シリーズ 今、定時制高校では A

                   登校拒否から立ち直らせてくれた定時制

  横浜のある定時制高校では、今年の1学期にPTAの懇談会が開かれました。A先生は、廊下でB君のお母さんから呼びとめられました。B君が登校拒否から立ち直って、毎日通学できるのはA先生のおかげだというのです。A先生からすれば、特別なことをしたとは思っていませんでした。

  確かに、B君は典型的な登校拒否の生徒でした。92年度に入学したときは、学校になじめず、出席日数が足りずに、例にもれず留年してしまいました。ですから先生の頭には、常にB君のことが気がかりで、毎日、必ずB君に励ましの声をかけるのを日常にしてきました。日曜日には自宅に遊びに来るようにやさしく誘ってみました。B君は友人をつれて、A先生の自宅を訪ねて、楽しい団らんを過ごすこともできました。

  B君のお母さんは、登校拒否をしていたときのB君の家庭における生活を涙ながらに話してくれました。B君の家庭内の生活は、登校拒否の生徒にありがちな、家庭内で物を投げつける、暴力をふるうなど手がつけられない、荒れた生活だったようです。しかし、毎日学校に通うようになってから、すさんだB君の生活がぴたりとやんで、平和な家庭生活に戻りました。B君は、「A先生が毎日声をかけてくれるのでうれしかった。あの先生は、僕だけでなくみんなに声をかけてくれる。A先生は本物だよ」とお母さんに語ったそうです。

  この学校では、B君だけでなく、多くのいわゆる登校拒否といわれた生徒が、学んでいます。Cさんもその一人です。彼女はこの学校に入学してからもう3年になります。今、美術部で頑張っています。Cさんの妹のDさんも、今年入学してきましたが、中学では、「出席すべき日数」の9割近くも欠席していますので、多くの教職員は心配しました。しかし、彼女もテニス部に入って、元気に活躍しています。

  この定時制高校では、多くの登校拒否の生徒が、どうにか毎日通学していますが、その理由は先生方によって、とらえ方がさまざまです。「定時制は1日の授業時間が4時間なので、耐えられるのではないか」「定時制の自由で家庭的な雰囲気が合うのでは」「粗暴な生徒を含めて、痛みがわかりあえるのではないか」など多様な見解がとびかっています。この高校の例からもわかるように、さまざまなハンディをもって入学する生徒に対して、定時制の教育は確実に成果を上げているといっても過言ではありません。

                                
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