2022年1月22日
 「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は12月21日、神奈川県教育委員会教育長に「『県立高校改革実施計画』の見直しと新型コロナウイルス感染症の拡大にともなう社会の変化に対応した高校教育を求める要請書」を提出しました。
神奈川県教育委員会
 教育長 桐谷 次郎 様

    

「県立高校改革実施計画」の見直しと
新型コロナウィルス感染症の拡大にともなう社会の変化に
対応した高校教育を求める要請書



 2021年12月21日
かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会

<懇談会団体>
横浜市立定時制高校の灯を消さない会    代表  高坂 賢一
  かながわ定時制通信制教育を考える会    代表  保永 博行
定時制高校を守る市民の会かわさき    代表  浅野 栄子
  不登校の親の会(こだまの会    代表  馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会   代表  土志田栄子
港南区・教育を語る会   代表  田崎秀一郎
県民要求を実現する連絡会  事務局長 倉形 洋一
  新日本婦人の会神奈川県本部    会長  田中由美子
神奈川県教育運動連絡センタ-   事務局長 宮田 雅己

                
【請願趣旨】
 新型コロナウィルス感染症の拡大により、世界中で感染防止のため、ロックアウトや学校の休校が行われました。

 ドイツのメルケル前首相は「開かれた民主主義」「一つの共同社会として、私たちはお互いを見捨てない」と演説し、世界中の人々からの共感を呼びました。また、イギリスのジョンソン首相も「社会は存在する」と、当初の新自由主義的政策を改め、国民の支持を受けています。

 いま、世界では「コロナ後」あるいは「感染と共に生きる社会」への模索がはじまり、新自由主義的な動きを改め、人間が互いに共同・共生する社会をいかにつくっていくかへと大きく転換しつつあります。そこには「経済も大事だが、一人ひとりのいのち、人権がもっと大事だ」という民主主義の考え方が世界共通となりつつある事が示されています。

 子どもたちおよび保護者の声を受け、40年ぶりに学級定数が見直され、今年4月から小学校2年生からの35人学級が学年進行で始まりました。

 しかし、計画・想定されているのは小学校・中学校のみであり、神奈川では高校はまだ学級定数改善の動きはありません。8月の感染再拡大による緊急事態宣言発令を受けて、県立高校では9月以降分散登校や家庭でのオンライン学習などの措置がとられましたが、宣言が解除された10月以降は、40人学級に戻っています。

 「withコロナ」の社会の中で、子どもたちのいのちと健康を守ることと学習権を保障することが大きな課題となっています。身体的距離を確保し、安心・安全で「質の高い教育」を実現する「20人以下学級」を展望した少人数学級の前進が求められています。

 県立高校改革実施計画が進行し、「Ⅰ期計画」で4校1分校、「Ⅱ期計画」で4校の高校削減が進んでいます。また、2016年に発表された「実施計画(全体)」では、来年秋に発表される予定の「Ⅲ期計画」でさらに10校ないし20校の高校削減を行う予定とされています。しかし、2019年以降、「新型コロナウィルス感染症の拡大」という新しい出来事があり、事態は大きく変化し、計画の見直しが必要です。

 この計画の本質は、教育の私事化(自己責任化)と公的教育費の削減にあります。学校数の削減・学校規模の拡大で教職員数を減らし、生徒一人当たりの教育費を「節減」する「教育財政の節減」が先行して、教職員は多忙化する一方で、生徒一人ひとりを見る余裕がなくなっています。「生徒個々に応じた教育」や「質の高い教育」は不可能な状態にあります。

 また、この「コロナ禍」による学校の長期休業を機会に、生徒家庭の経済格差によって、個々の生徒の教育の格差拡大が進んでいることが明らかになっています。2020年のユニセフ報告書では、日本の子どもの精神的幸福度はOECD38カ国中37位となりました。自殺率の高さや自己肯定感の低さが問題となっています。いまこそ、生徒一人ひとりを大切にする少人数学級が求められています。

 そのためにも、「高校改革実施計画」を見直して、学校数を減らし、大規模校を生み出し、35人学級などの少人数学級を不可能にしてしまう「高校統廃合」をやめる必要があります。

 また、日本の教育予算は年々後退し、GDPに占める割合はたったの2.9%、OECD38カ国中37位となってしまいました(2020年OECD報告書)。OECD諸国平均4.1%との差は約6兆円にもなります。この6兆円を教育にまわしてOECD諸国平均に近づければ、小学校・中学校・高校の20人以下学級も、小・中・高校教育の完全無償化も十分に可能となります。

 神奈川県の人口一人当たりの教育予算(県・市町村合計)は104,200円(2017年度)で全国の都道府県中47位と最低です。これを大幅に増やして、危険なボロボロ校舎の改修や耐震工事、トイレの改修などをすすめ、学校に配当される維持運営費を大幅に増額して、図書費や教育振興費などの私費負担を解消し、「お金の心配なく、だれでも安心して安全な高校に行ける」環境づくりが必要です。

 神奈川県は約920万の総人口に対して、18歳未満の子どもたちは133万人、小・中・高の学齢期の人口は92万人です(2020年1月現在)。「教育は百年の計」。少子化のいまこそ、教育への大胆な予算支出が、将来のしっかりとした社会の構築につながります。


【要請項目】

1.全日制高校および定時制高校の統廃合を行わないこと。

2.高校での35人学級に取りかかり、20人学級実現に向けて、少人数教育の段階的実施計画を策定すること(全県一律にこだわらず、可能な高校から取り組みを始めること)。

3.全日制高校進学率93.5%以上を早急に実現すること。

4.高校教育の完全無償化を実現すること。


<添付資料>
 一人ひとりを大切にする教育が必要です。幸福度37位の日本の子ども(OECD 38カ国中)

 ユニセフ報告書では、OECD38ヵ国について3つの指標で分析。日本は「精神的な幸福度」は37位、「学力・社会的スキル」27位、「身体的健康」1位、総合では20位でした。自殺率の高さなど、自己肯定感が低く、幸福感が育っていないと指摘されています。





GDPに占める公財政支出
(小・中・高・大学)2017年
出典:OECDインディケータ2020年版





       




















公立高校入試の倍率
(全日制2021年 角谷信一氏提供)


定員割れ学科のある全日制高校
(2021年度の入試 角谷信一氏提供)

                

神奈川は、小学校、中学校、高校すべてが過密・大規模

★神奈川は、全国で一番、小学校、中学校、高校の数(公立・私立含めて)が少ない。

★また、高校入試の倍率も高く、生徒たちは熾烈な高校入試競争にさらされ定員割れのある高校数が全国一少なくなっています

★そのため、専門高校や一部地域を除いて、35人学級などの少人数学級化をする余裕がありません。これ以上の高校統廃合は、近い将来の少人数学級の可能性を皆無にしてしまいます。

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