2011年4月23日


連載  定時制の保健室からA

保健室に居場所を求める生徒たち

県立定時制高校養護教諭


 Kの最初の来室は、2年生の秋のことであった。「バスに酔って気持ちが悪いので少し休ませてください」と訪れた。色白でぽっちゃりした可愛い子で性格はおっとりしているように見受けられた。熱を計ったりしながらしばらく休んで教室に行った。その日を境にだるい、気持ちが悪い、おなかが痛い、風邪を引いたと毎日訪れるようになった。37、3度位の微熱が続き何時もだるそうである。近所の病院に行っているというが決然の様子が見られないので、心療内科を紹介し受診させた。

 その結果思春期に多発する自律神経失調症である起立性調節障害といわれた。心因性の疾息とも考えられ,心身症の1つとしても扱われる(急な激しい運動で倒れたり、腹痛を練り返すこともある)。

 この診断を担任、学年団に伝えEの訴えの背景とし共通理解を持つことが出来、調子の悪いときはいつでも保健室を利用できるようになった。

 保健室では、Kの訴えを受け止め安心して休める場を作った。殆どはベッドで休むことも無く私の側で話をして過ごした。Eが4歳のときに両親が離婚をして、母親の親戚が居る横浜に引っ越してきたことや小学校ではミニバスケットをやる活発で明るい子だったという。中学では演劇部に入り充実した日々を過ごして来た、高校ではアルバイトをしていることなど話してくれた。学期末になると体調の悪さと出席日数のせめぎあいで苦しそうにしながらも保健室と教室を往復していた。     
 やっとの思いで3年に進級し、病気に対する受け止めも出来、「身体の調子は良くならないけど開き直りが出来るようになり気分は楽になった」と言えるようになった。

 幼いころに両親が離婚し無意識のうちに、家では母親に心配を掛けないようにと良い子だったK、学校でも常に気を使い、家でも学校でも本当の自分の気持ちを出せず頑張り続けてきた。最初に保健室を訪れてきた日から、Eは今までの頑張りが限界に来たというように毎日保健室に来て、身体の不調を訴えることで私に甘えているようであった。今まで幸いことや嫌なことを表現出来ず上手に甘えることが出来なかった。このことが心身の異常を引き起こした原因ではないかと私は思った。

 私はKが卒業の単位を取るためにと体調の優れない中必死で頑張っていることを職員に伝え、同時にK自身にも担当教科の先生に事情を話しに行かせた。課題や追試、自由登校に入った後にも登校をすることで卒業が認められた。進路は希望の短大に合格し、精神的にも成長し無理をしないで自分のペースを守ってやって行けるようになった。


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