OECD38ヵ国について3つの指標で分析。日本は「精神的な幸福度」は37位、「学力・社会的スキル」27位、「身体的健康」1位、総合では20位でした。自殺率の高さなど、自己肯定感が低く、幸福感が育っていないと指摘されています。





GDPに占める公財政支出
(小・中・高・大学)2017年
出典:OECDインディケータ2020年版



       

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