1999年7月15日
県立高校の大削減ではなく、希望者全入と30人以下学級の実現を
「かながわ定時制教育を考える会」代表 中陣 唯夫
年 度 | 1993年度 | 1994年度 | 1995年度 | 1996年度 | 1997年度 | 1998年度 | |
進 学 率 | 計画 | 91.0 | 92.0 | 92.0 | 92.5 | 93.0 | 93.0 |
(%) | 実績 | 91.8 | 91.6 | 91.0 | 90.7 | 92.3 | 91.9 |
98年度の実績進学率である91.9%は、93年度の91.8%とほとんど変わっていません。計画進学率を2%上げても、実際の進学率は0.1%しか上昇していないのです。したがって、骨子案でいうように計画進学率を上げるだけでは、高校への進学希望が叶えられるという保障はありません。
そこで、なぜ実績の進学率が計画通り上がらないのかということついて、私たちはこのように考えます。県教委はこの5年間で61,215名(全入学定員の75.4%)であった公立高校の入学定員を49,862名(73.5%)にまで減少させています。その結果、私立高校の入学定員の割合が増えました。
その私学においては、私学助成の削減やこの間の不況、家庭の経済力の弱まりのために、計画された入学定員(18,000名)を満たせない事態(16,022名)となっています。実績の進学率が計画通り上がらないのは、この間に県立高校の学級減を大幅にすすめたことが根本の要因です。実績の進学率が上げるためには、県立高校の入学定員枠を増やすことが必要です。
県立高校削減で、高校へ行けない子が、今以上に増えるのではないか
97年度の公立中学卒業者の進路希望調査では、県立高校を含む県内公立高校希望が83.0%であったのに、実際に公立高校に進学できたのは63.8%にすぎず、約20%、実数でいうと14,980名の子どもたちが希望していたのに公立高校に入学できませんでした。
さらに、公立や私立に関わらず全日制高校への進学希望者は94.3%であるのに、実際に入学できたのは、91.8%にすぎず、約1870人の子どもたちが全日制高校に入れませんでした。
99年度の入試に関しては、川崎地区で約900名の子が全日制高校を不合格となりました。全日制高校を不合格となった場合、高校生活をおくれるのは定時制と通信制しかありません。定時制については、99年度は全県で約80〜100名の不合格者を出さざる得ない事態になっています(99年度募集停止とされた三崎高校定時制のある三浦地区では、約35名の人が、高校進学を断念するか、横須賀地区などの定時制高校等に通わなければならなくなったことが私たちの調査で明らかになりました)。通信制についても、新規中卒者は何とか入学できるものの、転編入については希望通り入学できない状況です。
高校へ行けなかった子どもたちは、高校進学をあきらめ就職をしたり、中学浪人をしたり、専門学校やフリースクールに通ったりしています。また、高額のお金を払い、サポート校に通っている子どもも増えてきています。
このような現実があるのに、なぜ今、県立高校を25〜30校も削減する計画を立てるのでしょうか。現在、深刻化する不況により経済的に苦しい家庭が増えているもとで、県立高校をはじめとする公立高校を減らしてしまうと、骨子案でどんなに「計画進学率を段階的に上げる」と言おうとも、高校へいけない子が今以上に増えることが予想されます。実績の進学率を上げ、高校へ行けない子を作り出さないためには、県立高校を削減するのではなく、存続させることこそ必要なのです。
フレキシブルスクールの設置に強く反対します
骨子案には、新タイプの高校として単位制による普通科高校、フレキシブルスクール、総合学科高校などが掲げられています。これらの単位制高校については、従来の高校に比べてホームルームなどの基礎的集団の形成が十分でないため、ともすれば高卒の資格取得そのものが目的となりがちで、ホームルーム活動や学校行事などの特別活動による人間形成が十分できないという問題点が指摘されています。
なかでも、1日8〜12時間の授業時間帯で任意に単位取得をするというフレキシブルスクールについては、なぜ夜間の時間帯や定時制の課程が必要なのかについては、骨子案で詳しく触れられていません。確かに、夜間の時間をおき、定時制の課程にすると、大学検定試験や実務代替、技能連携、定通併修などを利用でき、全日制の単位制高校に比べ、施設・設備、教職員配置などを十分保障しなくても、安上がりで高校を設置することができます。しかし、全日制では認められていない、こうした単位認定は、生徒の学力や人格の形成を保障するものではないということが明らかになってきています。わたしたちは、骨子案のかたちでのフレキシブルスクールの設置に強く反対します。
県立高校の削減ではなく、希望者全入と30人以下学級の実現を
中学校の卒業者数が減少していく2006年までの時期は、施設・設備、教職員数などの面で、その気になれば全日制希望者は全日制への、定通制希望者は定通制への進学を保障できる絶好の機会であります。また、学級担任や教科担任が一人一人の生徒に十分配慮し、ゆきとどいた教育を行っていくためには、30人以下学級がどうしても必要です。そして、施設や教職員の面でこの時期は、30人以下学級を実現できる条件が十分にあります。今、教育行政に求められているのは、県立高校の削減やフレキシブルスクールの設置などではなく、高校への希望者全入と30人以下学級(定時制は25人以下学級)の実現です。
わたしたち「かながわ定時制教育を考える会」は、県教委が骨子案の根本的な見直しを行い、多くの県民が参加したもとでの、十分期間をもうけた論議をもとに、より良い「県立高校改革の計画」を再提出されることを強く要求するものです。