2011年6月17日
定時制の保健室から D
うっかり見過ごしてはならない本当のところ
県立定時制高校養護教諭
定時制に来ている生徒たちは、家庭に困難な事情を抱えていることが多い。保健室で語られる生徒の話から経済的に厳しい家庭や家族関係の複雑な家庭の様子が伺える。しかし、そのような家庭環境にもめげず大部分の生徒は、学校と仕事を両立させ逞しく生きている。
その1
Sさんは、3人兄弟、兄は高校を卒業したがその後仕事を転々としている。そして、Sさんには小学生の妹がいる。入学当初は、友だちに付いて保健室に来ていた。常に微熱があり風邪気味で、「寒い、寒い」と周りの生徒より厚着をして休調が悪そうだった。
母親はパチンコが好きで、お金にだらしが無く、Sさんのアルバイト代まで取り上げて使ってしまう事とか。家事が得意ではなく、中学のときは、お弁当が間に合わず毎日遅刻をして担任から注意をされるが、そのことが言えずに悔しい思いをしたとか。父親は、職人で朝から夜遅くまで働いているので家事と育児は母親任せである。Sさんもアルバイトをしながら、買い物、洗濯、妹の面倒を見るなど母親の手伝いもしていると言う。
2年に進級した頃から微熱や風邪も治り、先生方にも元気に挨拶するようになった。保健室だけがほっとできる居場所だと言って訪れ、両親が離婚しそうだとかアルバイト先の人間関係での悩みなど日々の出来事を話してくれ、何とか卒業まで頑張った。
その2
いわゆるやんちゃな生徒の対応は頭を悩ませる。数人で来室し好き勝手を言って素直に授業に行かない生徒たちである。
グループの1人Kがアルバイト先で怪我をして、そのまま登校してきた。膝を深く擦り剥いていたので応急処置を施し、家での処置を教えながら話をした。家には、自分と父親、兄しかおらず、それぞれが自分のことで精一杯である。Kも朝早く家を出てアルバイトに行き、その後学校に来て部活もしているので病院に行く時間が無いとしばらく消毒に保健室に通った。普段は、保健室でも良い態度とは言えないKにあまり良い印象を持っていなかった私だったが、彼の家庭での生活を聞いて、Kを少し理解できた。「保健室は病院じやないよ」と言いながらも手当をした。
男子は集団で来て騒ぐばかりで、一人ひとりときちんとした話になりにくい。騒いでいる子に目を向け、指導にとらわれず、悩みの背景にあるものを真摯に受け止めて対応していく必要を痛感する。荒れている子どもたちこそ、実はそれぞれ精一杯のものを抱え、保健室へやってくるのだと再認識させられた。
家庭が安心できる居場所になってない子どもたちは、家にいても面白くない、逆に家にいると苛々すると言う。保健室という狭い場所で、限られた時間の中で、如何に子どもたちが自己表現し問題を自ら気づいていくのかを忍耐強く見守っていく。また保健室で知った子どもたちの課題を、私自身が教師達と繋がって行くことで、共通の教育課題とし共有し、一緒に子どもの成長・発達を支える職場にしたいと仕事に励んでいる。