2003年9月6日

 8月26日、請願書「『定時制検討委員会』(仮称)のメンバーに、定時制高校の当事者である生徒や保護者・卒業生・先生を加えてください。」についての、川崎市教育委員会審議を傍聴した方から、本会に傍聴記が届きましたので、それを紹介します。



傍聴記 パートT

  527()、『川崎市高等学校振興計画()(以下『計画()』は定時制課程に関して「五校を二校にする案をいったん白紙にもどし、『定時制検討委員会』(仮称)を設けて協議し直す」と「修正」されましたが、()の『再考を求める請願』を提出していた「定時制高校を守る市民の会かわさき」は、検討委員会の公正な運営を求めて、請願書「『定時制検討委員会』(仮称)のメンバーに、定時制高校の当事者である生徒や保護者・卒業生・先生を加えてください。」を同市教育委員長に提出(623日付)しました。

この請願の審議は、812日に会の代表・浅野栄子氏の請願陳述から始まり、次いでこの826日、第二回が川崎市教育文化会館で午後1時より開かれました。傍聴者は8名ほどでした。

まず請願書が事務方から読み上げられ、市教委側が検討委員会の進め方について、諮問から答中まで8段階を図式化した資料を示し、「様々な立場からいろいろ検討できるように構成し、協議内容はHPや公聴会などを通して広報に努め、意見は電子メールや懇談会などで伺っていく」と説明しました。

審議の中で、市民からの意見は委員会にフィードバックして反映していくことも確認されましたが、学識経験者の2名が、1名が内諾、1名が交渉中ということが明らかになったり、定時制も含めた県立高校の再編計画の状況も十分考慮に入れてほしいとの要請意見があったりで、種々の未整理の要素を抱えたまま行政が進めようとする、この「計画(案)」の拙速性(各自治体の「再編計画」がいずれもそうだが)を感じざるを得ませんでした。

その一方で、検討委員会での審議内容を生徒へきちんと伝えることや、生徒の二一ズに応えるようにと生徒と審議との関係に言及す意見も出され、こうした点にいつものことですが、この川崎市教育委員会の審議にある良識の高さを傍聴者として感じたことでした。

さらに、教育委員会とちがう雰囲気でみなさんが意見を言いやすく、傍聴者にもわかりやすい公聴会であってほしい、との意見も出さました。

この後、この日の審議の最大の問題点に入っていきました。

委員長から、527日の請願に対する審議終了の在り方が「わかりにくいという意見もあった」として、この請願について「市教委の提案に請願の要望が全部はいっているわけではないが、これまでの経過から、どう扱うか。(検討委の)構成内容はどうか。市教委案を受け入れれば全面的採択になると思うが」とのまとめの提示から、採択を巡る様々な意見が出されました。

趣旨採択、部分採択など、意見は分かれましたが、「委員会の手順にB『協議内容提示』C『意見要望等』が入っており、請願趣旨は受け入れている。しかし、請願にいう委員構成に関する要望と委員構成にズレがあるのではないか」との意見が出て、にわかに請願書の末尾にある「定時制高校に通っている生徒達の実状・気持ちをよく知っている方々を・・・当事者である生徒や卒業生・保護者を、また学校の先生を加え…」の文言の真意を探る論議に焦点が移りました。

「趣旨が整理されれば請願に対する委員の姿勢も変わる」とか「定時制に関係の深い人を委員に入れれば全面採択となる」など、様々な意見が次々に出されました。

要約すれば、各立場の代表(生徒・卒業生・保護者・先生)4名を加えろということか、「実状・気持ちをよく知っている」代表格の人を加えろというのか、請願では判然としないということになったわけです。

この審議過程で、市立の定時制にPTAがないのに「なぜ、市民代表3名の一人に『市PTA連絡協議会』が入っているのか」との疑問が出され、事務方が「高校の代表ということで入っていただいている」と苦しい答弁、行政の現場を知らない一面が図らずも露呈された一幕もありました。それにしても実質的に実情を知る市民代表が1/13とは、請願権の精神にも反するものです。

この日の段階で明らかにされた計13名の「委員一覧」はこうです。

学校教育関係者(4)は、教頭会や校長会に推薦を依頼、選考された人。学識経験者(2)市民代表(3、うち市民公募1締切りの7月末で4名応募、未選考)、行政関係者(4)。「幅広い立場からの意見を求めて」構成したと説明されましたが、『計画()』立案の当事者的立場の人や批判的立場に立ちにくい肩書きの人が約2/3以上を占める構成内容では、」請願者はもとより、委員も異論を唱えざるを得なかったのではないでしょうか。

論議は結局、事務方が「請願の趣旨」を請願者に確認することになり、審議は中断。

再開後、事務方から趣旨を聴取した結果について、「4名全員入れてほしいとも読めるが、そのうちのいずれか深い認識の人が人ってもらえばいい、ということです」と報告されたが、委員より「明確さにかける」との趣旨で、「請願者に正式に文書で出してもらっ

たほうがよい」「新たに請願を出していただくか」「補正ということにするか」など発言が続きました。事務方から、「各立場の代表を委員に入れるという趣旨であれぱ、新たな請願ということになる」との発言があり、請願者の対応も含めて、審議は継続、持ち越しとなり、320分に委員会は終了しました。

これで、9月の検討委員会の発足予定は大幅に遅れることになりました。しかし、遅れることを「マイナス」ととらえるのではなく、「慎重、かっ充実した結果」を生み出すためという点に、この事態の意味を見出だすことが大切だろうと思います。

傍聴者としていつも思うことですが、つい横浜市教育委員会の審議(ほとんど「通過儀礼」にして何も話し合わない実状)とを比較してしまうのですが、「定時制高校を守る市民の会かわさき」の取組みの反映ももちろんあるのでしょうが、教育委員の方々の話し合いを展開しながら、その責めを果たそうとされる姿勢に快いものを感じます。それは、話し合いという民主主義を現実のものにしているところからくる、快さというものかもしれません。

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2003年9月25日

 9月16日、新たな請願書「定時制検討委員会の委員に、定時制高校の学習経験者(在校生か最近の卒業生)から1名、保護者から1名を正式なメンバーとして加えて下さい」について、川崎市教育委員会の審議が行われました。当日傍聴した方から、傍聴記が寄せられましたので、資料として紹介します。



傍聴記 パートU

設置が決定した『定時制検討委員会(仮称)(以下『検討委』)について、「定時制高校を守る市民の会かわさき」(以下「市民の会)では、その公正な運営を求めて請願書を同市教育委員長に提出(623日付)、委員会は請願審議を8月に二回(請願者代表の陳述と審議)開きました。しかし、26日の審議で『検討委』の構成内容と請願趣旨との関連で、趣旨の真意をめぐり論議が集中し、その結果、「市民の会」はあらためて、委員構成についてより明確な要請内容の請願書を提出しました(912日付)

この16()、川崎市教育委員会で13:30より、この新たな請願書について委員会が開かれました。傍聴者は約20名でした。まず事務局から、請願者の求めに応じて前回審議の請願書の取下げが諮られ了承、次いで新たな請願書についての報告が事務局からあり、協議することが了承されました。さらに請願者代表の陳述の要請についても了承され、その日程等については事務局に一任することが確認されました。

このあと、「川崎市立高等学校教育振興計画にもとづく各種委員会への諮問について」として次の三件の諮問が了承されました。

1川崎市立高等学校間の学校間連携について

2川崎市立高等学校定時制課程の再編成について

3川崎市立高等学校における教職員の人事交流の促進。推進について

任命制の教育委員会では何かと市民の声が届きにくい、との風評がありますが、そうした教育委員会の使命(責任)が分散化されるように多くの諮問委員会が作られることには疑問を持ちました。構成委員も学識経験者、学校管理職、行政当局で3/4を占めるのでは、教育要求に対応した方向性は出にくいのではないでしょうか。

そうでなくても、国会や議会が空洞化し、未成熟な法案や政策が軽々しく成立していく一、こんな軽薄で怖い時代状況の背景に「諮問委員会方式」があるとは、つとに批判されてきているところです。

そもそも、『振興計画』を推進する行政側、つまり実質的に答申を受ける側から諮問委員が出ているのは民主的な手続きにてらして妙だと言わざるを得ません。審議に必要だとしても、オブザーバーにとどめておくのが公正なあり方だと思います。

この日、事務局から傍聴者に渡された資料には、「●行財政改革の推進(主な見直し施策)・人件費の削減(職員配置の見直し、組織機構の再編・整備)・公営企業の経営の健全化…」などと書かれた予算編成方針についての依命通達の文書があったり、請願に対する結論が出ていないのに月日の入っていない「2川崎市立高等学校定時制課程の再編成にっいて(諮問)」の文書があったりで、市民の「公僕」であるはずの当局の神経には内心、ウーンとうなりました。こんなことで本当にいいんですか…?!

8月末の川崎市議会の総務委員会で、請願書について審議があった際、議員より「(『振興計画』は)学ぶ人にとってどうなのか、という純粋に教育的な改革ではなかったのか?」など、さまざまな批判的発言があったと聞きますが、この日の事務局の姿勢をうかがって、「5校を2校に」の文言が『振興計画』から消えた事は市民運動の一つの成果の面がありますが、「5校を2校に統合」の『振興計画』が決して「死火山」になったわけではないのだと、あらためて痛感しました。

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2003年10月25日

 10月14日に行われた川崎市教育委員会会議において、川崎市教育委員会事務局は「13名の委員に最近の卒業生と保護者2名を加え、計15名とする」と述べ、「定時制高校を守る市民の会かわさき」が提出していた請願を受け入れることを表明しました。
 この日の委員会審議を傍聴された方から、傍聴記が寄せられましたので、以下に資料として掲載します。


傍聴記 パートV

1014()、「定時制高校を守る市民の会かわさき」(以下「市民の会」)からあらためて出された請願書(「『定時制検討委員会』の委員に、定時制の学習経験者(在校生か最近の卒業生)から1名、保護者から1名の計2名を正式なメンバーとして加えてください」請願8号)についての意見陳述が、教育文化会館で行われました。

この請願書は、『定時制検討委員会(仮称)(以下『検討委』)の公正な運営を求めて委員構成についてより明確な要請をしたもの(912日付)で、この日の意見陳述は、前回916日の川崎市教育委員会審議での決定を受けて開かれたものです。

冒頭、まず市内定時制高校4年に在籍している生徒より、定時制高校に進学ずるまでの経過、入学して知った定時制高校の魅力、しかしその定時制高校が、全国的にもこの神奈川県内でも次々に「統廃合」されていっているが、生徒にとってどんなに通学時間や経済的に不合理で負担を大きくするものか、などが指摘されました。さらに川崎市の『教育振興計画』について、直接影響を受ける生徒の疑問や質問には答えていない。日本で初めて『子どもの権利条例』をつくった川崎は、『教育振輿計画()』の段階で当事者の生徒をはじめ多くの保護者や市民の参加を図るべきだなどという内容の意見陳述が10数分にわたり展開されました。

続いて「市民の会」代表である浅野栄子さんが保護者・市民の立場で、教育委員会審議の傍聴や『教育振興計画策定委員会』の議事録を読んでみても、定時制高校が置かれている社会的状況や生徒達をとりまく祉会環境や実情について、市教育委員会のエキスパートであるはずの方々は理解されていないということを強く感じる。

例えば、現役の定時制生徒の60%が三部制高校を希望していないのに、「希望20%と中途退学者24%の二一ズに応えるために三部制高校が必要だ」と発言しながら「行政がこんなに生徒を甘やかしてまで三部制高校を用意する必要があるのかという思いもある」と言ってみたり、策定委員さえ、定時制高校問題を軽んじて、しっかり理解して取り組んでいると思えない。私自身も失敗したことがあるが、自分の「モノサシ」からだけ見ていてはとても理解できないということが、この定時制高校問題にもあるのではないか。やはりしっかりした教育計画の確立には、その利用者の意見をきちんと聞くべきである。

国の原子炉の臨界事故の根本原因は、賛成意見のみに従って対応したことにあったではないか、その反面、川崎市でも地下鉄工事問題やゴミ処理場問題では市民グループの意見を取り入れ「中止」を決定した事例もある。教育間題は生徒ばかりでなく、大きくみれば私たち大人の老後を左右する大きな問題でもある。それゆえ、開かれた行政として、定時制にかかわる市民、今の実情がわかる最近の卒業生、そして保護者を一人でも多く検討委員会に入れてくださいなどと、意見陳述が10数分にわたり展開されました。

この後、黒田委員長より、引き続き請願第8号の審査を行うことを図りたい旨の提案があり、委員全員の了承を受けて、事務局より「8月の教育委員会や市議会総務委員会で、委員数案13名に新たに委員を加えるのが望ましいとの意見が出ている。事務局で慎重に検討した結果、請願の趣旨を尊重して()13名に最近の卒業生1名と保護者1名の計2名を新たに加えることを考えている」と正式見解が示されました。

 委員長の意見の求めに応じ、一委員から「非常にいいことだ」と全員の意志を代表した雰囲気で発言があり、この請願は採択されました。

この委良2名の「選考については事務局に一任」ということになり、事務局から「校長会、教頭会からの推薦を願う」との方針が示され、委員会が了承し、この請願についての審議は終了しました。

 この請願採択は、請願者、教育委員会、事務局の三者にとって、川崎市の教育行政の一つの見識を示したものとして喜ばしいものであったと、傍聴者の一人として感じました。2名の委員の決定もまた、今回の見識以上の柔軟な人選内容を期待したいものである。

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