2009年11月3日


連載  定時制の保健室から 番外

給食は定時制生徒にとって、「最後の砦」なのです

県立定時制高校養護教諭


 「あ〜人を殺してえ(たい)」と保健室に、Aがやって来た。理由を聞くと自分があまりに.好意をもっていない友だちが親しげに近づいてきたら、「ぶっ殺したい」という。自分でもその衝動を抑えようと保健室に頭を冷やしに来たのである。

 しばらくして、落ち着いたようで話ができるようになった。保健室で休養する際には「来室記録」という問診のような用紙がある。記入項目は来室理由に加え、食事や睡眠などの日常生活に関する項目がある。食生活についての質問は「いつ食事をしましたか?」である。なぜかといえば、朝食抜きなどの問題ではなく、食事らしい食事を数日間していない生徒がいるからである。

 当のAも「2時ごろアメを食べた」、とある。「朝ごはん食べをの」と聞くと、「食ってねえ・・ちゃんとしたメシを食ったの、昨日の昼友だちとメシを食いに行ったときだ」という。それ以降は、お菓子やコンビニの唐瘍げなどちょこちょこつまんでいただけだという。Aのいらいらの原因は明らかに空腹(本人は自覚していないが・・)である。アドレナミンが過剰に分泌され、とてつもない怒りが本人を支配、してしまったのである。

 Aに限らず、来室記録を見ていると、生徒の食生活はひどいものである。学習意欲はまず第一次欲求(生理的な欲求)が満たされないと出てこない。学校に栄養バランスがとれた食事が用意されているということは、生徒たちが落ち着いて学習に取り組むために必要なものである。

 「先生、実は私、家でごはん食べた後吐いているんだよ」と打ち明けたB。彼女は家庭の事情で親と離れ兄弟と暮らしている。「自分で作って食べると、食べた後なんか吐きたくなっちやう」涙ぐむ。「一通り家族や食事の話をして帰っていった。数日後「先生、給食だと吐きたいと思わない。みんなと食べるし、給食のおばさんから手渡されるとなんかおいしい。結局寂しいから食べ過ぎて吐いちやうんだねj と報告に来てくれた。

 定時制に通う生徒は家族と生活時間帯が異なるため、自分で適当なものを作ったり買ってきたりして一人で食事をしていることが多い。人と一緒に食事すること、また自分たちのために作ってもらったこと(作り手の顔が見えること)が心の心を満たす。

 これらの事例から言えることは、定時制の生徒にとって給食は「最後の砦なのだ」ということです。栄養面に関しても情緒の安定や発達においても給食は欠かせないものです。ぜひ、教育としての学校給食を存続させていただきたいのです。

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