2011年10月8日
連載 定時制の保健室からE
デートDVという言葉を聞いたことがありますか
県立定時制高校養護教諭
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、親密なパートナーに対してふるわれる体や心への暴力のこと。一般には、夫婦間で起きる暴力の事であるが、いま高校生の間でも起きている。セックスをするまでは何でもなかった相手が、親密な関係になったとたん、身体的、精神的、性的など様々な形で暴力をふるってくる。このように結婚していない男女間で起きた場合「デートDV」と言う。
A子とB雄は共に1年生で、同じクラスに在籍し、同じ部活に所属しマネージャーと部員という関係でした。A子は、男子が多いクラスでマドンナ的な存在であるが、苛められてもいた。それでB雄がA子を守ってあげるということで、1年の後半から交際が始まった。
初めは、言葉通りB雄はA子に優しかったという。しかし二人の中が親密になるに従いB雄の束縛が始まった。休みの日は、A子の家に入り浸り、学校のある日は登校前に迎えに来る、帰りもー緒に帰宅しÅ子の家に上がりなかなか帰らない。そのためA子の父親にB雄は注意されても、従わず喧嘩になってしまうことが続いていた。
A子がB雄の束縛に我慢できなくなり別れ話を切り出すと、逆上し暴力を振るう。外でそんなことになって回りの人が止めに入っても今度はその人に暴力を振るってしまうということもあったという。しかし次の日は、反省して優しくされるのでずるずると関係が続いている。そのような時、学校の最寄り駅で又B雄が暴力を振るった。それを目撃した同級生から翌日学校に知らされ、本人たちも認めたので学校の指導が入ることになった。たまたま職員室でそのことを耳にし、養護教諭の私も指導部の会議に参加させてもらいたいと申し出、生徒に関わることにした。
普段のB雄は、身長が高く体格は良いがどちらかといえば穏やかで女の子グループに混じって話しているタイプである。そんなB雄がA子の事に関してはまるで別人のような行動をとる。校内でも放課後にそんな豹変した姿を目撃していた教員がいたが、その教員もあまり深刻に捉えていなかった。
先ず私は、彼らの問に起きていることは「デートDVjであることを、指導部の教員に伝え共通認識を持ってもらった。そして私からは、@Å子を暴力から守り、A子にB雄のやっていることはDVであることを気づかせる。AB雄には暴力使って相手を支配するのは、愛情ではないこと、DVであることに気づかせる事が必要であることを提案した。
私は、A子に被害者であることを自覚させ、彼から離すための面接をした。その結果A子の恐怖も治まり落ち着きを取り戻した。A子の了承を得て、B雄は家庭謹慎が解除され学校復帰をした。しかしB雄については、DVについての十分な教育が出来ないまま、A子には、一切関わらないという条件で教室に戻した。一日目でB雄から「A子が他のクラスメートと話して居るのを見ているだけで教室にいたたまれない、同じ教室ではやって行けない」と言う申し出でがあり学校間の配慮で転校させた。
DV防止法が施行され、家庭内暴力から被害者を守るようになった。学校現場では、予防として男女間のコミュニケーションのあり方や方法について教えていくことが緊急の課題であると考える。